第十四話です。(手抜きプロット)
目を覚ますと僕は宿にいた。どのくらい気絶していたんだろうか。夜ではない。1日を回ったのか。
「ダンもコジロウもいないみたいだな……」
部屋を出て僕はフロントのロボットに聞く。
「オナカマサマハ、ニンム、ニンム、デス」
どうやらジェネたちは任務に向かってしまったようだ。そしてロボットが言うには昨日、僕が気絶したままここに運ばれてきたらしい。
軽い朝食を済ませ、僕は『法都』を軽く散策することにした。
「しかし、すごいところだなあ……」
街にある建物は工場だけ、お店のようなものも見当たらない。出歩いているのもロボットだけだ。
ふと昨日のことを思い出す。
「ゆめ、だったんだよな。きっと」
昨日の光景を認めたくない僕は、独り言を自分に言い聞かせながら歩く。
すこし歩けば、昨日の大工場の入り口の前にたどり着いた。
僕は恐かった。夢だ夢だと言い聞かせようとも、昨日のリアリティと気味の悪さはどれも生々しく、鮮明に目に焼き付いていたからだ。
しかし僕は確かめずにはいられなかった。
昨日、ダンがやっていたように入り口のボタンのようなものを深く押し込む。
すると入り口の仕掛けは作動し、大きな門扉は恐ろしさを感じさせるように重く、そして怪しく、その口を開けた。
「ぐッ!!!!」
眼前に広がるのは、やはり昨日と変わらないおぞましい光景だけだった。吐き気をなんとか堪えながら早急に大工場から逃げ出す。
「うそだうそだうそだうそだ!!!」
走りながら僕は自分に言い聞かせる。
「ゆめだゆめだゆめだゆめだ!!!」
恐い。怖い。こわい。
「わっ!!!」
前も見ずに疾走していたためか、僕は勢いよく何かにぶつかった。
「ごめんなさ……」
僕は謝りながら言いながら立ちあがり、ぶつかってしまった人をみる。
「い……うわあああああ!!!!」
『終焉』だ。泣きっ面に蜂とか踏んだり蹴ったりとかそんな優しいものじゃない。どん底だと思っていた恐怖心をもっと深く、それは叩き落とす。
元いた宿まで僕は全力で走った。
宿に着くと部屋に閉じこもる。ドアに背を預け僕は床に座り込む。あの異常な光景と『終焉』がフラッシュバックする。
僕は勢いよく『魔導書』を取り出す。
「『法都』を正常に戻してくれ!」
――――真っ白な光が僕を包む。
先ほど転んだときに出血していたのだ。短剣で出血させるより早く“約束”は始まった。
光が僕を包み込むより先に目を閉じた。
目を開ける。『魔導書』をしまって立ち上がる。なんとなく部屋の窓から外の景色を眺める。
「なん……だ、これ……」
眼下に広がるのは『終焉』だった。
「どう、なっている……?」
僕は大工場の異常さをはるかに上回る、その狂気的までの光景に思考が追い付かない。
ガチャリ
部屋の扉が開く音に反射的に振り返る。ダンとコジロウだ。異常さに追いつけていなかった僕は、二人のおかげでなんとか正気を保つ。
「襍キ縺阪◆縺ョ縺具シ√≠繧薙■繧?s?」
「繝サ繝サ繝サ」
「え……?」
二人の言葉が聞き取れない。
「縺翫>縺翫>縺ゥ縺?@縺溘≠?溘◎繧薙↑鬘斐@縺ヲ縺?シ」
「繝サ繝サ繝サ」
「なんて、いってるんだ……?」
なんなんだ。これは。もう一度僕は狂気の沼に放り込まれていた。僕の顔色を心配したのか、二人が近づいてくる。
恐い。だれだこいつらは。僕の仲間はどこだ。来るな。寄るな。
「近づくなああああ!!!!」
二人が僕にのばしてきた手を思いきり振り払い、僕は部屋から飛び出した。逃げ出した。
「逶ョ縺瑚ヲ壹aたの縺ュ!縺」縺ヲ縺ゥ縺楢。後¥縺ョよ!」
「縺ゥ縺?@縺。繧?▲縺溘?縺九@繧会シ」
宿のロビーにいたジェネとステラの声すら、もう聴き取ることができない。
ちがう。ジェネもステラも。違う。誰だ。僕の仲間はどこだ。
僕は二人の理解できない呼びかけに、立ち止まることなく走る。
宿を出て、検問所に向かって走る。
走り続けると僕は突如、森に入る。
「あれ……?」
検問所は?森?城壁は?
いまだに鮮明さを失った思考回路に疑問が生まれ、僕はやっと立ち止まる。振り返ると『法都』の工場は存在している。しかし検問も城壁もなくなっている。
「どう、なってんだ……」
数分間、ぼやけた脳内で考えると一つの結論が出た。
「ははっ、ここは別の世界だ……」
その結論には、そうであってほしいと、心のどこかで強く願っている自分がはっきりと表れていた。
短剣で自分の左手に深く傷をつける。不必要なまでの出血が始まる。
鮮血に染まった左手で『魔導書』を取り出した。
「元の……元の世界に戻してくれ」
――――真っ白な光が僕を優しく包み込んでくれる。
なにもかもに疲れ切った僕は、ただゆっくりと目を閉じた。
目を開ける。僕は森の中にいる。
ガサガサ
その音のほうに僕はゆっくりと顔を向ける。しげみの奥だろう。音は近づいてくる。
「ジェネたちかな……」
僕の口から漏れていたのは推測ではなく、願望だった。
ガサガサッ
僕の視線が向いている茂みから。それは現れた。もちろんジェネたちではなかった。
そこに現れたのは『終焉』だった。
「え……?」
茂みから現れた『終焉』は僕に近づいてくる。4つだった。
「うわああああああ!!来るなああああ!!!」
僕は走りだしていた。方向なんてわからなかった。ただこの現実から逃げてしまいたかったのだ。
つづきます。




