終章
誤字、脱字がございましたら、お知らせ戴ければ嬉しいです。
「瑞基君とワタシは隆一朗さんの喪があけると籍を入れ結婚しました。
瑞基君は隆一朗を、それこそ眼に入れても痛く無いほど可愛がっていました。
三歳になったらピアノを習わせるのだと口癖のように言って。
よく、同じ夢を見たそうです。
お天気の良い初夏の午後、緑の芝生が鮮やかな庭で、歩けるようになったばかりの小さな隆一朗がはしゃぎ回っているのをワタシが追い駆けているのだそうです。
それを椅子に座った隆一朗さんがとても嬉しそうに見ていて、その隣で瑞基君が紅茶を飲んでいる、そんな夢を。
でも瑞基君はずっと歩くことが、できませんでした。
そして、弱って行った。
原因不明の激しい頭痛に悩まされ、ある朝寝室のベッドで、苦しんだのでしょう、乱れたシーツに伏して亡くなっていました。
でもその死に顔は驚くほど穏やかで、手には隆一朗さんからの思い出のピックが握られていました。
奇しくもその日は隆一朗さんの二度目の命日でした。
ワタシは思うのです。
二重の意味で愛し合うことが許されなかった隆一朗さんと瑞基君はきっと前世からの恋人で、求め合う余り同じ子宮から生まれ、互いを守ろうとする余り二人とも男として生まれたのではないかと。
今は何処かで生まれ変わり、巡り逢うのを心待ちにしながら、誰かの家の子供として育てられているのでしょう。
そしていつかまた巡り逢い、あの哀しいほど儚い時間を力強く愛し合うのでしょう。
ワタシのお腹には瑞基君との二人目の子が宿っています。
こうして命は巡り、誰かと愛し合える時を待っているのかもしれません。
抗うことのできない前世からの愛を…………………………。」
fin
Ship building
船を築こう この風の海を越えて
果てのない地上の享楽の地で
全裸のボクとキミは飾りのない言葉で
語り合うんだ
とても他愛ない話を
船を築こう
この紺碧の空を超えて
果てのない砂漠を見渡して
もう一度ボクとキミは
幻想に惑わされながら
考えなおすんだ
とても 日常的なことがらを
船を築こう
壊れても また 築こう
大勢の貧しい人々が
愛を語っている
大勢の哀しい人々が
生を語っている
そして ボクにはキミが
与えられたんだ
船を築こう
この星と月と黒い空間に
砂と塩水と風と僅かな花びら
それらでできた船を
手探りしながら浮かべて
永遠に揺られていよう
船を築こう
キミはボクに言う
友人の名前や今日のできごとなんかを
そして 微笑むんだ
ひまわりのように太陽に似せて
緋色の光を浴びて
とても 日常的に
by 隆一朗
最後まで読んで戴き有り難うございました。
皆様に読んで戴いたことが、本当に支えでした。
本当に有難いことです。
隆一朗は、壮絶美青年ですがロックをやっていると云う以外、めちゃくちゃ地味で、愚痴と言い訳をしない男と云う設定で、瑞基は物事を深く考えるのが苦手な美少年と云う感じでした。
色々曲が出てきましたが彼女へのレクイエムは記憶が正しければ加藤登紀子さんのパルチザンの歌だったと思います。
三章で出てきた、ダミアのサンブル ディマンシュと云うのは、聴くと自殺すると云うので有名な暗い日曜日と云う曲の二番の歌詞の抜粋です。
隆一朗が映画館モナリ座で観たかくも長き不在と云うモノクロ映画は1964年にカンヌ映画祭で芸術賞受賞作品だったと思います。
三章で隆一朗がギターを弾き、ニコルが歌うと云うシーンで出てきた曲たちは、私の趣味を思い切りだしました。
BLと呼ぶには、あまりに異端な内容で、BLを期待されて読んで下さった方には、申し訳無い内容だったのではと思うのです。
腐女子の娘と隆一朗と瑞基は、どっちが受けで攻めなのかと議論したのですが、私は隆一朗が受けと思って書いていたのですが、現役腐女子の娘いわく行動パターンが隆一朗が攻めで瑞基が受けなんだそうです。
どっちにしろ、読んで下さった方々が楽しんで読んでいただけたなら幸いです。
本当に、最後までお付き合い下さった皆様が楽しんで読んで戴けていたら、とてもとても幸せです。
隆一朗と瑞基と、お別れするのは淋しいですが、
いま、新しい作品に挑戦しています。
できあがるのが何時になるか解りませんが、機会があれば、また投稿させて戴ければと思っています。
そしてまた、皆様にお付き合い戴ければ嬉しいです。
よろしければ、感想など一言でも戴ければ、また書いて行く励みになります。
それでは皆様、お身体大切に。
また、お逢いできる日を楽しみにしています。
余談ではありますが、ship buildingと云う隆一郎が瑞基に書いたと云う設定の詩と、ラプンツェルの接吻 聖流編も投稿してますので、そちらの方も読んで戴けたら倖いです。