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3 エリザのいいところ

 翌朝。

 宿の中でエリザが女の姿をしていると、宿代を二人分払わないといけないので、ハチでいてもらった。


 朝食はおかみさんが食べきれないほどの量を出してきた。

「これから初めて冒険者ギルドに行くんだろ! 応援してやりたいのさ!」


 本当に魅力MAXってすごいな……。


「あれ、ハチが入ってきてるね。つぶさなけりゃ」

「あっ、おかみさん、ハチにも命あるし、許してやりましょう!」


 宿を出ると、エリザは人間の姿になって出てきた。

 羽を閉まった、普通の冒険者っぽい姿で。


「そんな調節もできるんだな」

「悪魔の姿は露骨すぎますからね」


 街を歩いているだけでものすごい数の視線を感じる。

 男の視線まで感じるのでまさか性別を無視して【チャーム】が効いてるのかと思ったが、そうじゃなかった。


「なんて美少女だ……」

「あの、大きな瞳で見つめられたらたまらねえぞ」

「でも、たしかに男もかっこいいな……」

「あんな女と旅するなら冒険者でもいいな……」


 エリザも文句なしに美少女なのだ。

 男の視線は釘づけと言ってよかった。


「大丈夫ですよ、私のみさおはアルトさんに捧げます」

「じゃあ、俺も貞操はお前から守ることにするわ」


 俺を愛しているがゆえに、エリザのことしか愛せないように心をいじられたりする危険性は高い。


 そして冒険者ギルドに着いた。

 地方都市のギルドだからそんなに大きくはないようだが、酒場も併設してるし、飲み食いにも使えそうだ。


 ギルドに入った途端、また視線を集めることになった。


「何者だ、あいつら……」

「やけに神々しい。伝説のパラディンか何かか……?」


 パラディンどころか悪魔が一人いるんだけどな。


 でも、褒められるのは悪い気分じゃない。


 さて、登録だ。

 受付の女の子と顔を合わせる。


 ――キュピーン!

 なんか効果音みたいなものが聞こえたような……。


「すいません、冒険者の登録をしたいんですが」

「…………」

「あの」

「…………」


 完全にぼうっとしている。


「す、すみません……。あんまり美しかったもので、つい……」

 男でも美しいって言われるんだ。


 そうか、この子が朝に名前を知ったリクルか。

 女神様、情報提供ありがとうございます。

 だとすると、さっきのキュピーンというのは【チャーム】が聞いたってことなのかな。


「私の名前はリクルです。よろしくお願いします」

「はい、知ってました」

「え?」

「ああ、気にしないでください」


 でも、この子も派手なタイプじゃないけど、美人さんだな。

 ショートボブとメガネが合ってる。

 なんだろ、道端に咲くけなげなタンポポの美しさっていうか。


「どうやら、受付嬢の子、みんな狙ってたようですね」

 エリザが後ろで言った。


「アルトさんのこと、睨んでる人いますよ」

 そっか、同性には敵意の対象になったりするのか。


 でも、当たり前と言えば当たり前かもしれない。

 ムキムキの格闘家に愛されたりすると厄介そうだし。


 この能力によるデメリットもちゃんと把握しといたほうがいいだろうな。

 よくわからないままというのはまずい。


 あと、ギルドのことも詳しく聞きたい。

 チートで戦えるかどうか現時点ではまったくわからないのだ。


 しかし、まあまあギルドは混んでいる。

 もう俺の後ろに並んでる奴がいる。


 俺だけのために時間を使うのもまずそうだ。


 俺は小声になって、


「リクルちゃん、俺、全然詳しくないんで、もし時間あったら、どこか違う場所で教えてもらえないかな? 君とゆっくり話がしたいんだ」


 仕事内容で聞きたいことがたくさんあるのは事実だが、この受付の場所で時間をとると、いよいよ周囲に恨まれると思った。


 だから、場所を変えられないかと考えたのだが――


「そ、それって、もしかして……デートってことですか?」


 これが【チャーム】の威力か!


 さらに男の冒険者の一部から強くにらまれた。

「おい、どういうことだ!」

「リクルちゃんを連れ出すとか万死に値するぞ」


 そうなるよな……。

 これは面倒なことになるかもな……。


 困ったな……。ハーレムにはしたいけど、ちゃんと手順を踏んでやりたいというか……。これは慎重に能力を扱ったほうがよさそうだ。


「違うよ! あくまでも空き時間に別室とかで教えてって意味!」

「あ、そういうことですね……。私、そそっかしくてすいません!」


 もう、リクルちゃんは顔が真っ赤だ。

 誰が見ても恋してるって顔。


 しかし、ほかにも問題があった。

 男たちの対応をどうしよう……。

 ケンカでもふっかけられそうだぞ……。


 ――と、エリザがにらんでる男たちのほうにたたたっと走っていった。


「いや~、すいませんね~、あの人ったら、本当に初心者なうえに慎重な性格なんです。ギルドの方にたくさん聞きたいらしいんです。許してあげてくださいね~」


 そして、男たちに「これからよろしくお願いします~。エリザと申します~」とあいさつしてまわる。


「そっか、エリザちゃんか、へへへ……」

「俺たち、そんなに心狭くないぜ、ふふふ……」

「うわあ、エリザちゃんの手、すべすべだ」


 こいつら、魂奪われてもエリザとエロいことしそうだ……。


 ただ、エリザが何をしてくれてるかはわかる。


 懐柔だ。

 俺が恨まれてるから、フォローを入れてくれたんだ。


「さあ、行きましょうか、アルトさん。一度出ましょう!」

 それから、エリザは俺を連れ出した。



「なんか、わざわざ悪かったな……」

 サンドウィッチを買って、広場で二人で食べる。


「私だけだったら、恨まれようと気にしないんですけどね。アルトさんの戦闘に関する能力が未知数すぎるので、保険をかけておきました」


「たしかに容姿・魅力のステータス以外、何が高いとか言われてない」


「まあ、これぐらいの気配りは惚れた弱みでちゃんとしてあげますよ」

 にこりとエリザは笑う。


「ありがとう。お前、マジでいい奴だな」

「お返しはキスでいいですよ?」


 いっそ、本当にキスしようかなと思ったが――


「キスでも魂奪われたりしない?」


「誤差の範囲です」


「やっぱりキスはやめようかな……」


「ほ、本当にちょっとですよ……。一回のキス程度でその人の人生変わるほどのことはないですよ……会社で言えば半日有休をとるかどうかぐらいの差ですよ……」


 それぐらいなら許してもいいかな……。


 いや、これでずるずる愛欲の日々に落ちるのはよくない気がする……。


「俺が目指すのはハーレムだ。少しは初志貫徹する!」


「ちぇっ……。話を戻しますが、簡単なクエストをこなして、どれぐらいの力があるか見ておくべきですね。この世界、ステータスが表示されないんで」


「そういえば、自分のパラメータはわからないな」


 容姿・魅力はMAXとたしかに女神は言ってたが、漠然とすごく高いということなのか。あるいは隠しパラメータなのか。


「なので、弱い敵と戦って、実力を確認しましょう。敵を知り己を知れば百戦危うからずです」

「そうだな。【チャーム】がモンスターに効くかも確かめたいし」


 ちょうどサンドイッチも食べ終わった。

 なんだかんだで、エリザが俺のことを考えてくれてることがわかって、うれしかった。


「あらためて言うけど、さっきはありがとう」


 悪魔とはいえ、エリザが俺に尽くしてくれること自体は間違いないことだ。


「お礼はキスでいいですよ♪」


「迷うけど……まだやめとく……」


 そのあと、ミルカ姫からもらったお金で基本的な装備を買って、あと、クッキーを買って、ギルドの裏口から中に入った。

 リクルちゃんと会うのだ。

次回は本日夜11時ぐらいを目途に更新したいです。よろしくお願いします!

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