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17 仲がよろしいことはわかりましたわ

「クリス様?」

「そうだ、キャロラインは魔力切れになって倒れたそうだから、まだそのまま寝ているといい」


 キャロラインは自分がクリストファー様の膝枕で寝ていることに気がついて顔を赤らめる。


「それならもう大丈夫だと思う」


 そう言いながら起き上がったキャロラインは、クリストファー様に寄りかかるようにしてソファーに座った。


「私、成功したのね」


 嬉しそうなキャロラインと見つめあいながら、クリストファー様がその頭へ手をやって愛しそうになでた。

 二人の世界に入っているところ悪いけど、人のいちゃいちゃは目のやり場に困るので、わたくしの前ではやめてくれないかしら。


「それは、半分あっていて、半分は違いますわ。貴女は呼び出すことには成功しましたけど、魔力が途切れてしまったでしょ。今、クリストファー様をその身体に繋いでいるのはわたくしの魔力でしてよ」

「なんだと!?」


 眉間に皺をよせて、拒否反応を示すクリストファー様。


「このままでは、クリストファー様もお嫌でしょうし、わたくしも大変ですの。クリストファー様がご自分の身体に定着できるまでは、ずっとそれを続けていかなければいけないのですから、キャロラインさんには、是非同じことができるようになっていただきたいですわ」


「クリス様、私に任せて」

 両手で握りこぶしを作って意気込むキャロライン。そんな姿をクリストファーが目を細めて見つめている。


「でも、キャロラインさんは、無理をするとさっきみたいに倒れてしまうよな? オリビア・ローリットみたいに、簡単にはいかなんじゃないか?」


 やる気はあっても能力が伴わないキャロラインにブラッド様が現実を突きつけた。


「おい、おまえ。キャロラインをオリビアと比べるなんて許さないぞ。キャロラインの気持ちを踏みにじるようなことを言うな」


 ブラッド様は正論を言っているだけなので、その彼に向かって怒りをぶつけるのは理不尽だと思う。

 だったらクリストファー様こそ頑張ればいいのではないか。


「クリストファー様も人任せにせず、身体にしがみく努力をしてくださらないかしら?」


 クリストファー様は、キャロラインの呼ぶ声に応えてこの世に舞い戻ってきたのだから、今後は、ふらふら彷徨うことはせずに、そのままそこにいてくれればいいのだ。

 そうすれば、クリストファー様の霊魂が行方不明になる問題だけは解決する。


「はあ? なあ、キャロライン。こいつらはずっとこんなことを言っているんだが、本当に私は身体から霊魂が離脱しているのか?」


 わたくしの言葉は信じることができないらしい。確かにクリストファー様の現在の状況は簡単に受け入れられるものではないから、仕方がないのだが。


「そうみたいなの。クリストファー様の身体に他の人が憑依していたのは私も見たから、間違いないわ」

「今までの話は嘘ではないんだな」

「そうね。だけどもう大丈夫。だってさっきと違って、クリストファー様は私の知っているクリストファー様だもの」

「ああ、キャロライン」


 また、見つめあう二人。仲がいいのはわかったけど、その度にわたくしたちの存在を無視するのはどうかと思う。


「とりあえず、クリストファー様が、身体に残ることができるか、実験をしてみますわね」


 わたくしは、甘い世界に浸っている二人のことなどお構いなしに、クリストファー様を縛り付けている魔力の糸をぶちっと切った。


「やっぱり駄目でしたわね――あら?」


 クリストファー様の身体が揺れて前かがみになったので、霊魂がいなくなってしまったのだと思ったけど、その後身体を後ろにそらして、瞳がかっと開いた。クリストファー様も身体から抜けてしまわないように頑張っているようだ。


「でも、やっぱり無理みたいだな」

「クリス様?」


 結局、持ちこたえられたのは一瞬で、クリストファー様はゾンビの状態に戻ってしまった。今は意識がほとんどなくボーっとしていて、当たり前だけど、キャロラインが何か言っても反応はしない。


「また、どこかへ行ってしまわれたようですわ。キャロラインさん、もう一度クリストファー様を呼んでもらえるかしら」


「もうっ。何やっているのよ」

「オリビア・ローリット……」


「いろいろ試してみることは必要でしてよ。二人そろってそんな目で見るのはやめてくださらない」


 おかげでひとつわかったことがありますのに。


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