なんで私?!
連載作品の前日譚的な短編です。
こちらの作品だけでも楽しめるようになっています。
よろしくお願いします。
トンネルを抜けるとそこは不思議な世界でしたーーーーー。
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「あら、やはり今回も黒髪の乙女なのですね」
目の前にいるアフロディーテみたいな綺麗な女の人が微笑む。
いやいやいや、なにこの真っ白な空間。
足元もなにもない空間だし、浮遊感がある。
ついさっきまでどこにでもある田舎のとこにでもあるトンネルを歩いていたはずなのに。
トンネルから出た瞬間に突然の浮遊感と眩い光に包まれ、目を瞑って。
次に目蓋を開いた瞬間がいまのこの状況。
声を出そうとするが、出ない。
「あぁ、いまは魂のみが存在する空間なので声は出せませんよ」
もはや人形といった方がしっくりくる美しい人がにっこりと微笑む。
「あなたは女神を導く者として選ばれました。いまからあなたが導く世界に転移させていただきます。」
え、ちょっとどういうこと?!
「転移時には多少記憶の混乱がでる可能性がございますが、ご了承下さいまし。」
いや、ご了承できませんケドー?!
「黒髪は忌み嫌われるので転移時に色が変わりますが、健康上の支障はございませんのでご安心くださいまし。」
いやいや、ご安心できまセンケドー?!?!
「あなたが果たすべき役割を終えたら、ご希望に応じてもとの世界にもどすことも可能ですので励んで下さいまし。」
いやいやいや、全然励メマセンケドー?!?!?!
「わたくしが祝福を授けた証としてあなたには新たな名を与えましょう。」
っていうか、あなた誰デスカァアァアッ!?!?
「では、ご武運を。」
その言葉を耳の片隅で捉えながら急速な降下を感じる。
どれくらいの高さのところにいたのか知らないけど、これもう死ぬんじゃないかなと思いながら私は意識を失ったのだった。