表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/20

6 大魔導士を誘う

『ハチが悪魔だったことは驚きですが、ハーレム要素が増えてきて、女神としてほっとしています。本日の恋人候補! 大魔導士、ルーティア』


 朝、また、女神からの啓示が来た。


 大魔導士なんて、いったいどこにいるんだ?


 結局80体も軍隊蟻を倒していたので、4万ゲインももらえた。

 日本円だと40万ぐらいの金だ。


 しばらくはこれで生活できるな。


 街に出ると、

「女騎士のマリシャさんを救った冒険者さんですって」

「貴公子そのものね」

「思い切って告白しようかしら」

 なんて声が聞こえてくる。


 マリシャを助けたこと、もう広まってるのか。

 SNSがなくても噂って拡散するんだな……。


 さて、俺とエリザはファルト伯爵の館に行った。

 伯爵は当然男なので【チャーム】は利かないが、家に仕える女騎士を救ったということで、無茶苦茶感謝された。


 まあ、人命救助をしただから、それも当然なのか。


「本当にあなたはご立派な方だ。もし、あなたが特級冒険者になって、騎士身分を手に入れられたらすぐにミルカを妻に出しましょう」


 そうか、冒険者もトップランクになると騎士(つまり貴族身分らしい)に列するんだな。


「俺なんかじゃ、とても釣り合わないですよ……」

「容姿だけならこちらが足りないぐらいなんだがね。こういう言い方は失礼かもしれないが、君なら確実に王女の愛人にでもなって立身できるだろう」


 つまり、ヒモみたいなものかな。

 わからなくはないけど。


「残念ですが、すでに私という妻がいますので」

「お前は妻じゃない」


 エリザが妻アピールを隙あらばしてくるのでちゃんと止める。


「あの、ミルカ姫にお聞きしたいことがあって今日は参ったんですが」

「わかりました。すぐに呼んできましょう」


 そしてミルカ姫と会うことができた。

 マリシャもいて、深く頭を下げてきた。顔も赤い。

 昨日のキスのことを覚えてるんだろうな。


 姫はエリザのことを知らないはずなので、妻ではなくて冒険者で、恋愛関係でもないとはっきり断っておいた。

 やけにほっとされた。


「それでお話というのは?」

「それについては私が言いますね」

 エリザの策なのでエリザから話してもらおう。


「このあたりで高名な女性魔導士の方はいらっしゃいませんかね? あるいは高名な女性のエルフでもいいです」


「エルフの集落は近くにはないですね。女性の魔導士なら隣のリョーアンという街に有名な方がいらっしゃいます」


「ありがとうございます。ちなみにお聞きしますが、大地の精霊や森の精霊にお知り合いなんていらっしゃいませんよね?」


 手を振って否定の意を示すミルカ姫。


「とても、私たちには出会うこともできません。よほど名のある魔導士の方、それこそリョーアンにいるような方でないと……」


 話がいい方向に流れているのか、エリザはご機嫌だ。

「わかりました。ではその魔導士の方に紹介状を書いていただけませんか?」


 女騎士マリシャを助けたことで、俺の株も上がっているのか、すぐに紹介状をもらえた。


 屋敷を出たあと、エリザに尋ねた。

「お前、精霊に会いたいのか?」


「そうです、そうです。生命エネルギーを管理しているとしたら、大地の精霊や森の精霊ですよ。そのあたりに話をつけて体力をチートにしてもらうんです」


「でも、そんな神様に近いような存在にやってもらえるのか?」


「そこで、【チャーム】が生きてくるんですよ」

 エリザは確信を持って言った。


「生命エネルギーを管理するような精霊はおそらく女性です。なら、アルトさんに惚れます!」


 そう上手くいくのだろうか。


「ご安心ください。私は偉い悪魔ですよ。女性をたぶらかす方法ならなかなか詳しいですので。今から私が策を授けますよ!」


 なかなかとんでもないことをエリザに提案された。


 そして、俺はリョーアンの街に行った。


 リョーアンはニンナの街より人口が多いのか建物の密集度が高い。

 その街の中でも少し高台になったところに大きな屋敷があった。


 そこに大魔導士がいるそうだ。


 ちなみにエリザはハチの姿で同行している。

 今回は大魔導士と一対一で会ったほうがいいかららしい。


 屋敷に来ると黒猫が一匹出てきたが、紹介状を見せると口で受け取って、中に入っていた。


 そのあと、20代なかばぐらいの妖艶な女性がやってきた。

 胸を強調したドレスを着ているし、脚も長いスリットが入っている。


「はじめまして、大魔導士ルーティアよ。さあ、中に入って」


 ルーティア……そうか、今日はこの人にフラグを立てるのか……。

 そのままルーティアに書斎に通された。


「大魔導士の割にお若いんですね」

「いえ、これは森の精霊の魔法を使って、老化を防いでいるの。本当はよぼよぼなのよ」


 そうか、森の精霊の力を借りれば体力をチートできるってのはあり得ない話じゃなさそうだな。


 ハチが飛んでると目立つのでエリザは服の肩あたりに止まっている。


「ずばり要件を言います。その森の精霊と会わせてほしいんです」


「悪いけど、かけだしの冒険者が会える存在ではないわよ」


 そう言われると思っていた。


 ここからエリザの言われていたとおりにする。


「あの……俺の目を見てください。そしたら、俺の気持ちがわかるかと思います」


「悪いけど誠意ぐらいじゃ――」


 ルーティアが俺の目を見た。


 ――キュピーンッ!


【チャーム】発動!


「あっ……あうっ……」

 ルーティアがいきなり悩ましげな声を出した。


 見惚れたようにルーティアが俺の顔を見つめている。


「あなたの顔、90年前に私がはじめて愛した男にそっくりだわ……」

 この人、何歳なんだ。


「さっき、誠意だけじゃダメだとおっしゃいましたよね」

 俺は右手を胸に当てる。

「じゃあ、俺の体を少しだけ貸します」


 ※あくまで、エリザに言われたとおりに言ってるだけで、俺は女子の前でこんなこと言えません。


「大魔導士ルーティア様がいろんな意味で、楽しいひとときを過ごせるように俺なりに努力します。いかがでしょうか?」

次回は夜23時ぐらいの更新を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ