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04 ネクロマンサーってすごいですわ

「根本的に間違っているから言っておくが、俺は生き返らせれるわけじゃないからな。生きているみたいに見えてもそれはゾンビっていう動く屍なんだ。それを傀儡にするだけだぞ」


「動くなら屍でも傀儡でもかまいませんわ」

「婚約者なんだろ? 王太子に同情するわ」


 牢獄からブラッド様を連れ出すときに牢番と少しもめたけど、ちょろっと魔法を使ってオリビア・ローリットの名前を出したら怯えてすぐにそこを通してくれた。

 だからクリストファー様の元へ帰ってくるのに、それほど時間はかかっていない。


「こっちの娘は?」


 ブラッド様がクリストファー様の隣に倒れているキャロラインのことを聞いてきた。


 伯爵令嬢なのにわたくしに対してあれほど強気なのはある意味すごいと思う。牢番の態度がわたくしに対する一般的な反応だ。


 キャロラインはぽっと出だからあまり王宮内の常識を知らないらしい。あのクリストファー様がちゃんと教えているとも思えないし。


「それは気絶しているだけですからゾンビにしなくてもいいですわ」

「するわけないだろ!」


「キャロラインのことはどうでもいいんですのよ。それよりクリストファー様は動きそうですの?」

「これ、何か処理してあるのか? 本当に新鮮なんだが?」

「クリストファー様の身体に、薄っすらわたくしの魔力を纏わせておりますわ。理由はわからないけれど、そうしておくと時を止めたみたいになりますのよ」


 食べ物で試したことがあって、腐らなかったから間違いない。


「腐敗と硬直が始まらないのか。すごいな」

「それでどうかしら?」

「オリビア・ローリットは魔力が潤沢にあるんだよな? ゾンビを動かすためには、常に魔力を供給しなきゃいけないんだが」


「クリストファー様を動かすための燃料ということであれば、わたくしは構いませんわよ」

「じゃあ、俺が黒魔法でゾンビ化するから、あとは魔力を切らさないように送り続けてみてくれ」

「ええ、ではお願いしますわ」


 ブラッド様が何かやっているけど、目の前で見ていても全くわからない。

 魔法なんて目に見えなくてみんな感覚で使っているから、他人の魔法を理解しろという方のが無理な話だ。

 その中でもわたくしの魔力と魔法だけは規格外らしいけれど。


 ブラッド様は侯爵家の三男で、もともとは穢れの研究をしていたのに、なぜか途中から黒魔法に目覚めてしまいネクロマンサーになってしまった人だ。


 今まで人間をゾンビにしたことはないようだけど、動物で実験をしていたのが見つかってしまい、危険人物として牢屋に入れられた。


 本人曰く、それも穢れ研究の一端だったらしいけど、ゾンビの製造なんて第三者から見れば怖ろしすぎるから拘束されても仕方がないと思う。


「そろそろ終わるからこの身体に魔力を繋いでくれ」

「魔力を送ればよろしいですの? これでどうかしら」


 わたくしは魔力を細い糸のようにしてクリストファー様へと伸ばした。その先端が身体に届いたら繋いだまま魔力をこちらから注いでみる。


「何も変わらないですわね」


 魔力を送ったというのにクリストファー様は指先ひとつ微動だにしない。


「君が命令をしていないからだ。ゾンビに意思はないから脳の役割は君がするんだ。『起き上がれ』って魔力と一緒に送ってみてくれないか」

「やってみますわ」


 わたくしはブラッド様に言われた通り、クリストファー様に向かって指示を出してみた。


 そのあとじっとクリストファー様を注視していると、クリストファー様の瞳がカッと開き、その場に立ち上がった。


 そして両腕を広げ片足はつま先立ち、もう片方は曲げてポーズをとる。


「何をやらせている?」

「ご存じない? 荒ぶる鷹のポーズでしてよ」

「名前じゃなくて、なんでこんなポーズとらせているんだ」

「どこまで命令を聞くか試したかったんですもの」


 ブラッド様は残念な視線をおくってくるけど、これで問題は解決したはずだ。


 クリストファー樣がゾンビとはいえ、動くことはできるから、とりあえず一時的でもしのぐことはできる。


 なんとかわたくしの首が胴体と離れることは回避できたのではないかしら。


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