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半分こ

作者: 惣名キック

ある男と女がいた。


その男と女は市立図書館で同じ本を同時に取ろうとしてたまたま同じタイミングでお互いの手が触れあった。


その男と女はしばらく見つめあっていたが、照れながらも本の趣味が同じということで共通の話題になり、意気投合して交際を始める。


喧嘩もなく、倦怠期も無く、ひたすら仲が良い幸せなカップルだった。


いつも手をつなぎ、いつも目線をくれるタイミングも同じだった。


一つしかない物は必ずお互いゆずりあって、必ず半分こにした。


本を読むときは広いソファーに狭く密着して隣に座り、右手で男が本の見開きの右側をを持ち、女が左手でもう片方の本を持つ。そして仲良く同じタイミングで二人でページをめくる。


ごはんを食べるときも一口自分で食べては、次の一口は食べさせあう。

にやけずにはいられない瞬間の毎日だった。



寝るときも同じ布団に入り、一人用の布団セットを二人で仲良く使っていた。


二人は結婚し、子供が出来た。



双子のかわいい女の子だった。


同じ顔をした二人に両親は同じ服を着せ、同じ髪型にして、同じように愛情を注いだ。


片方がぐずったら、もう片方も負けじとぐずる。


同時にぐずったときは両手でかかえあげて抱っこをする。


父親にも抱っこされたいし、母親にも抱っこされたいとぐずると時もあった。

その時は父親と母親が向かい合ってハグをし、その間にその双子を挟んだ。



そんな両親から愛情を注いでもらい、いつも仲睦まじい両親を見て育った双子の女の子は欲しい物が同じだと同じものを買い与えられ、一つしかない物は小さい時から仲良く何でも半分こにした。



やがて小学生、中学生になり、クラスが分かれて進級、進学するときも、二人仲良く同じ時間に登校、同じ時間に帰宅、時にはいたずらでお互い入れ替わって違うクラスに往来して授業を受けたり遊びに行ったりして同級生や先生の反応が入れ替わる前と同じことを後で笑いあった。



容姿は二人そろって文句のつけようがない美人だった。同じ背格好、同じ顔、同じしぐさ、見分けが全くつかず、両親ですら間違うことが毎日だった。二人は美人双子として町中で有名だった。


双子は高校生になった。


双子は年頃になり、異性を意識することになる。

容姿端麗な双子は高校で交際の申し込みが絶えなかった。

上級生、下級生関係なく、二桁では済まない数の交際を申し込まれたが、双子は交際を断り続けた。


あまりにも違いを見分けられなかったため、間違って交際を申し込まれる事ばかりだった。


双子は告白された異性以外にお互い好きな男の子が出来た。


その相手は誰なのかを、せーの、と同時に言い合うと、

同じ男子を好きになっていた。


二人はここでも仲が良かった。


今までは申し込まれる側として振ってばかりいた双子はその男の子を呼び出し、二人同時に現れて告白し、二人とも付き合うか、どちらとも振るか、で、男の子に交際を迫った。


結果、その男の子はどちらとも付き合う選択をした。


デートするときは二人に挟まれて出歩き、片方だけデートしたときは、翌日にもう片方とデートした。


双子の女の子はまた悪ふざけをして、そのデートも途中で入れ替わってみたりして、その男の子が入れ替わったことに気づかずに同一人物としてデートを続けていた事に笑い転げたりした。


そうした仲の良い双子と共通の交際相手の男の子の三人は学生生活が終わり、社会人になる。


三人同じ布団に入り、同じ夜を過ごす。


やがて結婚を考えるようになった。



書類上、結婚は男と女一名ずつしか選べなかった。


双子はそれでも家を分けて、一年おきに入籍と離婚を繰り返し、一年おきに夫婦生活を送ることにした。



一年ごとの夫婦生活は長くは続かなかった。


生まれてからずっと同じ物を買い与えられ、同じ愛情を受け、一つしかない物は半分こにしてきた。


今まで生まれてから二十数年、一度も喧嘩をしたことが無かった双子は生まれて初めて喧嘩をした。



その双子は生まれて初めてお互いの欲しい物を”順番こ”というルールで一年という期間が我慢できなかった。




交互に結婚生活を送る一年の間、男の子の中でお互いの距離が出てきてしまってどちらかがフラれてしまうと焦っていた。




数年後、双子は逮捕された。



双子それぞれの自宅から、きれいに縦半分に切られた白骨化した遺体が見つかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読いたしました。 淡々と書かれた文章が心地よいと感じました。 しかし、その書き方がラストの恐怖を増長させていますね。
2018/05/02 06:16 退会済み
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