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21 婚約破棄には賛成ですわ

 クリストファー様が本当にわたくしの魔法水で暮らしていけるのか、その確認をするため、予定通り公爵家で過ごしてもらっている。


 キャロラインには帰れと言ったのに、いつまでたっても伯爵家に帰ろうとしないので、初めは部屋も用意しないで放っておいたのだけど、クリストファー様が自分の部屋に連れ込もうとしたので、仕方なく寝る場所だけは提供することにした。


「ちょっとー。なんで外からカギなんて掛けるのよ!?」


 そこで魔力の練習でもしているといいのではないかしら。



 ちなみにクリストファー様の霊魂を身体に繋いでいるキャロラインの魔力の首輪は、朝になったら、クリストファー様がまた抜け殻になっていたので、あまり離れてしまうと、効果が切れてしまうことがわかった。

 


「オリビア・ローリットの魔法水が代替えとして使えるんだから、キャロラインさんもそういう物があったらいいんだが」

「魔法水はわたくしのものと反発してしまいますし。どうしたらいいかしら?」


 水と油じゃないけど、魔法水までもが、わたくしたちと同じで仲が悪く、クリストファー様の身体の中で共存することができない。


「キャロラインさん由来のものだろ……」

 ブラッド様がキャロラインを眺めながら考えている。


 魔法で言えば、水魔法もダメ。火魔法も消えてしまうし、それは風魔法も同じ、唯一土魔法は形に残るものだけど、あれは物質を作り出す魔法ではなく、そこにある土類を変形させる魔法だから、キャロライン成分が入っていないので意味がない。


「私を閉じ込めておくからこういうことになるんじゃない」


 まったくうるさい娘だこと。

 何と言われようとキャロラインの苦情は一切受け付ける気はない。


「キャロライン……魔力……物質……あっ」

「何か思いついたの?」


「髪の毛があるじゃない」


「あ、そうか。髪は魔法の媒体にも使ってるからな。今までなぜこんなことに気がつかなかったんだ」

「早速やってみませんこと」

「えーそれって髪を切るってことでしょう?」

「そうですわね。どのくらいの量があったらいいのかしら」

「編み込んで紐にできるくらいの束は必要だと思うぞ。それも永久に持続するわけじゃない。効果がなくなる前に交換が必要だ」


「あら、そうだとすると、キャロラインさんはいずれ髪がなくなってしまうことになりますわね。ぷっ」

「嫌よ! 何笑っているのよ」


「そうならないために、キャロラインさんは、普段はクリストファー様のそばにいたらいいのだと思うの。ということは貴女たちが望んだように結婚するしかないのよね」

「本当に?」

「ええ、今となれば、それはわたくしの望みでもありますもの。善は急げですわ。一緒に王宮に向かいましょう」


 わたくしからの要請で、すでにクリストファー様の部屋には大甕も用意してもらってある。

 もう少しで元の生活に戻れそうだ。



「今なんと申した?」


 賓客を迎える特別室で、座り心地の良さそうな豪華な椅子に腰をおろした陛下が、きょとんとしながらわたくしに質問した。


「わたくしの聞き間違えよね。オリビアちゃん」


 王妃様はお耳のお加減が悪いらしい。


「聞こえなかったのなら、もう一度申し上げますが、わたくしはクリストファー様との婚約を破棄することに決めましたの」


「いやいやいや、まさか、王家との婚約破棄が、そんな簡単にできるものだとは思っていないよな。クリストファーにはオリビア以外考えられないのだからな。それは無理な相談だぞ」


「ですが、クリストファー様は、聖女のキャロラインさんと結婚したいそうですわ」


 わたくしは一緒に連れてきたクリストファー様とキャロラインの方に振り返る。


「クリストファー、貴様なんてことを! オリビアとの婚姻はとても重要なものだとあれほど言っておいたではないか」

「貴方は国を潰すつもりなの?」


「そんなつもりはありません。オリビアだってそれを望んでいるのですから、何も問題はありませんよ」

「大ありだ、この馬鹿者!」

「オリビアちゃん、クリストファーがおかしなことを言って気を悪くしたかもしれないけど、考え直してもらえないかしら」


 泣き出しそうになりながら王妃様が懇願する。


「それはお断りしますわ」

「ほら見ろ。私が言った通りではないですか」

「クリストファーは黙っておれ。ことと次第によっては、お前もそれなりの罰を受ける覚悟をしておけ。大馬鹿者めが!」


 立ち上がって唾を飛ばしながら怒鳴り散らす陛下に、クリストファー様が身をすくめた。


 流石にこの状況にはキャロラインも怯え始める。いつもの強気は陰をひそめ、視線が定まらない。

 やっとことの重大さに気がついたらしい。


 だからわたくしは、そんなに簡単にいくものではないと、ずっと言っていましたでしょ。


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