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12 キャロラインはお仲間なのかしら

「キャロラインにはゾンビ化のことだけは伏せて、クリストファー様が何かに身体を乗っ取られているから助けたいと説明したらどうかしら」

「さっきのを一度見せたら説得力はあるかもしれないな」


 ブラッド様が言うように、先ほどクリストファー様には、得体のしれないものが憑依していた。わたくしが呼び寄せてしまったのだけれど。


「降霊術を使わせるとしても、本人には黒魔法だということを悟られないように進めないといけないよな」

「頑張ってくださいまし」


「また、俺に丸投げするつもりか?」

「そんなことおっしゃっても、キャロラインはわたくしを敵視しておりますのよ。ブラッド様は気に入られたみたいですもの。どう考えてもブラッド様の方が適任ではありませんか」


「言っておくけど、俺は口下手で誰かのように言葉でうまく丸め込めるほど達者ではないんだぞ」

「わかりました。でしたらわたくしも頑張りますわ。クリストファー様で」


「なんか、殿下が本当に可哀そうになってきた」

「大丈夫ですわよ。だって、キャロラインに助けてもらいたいと懇願するだけでしょう? クリストファー様にとって悪いようになるわけがございませんわ」

「そこに、オリビア・ローリットが関わっていなければな……」


 はあ、っとため息をつきながらブラッド様がボソッと言ったことは聞こえなかったことにする。



 わたくしは、その日のうちにキャロラインあての手紙を伯爵家に送った。


 今度はこちらからの招待だから、翌日、うちに訪ねてきたキャロラインは、当たり前だけど、きのうのように入り口でもめることもなく侍従たちに応接室まで案内された。

 それに気をよくしたのか、その態度はきのうに増して自信満々だ。


「私をここへ呼び出したということは、話がついたようね」

「いいえ、婚約破棄は前から言っている通り、簡単なことではないので、時間がかかりますのよ。今日はキャロラインさんにお願いしたいことがございますの」

「なんだ、がっかりだわ。それでお願いって何なの?」


 この先はブラッド様が話した方がすんなりいきそうなので、わたくしは催促の視線をブラッド様に送る。


「えーっとな。キャロラインさんにはクリストファー王太子殿下を助けてもらいたいのだ」

「クリス様を?」


「実は殿下は何かに取り憑かれているようなんだ。この前からクリストファー様がおかしかったのはそのせいらしい」

「オリビアが薬を盛ったんじゃなかったんだ」


 キャロラインはちょくちょくわたくしを貶める発言をするけど、どういうつもりなのかしら。


 わたくしはいつでも喧嘩を買う準備はできているのだけれど?


「彼女はそんなことはしない。オリビア・ローリットだって、現在の殿下の状態は憂えているんだ」


 ブラッド様が一瞬こちらに視線を向けてからわたくしのフォローに入った。もしかして、また魔力がもれていたのかしら?


「そう……それで、ブラッド様は私にどうしてほしいの? ブラッド様のお願いなら聞いてあげてもいいわよ」


 わたくしを庇ったブラッド様が面白くなかったのか、少しだけ唇を尖らせて拗ねて見せてから、今度は甘い声をブラッド様に向けるキャロライン。


「ちょっと難しいことなんだが、キャロラインさんには殿下の魂に呼び掛けてほしいんだ。それも魔法を使い、殿下の心に直接接触をして、殿下が目覚めるのを、手伝ってしてほしい」

「そんなことなら簡単だと思うわ。私魔法は得意だし」


「いや、それがだな、君が浄化魔法を使うと少々面倒なことになる。少しでも殿下の魂に干渉してしまうと、身体に入っているその何者かがどうなるかわからない。殿下と融合されても困るし、危ないから浄化魔法は、もはや封印してもらいたいくらいだ」


「えー、私、浄化魔法が一番得意なのに。それに、それを封印して魔法を使うってどうやったらいいの? 取り憑かれているんなら、やっぱり祓っちゃったほうが早くない?」


「いや、絶対にだめだ。やり方によっては、最悪、殿下の魂の方が消滅してしまうかもしれない。だから、浄化魔法を使うことは許可できない」


 ブラッド様はかなり強引で無茶苦茶な理由をつけて、なんとかキャロラインを説得しようとしている。


 とりあえず、キャロラインには手っ取り早くあれを見せた方がいいかもしれない。

 わたくしはまた、きのうやったように魔力を広げて伸ばし、何かを捕らえた。

 クリストファー様の身体に押し込むと、早速それは口を開く。


『ここはどこ? え? コスプレ? やだわたしもじゃない。どうなってるのよこれ?』

「え?」


 キャロラインはこの光景に驚いている。


 クリストファー様はわたくし、ブラッド様、キャロラインをじっくりと観察したあと、自分の身体を触った。

『もしかしてTS転生しちゃった? やだ、これから男として暮らさなきゃいけないの。どうせならあなたの身体の方がよかったのに』


 わたくしの呼びかけに応えた何者かは、わからない言語で話しながらわたくしを見つめた。クリストファー様から羨望な眼差しでじっと見られるなんて今までなかったから、とても新鮮だ。と思いながらも、わたくしは魔力をそこで切った。


「なんなのあれ? なんでクリス様に女の子が憑依してるのよ」

「女の子?」


 なぜ、あの短時間で、そんなことまで気がついた? 案外キャロラインは洞察力に優れているのか?


「だって、言葉使いもそうだし、自分でTS転生したって言ってたじゃない」

「ティーエステンセイ?」


 その単語にブラッド様にも心当たりがないようだ。


「キャロラインさんにはクリストファー様が何を言っていたのか、わかっておりましたの?」

「ええ、だってあれは日本語だったもの」


 ニホンゴとは?

 クリストファー様に憑依する者たちもそうだけど、キャロラインは何者なの? 仲間なの?


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