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20 ガス欠は命とりでしてよ

「クリストファー様のこれからについてですけれど、現在クリストファー様の身体は異世界人が憑依したせいで仮死状態なんですのよ」

「ああ、だから私が浄化魔法使うとだめなんだ。きっと穢れが憑いたせいで何か作用しちゃっているんだよね」


 わたくしのてきとうな話にキャロラインがなぜか理解を示してうなずいた。

 勘違いだけど、彼女がわたくしの話に合わせてくれるとクリストファー様が信じるのでやりやすい。


「ですから、身体を動かすためにわたくしが魔力を注いでおりますの」

「また、オリビアの魔力かよ……」


「クリストファー様がお嫌なのは重々承知しておりますけれど、こればっかりはキャロラインさんにはどうにもできませんのよ。今の状態は常時クリストファー様と繋がっておりますの。でも、それはわたくしも大変なので、魔力を切ってしまいたいと思っておりますわ」


「そうしたらクリス様はどうなるの?」

「また、意識がなくなって、倒れてしまわれるでしょうね」

「それは困るわ」


「そうでしょう。それで、ブラッド様がおっしゃるには、私の魔力を目いっぱい注いで補充しておけば一日ほどは保っていられるのですって」

「じゃあそうしてくれ」


「嫌ですわ」


「なんでだ!」


「わたくしの目いっぱいって、どれだけだとお思いですの。結局注ぎ込むだけでも何時間も掛かってしまうではないですか」

「言われてみれば、そうだな。考えが及ばなくてすまん」


「それなら、今みたいに、魔力を供給し続けるしか方法がないってことなの?」

「いいえ、ひとつ良い方法を見つけましたわ」


 わたくしは事前に侍女に用意させておいた鍋に手をかざした。そしてそこへドボドボと魔力で作った水を流し入れる。


「オリビア・ローリット、何をやってるんだ?」

「これがクリストファー様の燃料になりますのよ。たぶんこの水にはわたくしの魔力が凝縮されておりますわ」


「燃料だと?」


「さきほどクリストファー様が飲み干された水と同じものでしてよ。身体の内側から供給するからでしょうか、これだと燃費がすごくいいんですの」


「魔法で作った水って、その人の魔力が入っているってこと? それって私でもそうなの」

「他の方のことは知りませんわ。是非ご自分で試してみてくださいませ」


「そんな手があったんだな」

「ええ、すでに、クリストファー様の身体で実験済みでわ。他にこの水で何かできないかブラッド様も考えてくださらない?」

「そうだな。使い方次第で、応用がききそうだ」


「なあ、それを飲むのを、私が拒否したらどうなる」


「動けなくなるだけではないかしら。最悪あの世行きですわね。嫌がるのは構いませんが、これ以上わたくしの手を煩わせるのはやめていただきたいわ」


 クリストファー様は口をへの字にして押し黙った。


「それに、これからクリストファー様との婚約を破棄するために、各所に根回しもしなくてはいけませんのよ。わたくし、とても忙しくなりますもの」

「それ、本当なの? オリビアはクリストファー様と本気で婚約破棄するつもり?」


「他の方を愛されている方との結婚は、我慢できませんの。わたくしもクリストファー様をお慕いしておりませんし。こちらからお断りさせていただこうと思っておりますのよ」

「そうなんだ。ねえクリス様。オリビアとの関係を断つために、オリビアの水については許容してもらえない。私のためにも。ねっ?」


 また、キャロラインがクリストファー様に自分の身体をぐいぐい押し付けながらお願いしている。


「う、うん……そうだな」


 本当に中身はクリストファー様なのね。いつかとは違って、鼻の下が伸び切ってましてよ。


「では、クリストファー様のお部屋に大甕を用意してもらいましょう。わたくしが満タンにいたしますわ。クリストファー様は万が一のことを考えて水筒も肌身離さずお持ちくださいね」


 数日に一度、甕を魔法水で満たせばいいだけだ。これでかなりわたくしの手間が省ける。

 それにキャロラインが作る水でも可能なら、そのまま役目を彼女に渡せばいいだけだ。


「キャロラインさんのこと心より応援していますわ」


「私たちを祝福してくれるなんて、オリビアって思っていたより悪い人じゃないのね」


 あら、応援の意味を違ってとらえたみたいだけど、二人の仲も応援して差し上げるわよ。


 そうと決まれば、早速陛下に婚約破棄を受理してもらいに行くとしましょうか。


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