ぼっちを極めて逆に現代ハーレム
この作品は作者の処女作なので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします
短いお話ですが楽しんでもらえると幸いです
教室。そこは日本の縮小版だ。
権力を持ってる奴の周りには人が溢れかえり。
何も持たない奴の周りは閑散としている。
日本の社会もそんなもんだ。
力を持つものに対しては愛想をふりまき、ホームレスやニートに対してはゴミを見るような目をするのだ。
教室なんて存在するのは子供しかいないのだからそれを隠そうとするやつさえいない。
「ねぇねぇユウくん! 今日私たちとカラオケ行ってくれる?」
「うん? あぁいいよ!カケル達も一緒に連れてってもいいか?」
「もちろんだよ! あ、そうだ!何ならクラスみんなで行こうよ!ちょっと遅くなったけど親睦会しよ! 」
「お! いいね! もう5月の終わりだけどまだやってなかったから丁度いいね!」
「えーっとウチのクラスって何人だっけ?」
「今丁度みんないるんじゃないか?おーーいみんな!カラオケ行こうよ!」
普通急に放課後カラオケに行こうと誘われても部活があったり、予定があったりしていけないだろう。普通ならな。
今みんなに声を掛けたのはウチのクラスで1番のイケメンと思われるユウだ。
女子がコソコソ喋っているのを偶然耳にしたのだが、彼は優しいし、勉強を教えるのも上手で、サッカー部で完璧なんだってさ。
そしてユウと喋っていたのはアヤ。
彼女は遊んでるように思われる外見をしている。
つまり、まぁギャルっぽい。
しかし、これもまた男子がコソコソ喋っているのを偶然耳にしたのだが、ギャルっぽい見た目なのに、お弁当は手作りで持ってきてて、細かい気配りができて、男も女も関係な―く気軽に声をかけてくれるし、人懐っこい笑顔を浮かべるので、男子は軒並みノックアウトされたらしい。
――つまり
「あ、行きます行きます!行かせてください!!」
「もしもし、部長? アヤちゃんとカラオケに行くので今日部活休んでいいですか? はい、はい、もちろんです。必ずライン交換してきます。ありがとうございます!」
「みんな、今日は協力しましょ、敵味方関係ないわ。みんなで美味しくユウくんをいただきましょう」
こうなるわけだ。
「よーし、えっと参加するのは34人だな?あれ?このクラスって何人だったっけ?」
「え?34人でしょ。手挙げてるのみんな数えたし。じゃあみんな行きましょ」
そう言ってクラス全員教室を出て行った。
まぁタイトルからお察しだと思うがこのクラスの正式な人数は35人で俺はナチュラルに省かれている。
ちなみに手は挙げていた。
別に参加したかったわけではない。
手を挙げても気付かれることはないのだ。
授業で「この問題分かる人ー?」と聞かれ手を挙げているのが俺だけでも気付かれない。
35人いるって先生は分かっているはずなのにも関わらず全員が入らなければいけないはずの委員会には気付かれないので入っていない。
―ユウくんが俺の代わりに2つもやってくれている。
とまぁこんな感じで誰にも気付かれない生活を送っているのだ。
多分さ、ぼっちって友達いないってバレるのが嫌だから便所飯したり、誰にも仲間に入れてくれなかったり、ラインの友達がいないーって騒いだりしてるやつだろ?
ぼっち極めるとな、基本的に誰の目にも留まらないんだよ。だから教室で1人飯を食ってても笑われない。話しかけても気付かれない。ラインなんて入れてもどうしようもないからインストールすらしてない。
とまぁ、こんなもんだ。
さて、誰も居ない教室にいたところで日課の遊びをしながら帰るかなー。
「よう、元気か?」
「昨日のあのテレビ面白かったよなー」
「あいつお前のこと好きらしいぞー」
これは全て俺のセリフだ。
廊下を歩いている生徒に片っ端から声を掛けていくのだ。
なんで、こんなことしてるかって?
そりゃお前
「なぁ今なんか聞こえた?」
「いや、俺は聞こえなかったけど」
「なんか人の幻影見た気がする」
こうなるのが面白いからだよ。
俺はそいつらの目の前に出て行って喋りかけてる。
普通人が目の前で喋りかけてきたら自分に喋べってると思うだろ?
俺がやっても空耳としか思わないし、俺の姿をハッキリ見えるやつは皆無。
稀にぼんやり見えるやつも声はあまり聞こえない。
とまぁこんなことをしてる俺だけどな、なんか最近視線を感じるんだよ。
俺はこの高校に入ってすぐにぼっちなったんだけど、今まで人の視線を感じたことなんてなかったから正直めっちゃ驚いてる。
この前廊下でなんで俺はぼっちなんだー!って叫んでから視線を感じるよになったからあの叫びが原因かもしれない。
「みなさん!この人ですよ!」
俺の目の前にきて美少女がそう言ったが、俺の後ろには誰もいない。
ん?まさか……いやいやまさかなぁ
「あらー、ほんとにいたのねー」
おぉ、ナイスバディだ。
いや、それどころじゃない。
俺に向かって話掛けている。
おかしいのだ。俺はこの高校で話しかけられることはありえないはずだ。
究極のぼっちだから。
「あんたでしょ?この前ぼっちだーって騒いでたの」
なんか強気な子がでてきたけどこの子もえらい美人だな。
でもこれは確定だな。
「えっとあれか?みんな俺と同じぼっちなのか?だから俺のことを認識できるのか?」
これしか考えられない。
ぼっち仲間なのでお互いに認識できる。
これ以外の理由なんてあるなら教えてほしい。
俺が喋った後この3人は少し顔を見合わせ
「えぇ、まぁあなたのお仲間ですね」
「私たちもー、不安だったのでー、仲間が見つかってよかったわー」
「私たちと出会ったからにはもう安心しなさい!」
おぉ!仲間だった!これは普通に嬉しいな!
俺はこの出会いから高校生活を一変させた。
この3人と常に行動を共にするなったのだ。
これは俗に言うハーレムというやつなのではないだろうか。
ぼっちからハーレムとかどんなラノベだよ!
まぁ時々彼女らの笑顔に勘違いして手を繋ごうとしても避けられるし、ハーレムとは言えないだろうけど。
俺が体調悪くて寝込んでいると彼女らはお見舞いに来てくれたこともある。
具合が悪い時に側に居てくれるという安心感からか、すぐに寝てしまったが起きた時には体の調子はかなり良くなっていた。
冬が終わるころになると俺はよく体調を崩すようになった。
その度に彼女らはお見舞いに来てくれるのだが、何となく分かった。
……俺の体はもう限界だ。
そのことを彼女らに伝えると。
「なんでそういうこと言うんですか!」
そんなに怒るなよミオ
最期にお前の笑顔を見せてくれ
「私たちはもう何もできないのね、自分の未熟さが憎いわ、まだよ、諦めちゃダメ、私がなんとかしないと」
もういいんだナナ
今はお前の安心するような声が聞こえるだけで充分だ
「まだ何かあるはず!なにが、なにが足りないってのよ!もう私たちはお別れなわけ?そんなの許さないわ!私が何とかするから!あんたは意識をしっかり持ちなさい」
エリ最後まで攻撃的だったな
けどお前はいつも俺のことを元気づけてくれようとしてたんだよな
ありがとう
みんな最期までありがとう
「あぁ、ありがとう。君たちがいなければ俺は何をしていたかわからない。君たちの笑顔のおかげだ本当にありがとう。俺以外にもぼっちで困ってるやつがいるかもしれない。だから君たちの笑顔で助けてやってほしいんだ。おこがましい願いかもしれないが、どうか頼むよ……」
俺はそう言うと瞼をゆっくり下げた
「あぁぁぁぁぁぁ!!!いやぁ!!」
「……間に合わなかった……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「……………」
sideミオ
「私たちは彼に幸せを教えてあげることはできたでしょうか?」
彼が瞼を閉じてから1時間後私は2人にそう尋ねました。
「分からないわ……けど彼は最期笑っていた。今まで彼の笑顔は見たことなかったし、もしかしたら私たちと居たことで幸せを感じることができたのかもしれない」
「そうね、彼はこの1年頑張ったわ。普通あの状態で1年間耐えることなんてできないのだから、幸せを感じてくれたでしょう」
「そうですよね……最初彼を見かけた時、なんでぼっちなんだーって叫んでたからびっくりしちゃいました」
「そうね、まさか自分のことをぼっちって認識してるとは思わなかったわ」
「ほんとそうね、でもミオが騒いでるやつを見つけたって言うからどんな悪さをしてるやつかと思って来て見れば、まさかぼっちだーって騒いでるとはね」
そう言って私たち3人は笑い合いながら話します。
彼が私たちに願ったのは笑顔。
だから私たちは笑うんです。
最初はお仕事のつもりでした。
けど途中から私たちはどうやって彼を救うかだけを考えるのではなく、いつまでも彼と一緒にいたい。そう思うようになりました。
「さて、そろそろ次のお仕事に行きましょう。今度は正真正銘の悪霊退治です。ちゃんと成仏させてあげないとみんな笑顔でいられなくなります」
そう言って私たちは立ち上がります。
さようなら、ぼっちの幽霊さん
大好きでした