女神じゃないってば!
ここは・・・どこ?
「女神さまが目を覚ますぞ!」
目をさますと硬い床の上にいた。
めが、み・・・?
なんかさっきそういう話を聞いたような聞いてないような・・・。
「女神さま、我々をどうぞお導き下さいませ!」
女神、導く・・・。
うーん、なんかさっき聞いた気がするけどなんかよく思い出せない。
私・・・私の名前はなんだっけ。
『ディオッサ。』
頭に浮かんだのはその言葉。
「ディオッサ・・・名前・・・。」
「おぉ!女神さまはディオッサ様と申されるのですね!」
ちがう、『私』はそんな名前じゃない。
うーん、思い出せない。
「女神さま!では、さっそく次代の女神さまにお仕えする純潔の乙女をお選びくださいませ。」
教会でも選りすぐりをあつめております、そういってカーテンをめくる。
純潔の乙女というイメージからは程遠い、野心にギラギラした眼をした少女がたくさんいた。
なんだか怖いんですけど・・・。
いや、そもそも・・・
「私、女神じゃないんですけど。」
たしか、そう。
女神を導く、みたいなこといわれた気がする。
だから私は女神じゃない。
うん、心当たりがない。
「そういうことで、失礼させていただきますね。」
うん、とりあえず逃げよう。
そのあとのことはそのあとに考えよう。
まずはいまを生きねば!
「そんなはずはありません。あなたがここに現れたのがその証拠です。」
「いや、だから女神じゃないんで。」
「・・・本当に女神ではないと言われるのであればこの儀式の間に現れた罪を償う必要があります」
「・・・ちなみにどんな?」
「当然死刑です。」
え・・・
「貴き女神さまの身分を詐称する行為など万死に値する。それであなたは何者か?」
「しゅ、修行中ですので!まだ修行が足りなくてですね、女神を名乗る段階ではないのです!!!!」
死ぬのは勘弁してほしい!
でも、女神じゃないし。
女神を導く者、みたいに言われたはず。
この人たち、なんかギラついてて怖いし、好きじゃない。
なんとか逃げきろう。
自分で女神だと言ったわけでもないのに身分詐称で死刑と悲惨すぎるじゃない?!
これくらいの嘘は許して!
「・・・ふむ、修行中の女神だから選別できないのか?」
「そうかもしれません。というわけで修行の旅にでます。そのようにご信託を授かっていると思うので!!!」
あくまで思うにとどめておく。
うん、思うだけならセーフということで!!
「そうですか。わかりました。では、修行を終えて次代の女神を決められるようになりましたらお戻りください。」
「善処します。」
戻ることはないだろう。
修行が終わる予定はナイノデ!!!
そう心の中で宣言しながら、私は逃げるようにその場を飛び出した。