表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

静寂の果て

 逃げ場の無い眩い日差しと騒めく風に抗う術も無く、公園のベンチに腰を掛けていた。

 身動き一つせぬ死体の様に、唯々、耐え忍び続ければ、やがて、暗く静かな時が訪れる。

 そう、自分の中の澄んだ空気が漂う薄暗い水の上に……。

 しかし、それもここでは、連綿と続く訳ではない、ピンと張り詰めた水面が波立ち、子供の笑い声が走り抜ける。

 暗く静かな空間から引き戻されるように目を開けると、数人の子供がおもちゃの銃を振り回し、亡者の群れを駆る小鬼の様に飛び跳ねていた。

 時代は変われど、子供の遊びとは、いささかの変化も見せぬ物。

 そう言う物でノスタルジックな気分に浸ろうとでもいうのか、駆け抜ける子供達を僅かに目で追っていた。

「バンバーン、今の当たったぞ! その銃はもう使えないぞ」

 跳ね回っていた子供の一人が急にその場でうずくまる。

 怪我でもしたのだろうか、と、少し気になったが、面倒事は御免だった。

「ベレッター! 俺のベレッタがー!」

 蹲った子供が急に芝居じみた仕草で天を仰いで嘆いている。

 どうやら、子供の遊びと言う物も、随分変わったらしい。

 最近の子供のやる事など、理解できるものではないな……。

 視線を引き戻すと、流れるままに遊ばせる。

 唯、静かな時間に身をまかせられる、清涼な空気の漂う場所がほしかった。

 ひんやりとした薄暗い水辺に佇み、静かに闇を見つめる。

 そうした安らぎを得られる場所に……。

「……すいません」

 どこか遠くの方から、呼びかけられたような気がして、顔を上げたが、強い光が差し込んで目が痛んだ。

 六角形の光が列を成して自らの居場所を確保しようと、クルクル回りながらぶつかり合う音がガラガラと鳴り響き、その奥で動く黒い影を見通させまいとしていた。

「ご苦労様です……ここに、置いておきますね」

 若い女性の声であったが、再び目を開いて周囲を見回した所で、その姿を見つけられる筈もなく、ベンチに置かれたペットボトルのお茶が汗をかいていた。

 竹箒を抱えて公園のベンチに座っている男が、どう見えるのか、己の役割も考えずに余計な物を持ち歩くべきではなかったのだ。

 早いとこあの死体を埋めてしまわねば。

 音の無い土の下へと沈みゆく夕日を追って家路につく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ