一枚の紙
物語の出だしの部分だけとなっております
どうぞお暇を使って見てやってください
私は旅をしていた。
故郷から遠く離れた、辺境の地
私は大きな屋敷を見つけた。とても不思議な雰囲気で佇んでいて、なぜだかとても中に入りたくなった
中のようすを伺おうと玄関前に立ってみると、何かが書かれた紙が落ちていた。
拾って読んでみると
<ショユウブツバイバイケイヤクショ>(所有物売買契約書)
と書いてあった
気がつくと目の前に在ったはずの家は忽然と消えてしまっていた
そしてなんと私の首に肌身離さずかけていたロケットも無くなっていた
私が呆然と立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた
「どうしたの?こんな時間にこんなところで」
振り向くと、そこには小さな女の子が居た
「あなたこそどうしたの?子供が外にいていい時間じゃないよ。両親がきっと心配してるわよ」
その子は呆れ混じりに言った
「私はいいのよ。見た目は子供でも貴方と同じくらい、いやそれより生きているかもしれないわ」
そんなことを言ってきた
いや、だけども彼女の姿はどう見ても子供で、年は10才を越えたくらいだとしか見えない
「あなた、どうみても子供じゃない。ご両親は?近くなら送ってあげるわよ」
その子は今度は大袈裟にため息をついて、そしてこう言った
「分かったわ。あなた、此処へ来たのは初めてなのね。ここでは見た目での年齢は意味をなさない。むしろ見た目ほど信頼出来ない要素はないのよ」
「え?」
「ここではある契約書を持った瞬間。その契約書の有効期限が切れるまで、ずっと売買ゲームをする場所よ」
「えっと......つまり......」
「詳しいことはその契約書に書いてあるわよ、しっかり読んでおいた方が今後の身のためね」
「......?契約書?」
「貴方が今手に持っているその紙よ。これは貴方のモノを貴方の意志に関わらず自由に売買している紙よ。貴方がどれだけ大事にしているモノでも、勝手に買われて、勝手に誰かのもとへ行ってしまう。貴方がそれをどれだけ拒もうと、どれだけ渡したくないと願っても、勝手に買われてしまう」
私は言葉の意味を理解しきれないまま、彼女の言葉を聞いていた
「私はその契約書によって、勝手に年齢を買われてしまった。それがつい去年のことだった。身長は縮み、声も幼くなってしまった」
「とても驚いたでしょう」
もし自分が急に若くなったら、驚く。それはもう、とても驚いて声もでないだろう
「そんなことないわ。きっと誰かに買われるだろうと覚悟していたから」
「え?誰かにとられることを知っていたの?」
「契約書はチラシとしても使われているのよ。裏を見れば自分が売っているものが分かるはずよ。最近買われたものも」
「裏......?......あっ!」
なんてことでしょう。そこには私の大事なロケットが出されており、備考の欄には既に、売り切れという表示が書かれていた
「なんてこと!誰かに買われちゃっているわ!」
私はどうしていいか分からず、情けなくも狼狽えてしまっていた
「貴方の大事な何かが買われちゃったのね
。でもそれはここでは仕方ないことで、とりあえず諦めるしかないわ」
「諦めるってそんな......!」
「とりあえず、よ。取り返すこともちゃんと出来るのよ」
「どうやって!?」
「焦ってもどうしようもないわ。落ち着きなさい。」
私は深呼吸をして、彼女が言った言葉を反芻した。確かに焦っても仕方ない。まずは状況を整理しないといけない
「それで、どうすればいいの?」
「まずは貴方の大事な何かが買われたのよね」
「ロケットよ。中には大事な写真が入っているの」
「そう、ロケットが買われたのね。まだ形が有るものが買われただけましね。あーでも壊されちゃうことはあるかも、まぁいいわ。そのロケットを買われたときに売り上げが出たはずよ。ほら契約書の表の下の方に表示されているでしょ」
言われた通りに見てみると、契約書の下には~売り上げ~という欄があった。
そこには累計売り上げ金額と使用可能な金額が記入されていた。
「120......?これはどのくらいの価値があるの?」
「120ってことは、だいたい一週間分の食料ぐらいかしら」
「なんてこと!私にとってはもっと価値があるのに......」
「あなたが大事だからこそ売られたのよ」
「どうして......。私はあれがないと......」
「どうしてもというなら取り返す方法もないことはないのよ」
「知りたいわ!教えて!」
「こっちは年上だしもっと敬語を使うべき。あなたは自分が下の立場という事をもっと理解するべきね」
どう見ても子供にしか見えない彼女は不機嫌そうに言った
「ごめんなさい。それでは改めてお願いします。どうか取り戻す方法を教えてください」
「それで良いのよ。私はともかく、他の気性の荒い奴等とかには気を付ける必要があるから。今のうちにしっかり敬語は意識していかないとね。それで、取り戻す方法だけども、貴方がまた買い戻せば良いのよ。そのロケットを」
「そんなことできるんですか?」
「まぁ探すのは大変かもしれないけど、一度市場に出たものは再び、ちゃんと市場に出される。ただし、値段は買われたときより高くなってるわ」
「それじゃあ今の私のこの売上金では買えないのね」
「そういうこと、でも他になにか売れれば買い戻すことができるのよ」
「でも......」
私の契約書の裏にはロケット以外の商品が何も並んでいなかった
「私はロケット以外に商品がなにも無いみたい。これじゃあ何も売れないわ」
「そう、それはその方が好都合よ。それなら他に何も買われる事がない。失わなくてすむということなのだから。とりあえず私に付いてきなさい。私の住んでいる場所に連れていってあげるわ」
私は彼女に言われるがままに付いていくこと以外、選択肢はないのでした
次話 「彼女達が失ったもの」に続きます
作品を投稿するのは初めてで、なろうに出すのにも凄く勇気が必要でした。
内容はどうでしょうか?貴方の興味を少しでも惹けたのでしたら光栄です。
これから本作の背景となる世界観やキャラクターの詳細などについて触れていきたいと思います。
随分と稚拙な作品となっておりますが批評のほどをお願い致します。