王都への道(2)
『…ディアン様』
「あぁ。」
モルダと僕は手を握ってさっきまで歌っていた歌をやめ、警戒していた。
モルダは少し緊張した様子だったが、僕が少し握っていた手を強く握ると安心したように、こちらを見て微笑んだ。そして、また警戒した。
警戒している理由は簡単だ、後ろから何者かが僕達を付けているのだ。
できるだけ人間とは仲良くしたいとは思っているが……。
モルダはまだ練習中だが風で偵察することができる。僕も勿論できるがここはモルダがやる気なので任せてた。
〘ディアン様、付けている者は4名です。どうやらディアン様と私を捕まえ奴隷商に売るようです。そのうちの一人は荷物持ちとして3名と目的は違うようです。〙
モルダは思念を送る魔法もマスターしたのか…成長したなぁ。
〘そうか…。モルダ風の操作上手くなったな、上出来だ。荷物持ちは後でいい、他の3人は僕が片付ける。〙
〘…はい。(ディアン様が黒い笑みを…)〙
仲良くしたいとはいったが、こういう奴らは駄目だな。ここは僕の腕の見せ所だ。モルダにはまだ僕のカッコいいところを見せていないからな。
と、ディアンはニヤリと笑った。
悪党3人組side.
「クソッふざけんじゃねーぞ!?」
と、ガタイの大きな顎鬚を生やした薄汚れた男が顔を真っ赤にして怒りを顕にしながら叫んだ。
それに合細い男と小さい男二人は合わせて
「「親分の言うとおりッスよー!!」」
と拳をプルプルと震わせながら叫んでいた。
「あの女、俺が少し油断した隙に全財産奪いやがって!!!! ぶっ殺してやる!」
「「親分の、全財産を盗むなんて許せないッスーーー!!!」」
「……お前ら本気で思ってるか?」
とガタイの大きい男は二人を睨む。
「「当たり前ッス!!」」
とまた、二人は声を揃えて汗を吹き出しながら叫んだ。
「フンッ……おい! 荷物持ち!!」
「…なんですかロイさん俺は荷物持ちじゃなくて、クレイって名前なんですけど……」
「ロイって言うな! 親分と呼べ!!」
「はぁ……親分さん。何ですか」
「お前、これからする事にもらすなよ。もらしたら命ないと思え」
「……なにすんですか、やめて下さいよ」
「おいてめぇら、俺達は今金がねぇよな?」
「「へい!」」
「耳を澄ましてみろ」
「「へい??」」
「静かにしろ!!」
「~♪」
「「!!」」
「!」
「まだ、姿は見てねぇが歌の上手い子供が数匹この森に迷い込んでるようだ、こいつらを捕まえて売ればどうなる?」
「「金が戻ってくるッス!!!」」
「そうだろう………」
と、ロイは黄色く黄ばんだ歯を覗かせてニヤリと笑った。
荷物持ちのクレイside.
はぁ、冗談じゃない!
ロイさんの不注意で、酒場で気に入った女と話していて気付ば路地裏で稼いだばかりでギルドに納めていなかった全財産が盗まれていた…ことには同情するが、何故そこで子供を誘拐して奴隷商へ売るという話になるんだ!?
もう、こいつらには付き合ってられんぞ、最初は荷物ちの依頼で行ってみれば薄汚い悪党共で、なかなか駄賃を渡さねぇと思ったら金がねぇのかよ!!
ふざけんな、こいつらには付き合ってられねーわ。隙を見て俺は逃げる!俺も巻き込まれたくねーからな。
よし、3人が子供を見つけて追っていってる間に……っと。ん? 何だ? 何だってこんな場所に小さな子供が二人も…。迷子か?
いや、関係ねぇ…俺はとっととずらかるぞ…。
とクレイは反対方向へ足を踏み出した途端。
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
「な、なんだぁ!?」
後からロイ達の叫び声が聞こえたのだった。