表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/27

13 異世界?わたくしに関係ないならどうでもいいですわ

「キャロラインさん、貴女の知っていることを教えてくださらない」

「君はなぜさっきの言葉を知っていたんだ」


「そんなの……わたしが聖女だからじゃない? わたしは特別なんだもの。あの言葉がわからないってことはオリビアは思っていたのと違うのね」

「違うって何のことかしら?」

「えー、私の邪魔をする人には教えてあげなーい」


 得意げな態度をとるキャロライン。

 もったいぶってはいるが、クリストファー様に乗り移ったあれが何者なのか本当に知っているのだろうか。


 一連の会話中、キャロラインはブラッド様しか見ていない。わたくしに返事はするけど、こちらには視線を向けようともしない。


 だから、今日もブラッド様にお任せする。

 わたくしは視線を使って、ブラッド様と会話をしてから、キャロラインのことは押し付けたので、あとは二人のことを観察しながらゆっくりと紅茶を味わうことにした。

 わたくしからの指令をブラッド様が首を横に振って拒否したけど、あえてそれは無視をする。


「それでは殿下を元に戻すことができないんだ。頼むから知っていることがあるなら全部話してほしい。俺達には君の助けが必要なんだ」

「ブラッド様からそんなふうにお願いされたんじゃ、しかたないなあ。それにクリス様の中に女の子がいるの、私も嫌だし」


 ソファーで横になっているクリストファー様に目を向けたキャロラインは少し悲しそうな表情をした。ブラッド様に乗り換えるのかと思ったけど、クリストファー様のことも忘れてはいないようだ。


「嘘だと思うかもしれないけど、あれは、この世界とは違う、別の世界の人間なのよ。私が知ってるパターンでいくと、亡くなったあとでこっちの世界に転移してきちゃったってのが一番有力だと思う」


「別の世界とは? キャロラインさんは、なぜそんなことを知っているんだ」


「その世界がどこにあるかなんて私も知らないけど、この星には存在しない、こことは違う文明で進化している世界のことよ。私が知っているのは、そちらの世界の記憶があるからだけど」


 ブラッド様が驚きながらわたくしを見た。

 たぶん、異世界から霊魂を召喚できるわたくしを褒め称えているんだと思う。

 だけど、そんな遠くにいる霊が、わざわざ、わたくしの魔力に引っかからなくてもいいと思うのだけど。


 あら? だとしたら、魔力の出力を極力下げれば、探索範囲が縮まって、この辺で漂っているであろうクリストファー様を捕まえることもできるのかしら。


 だけど、絶対にわたくしの呼びかけには応えるはずがないから、わたくしが力づくで追い込むしかない。

 そうしたところで、クリストファー様の霊を感知できないわたくしでは、この辺にいる霊体を捕まえては身体に詰め込む、という作業を何百回も繰り返さなければならない。

 クリストファー様にたどり着くまでに飽きてしまいそうだ。


 やっぱりキャロラインに浄化魔法を使用させず、降霊術を覚えてもらった方が早いのかしら。彼女に霊を絡めとるほどの能力があるといいのだけれど。


「あれがどこから来た者だろうと、クリストファー様でなければ意味がないわね」

「君はあまり驚いていないようだな」


「だって、違う世界と言われてもピンとこないんですもの。考えてみたら、海を渡って違う大陸に行けば、言葉がわからないのは当たり前ですし、キャロラインさんがたまたまそちらの言葉を知っていたということもありまますもの」

「私が嘘をついているって思っているわけ? コスプレとかTSとかそんな言語自体がこの世界にないじゃない!」


 珍しくキャロラインがわたくしの方に視線を向けた。睨みつけるためなら、こちらを見なくてもいいのですけどね。


「それならそれで、わたくしは構わなくってよ。そんなことよりキャロラインさん、とりあえず一度試してもらえないかしら」

「いや、急には無理だぞ」


「クリストファー様への愛があれば大丈夫なのではなくて? わたくしよりもキャロラインさんの方がクリストファー様を想う気持ちが強いのでしょう?」

「そうよ。クリス様を想う気持ちなら誰にも負けないわ」

「ほら、こう言っていることですし、何かあったらわたくしが対応いたしますわ」


「でもなあ」

「心配しないでブラッド様。私、頑張ってみるから」


 消極的なブラッド様を積極的なキャロラインが制した。


 さて、無事にクリストファー様がお戻りになるといいのだけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ