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17/20

16 レストラン開店

 その夜。

 俺がエリザの誘惑に耐えて(エリザはかわいいのでなかなかつらい)眠っていた時のこと。


 誰かの影が俺の顔にかかった。


「ん……? いったい誰……?」


 角が目に入って、やっと認識ができた。


「あぁ、ミランダか――えっ、ミランダ?」


 少しどきっとした。完全に気を許していたが、相手は魔族だ。俺の首でも手土産にして、魔族に復帰しようとすることだって絶対にないとは――


「我をお前の嫁にしてくれ」


「え?」


 なんか、変なことを言われたような……。

 そういえば、ミランダは下着姿だった。


「お前は食事の時に我を嫁にしたいぐらいだと言ったではないか。実はその言葉がずっとひっかかっていた」


 あれ、そんなこと言ったかな……?

 あっ。

 ミランダの料理が美味くて、そんな表現を使ったのだ。


「でも、あれって告白したわけじゃなくて――」


 その時にはミランダが俺の前に迫ってきていた。

 多分、こっちの話を聞いてない。


「人間と魔族が結婚するなどありえないと考えていた。しかし、我はお前がいなければ生きることすらできなかっただろう。ならば、お前に隷属する身分となったとしてもやむをえない……」


 ちょっとミランダは涙声だ。


「別にお前の慰み物でもいい! さあ、抱け!」


「落ち着け、落ち着け! なあ、エリザ、非常事態だ――」


「う~ん、むにゃむにゃ、アルトさん、体にオクラと納豆かけるのやめてくださいよ……」


 こんな時に限って熟睡してるし、すごい夢見てる!


 そのまま抱きつかれた。

 ミランダからすごくいいにおいがした。

 それでいて、こう、なんか、むらむらとするような……。


 まずい、このままでは俺の理性のほうが持たなくて、一線を越えそうになりかねん……。


 しかし、ほぼ同時にミランダのこんな声が聞こえてきた。


「怖かった……」


 ミランダの声はふるえていた。


「このまま殺されるんだって……見つかっちゃうと思うと、怖かった……」


 そうか、こいつ追われてたんだよな。

 だから、ぬくもりがほしいんだろ。


「少し、ここでゆっくりしてろ」

「うん、恩に着る……」


 そのままミランダは眠りに落ちた。

 どうせ、ほとんど眠れてなかったんだろう。

 今晩もこの調子じゃ目が冴えて起きたままだったはずだし。


 朝になったら、エリザが怒ってたけど。


「どうして、この人と抱き合ってるんですか! 説明を求めます!」


「心配するな。何もしてないから! 抱き合ってただけだから!」


「だからって、私が寝てるところに連れこむなんて、あんまりです……。ネトラレじゃないですか~!」


 いや、それだとお前と何かしらの関係があったみたいじゃないか。

 別にお前との間に何も起こってないからな。ここは強調しておく。


 あと、ミランダもそれなりに反省していた。

「嫁というのがそういうたとえの話だとは思っていなかったのだ……悪かった……」


 俺が告白したわけではないと気づいてもらえたらしい。


「そうですよ。妻に対して失礼ですから、よ~く反省してくださいね」

「お前は妻ではない」


「ところで、アルトよ、妻がいないということは、お前はまだ結婚はしていないのだな?」

「結婚してないも何も彼女いない歴イコール年齢だったから、未婚に決まってる」

「そ、そうか……。もし、結婚を考えるようなことあったら、我のところに来るがよい……」


 リンゴみたいに顔を真っ赤にされて、それから泳いだ目で言われた。


【チャーム】が効いたらしいな……。

 本当によく効く魔法だ。


 こうして、俺の周囲で【チャーム】の影響を受けた奴が一人増えたのだった。



 ちなみにそのあと、ミランダはクリスタという偽名を使って、レストランをはじめて、すぐに大評判になった。

 設定では角はニンフのものということにしてごまかしたらしい。まあ、もともと平和な地域だし、どうにかなったらしい。


 あと、俺が伯爵の娘であるミルカ姫に頼み込んだというのもある。

 俺が言うなら大丈夫だろうということで許可が下りた。


 街を歩いていても、

「あのニンフの店、すごく美味いぞ!」

「王都の一流店でも勝てねえって!」

「実際、王都から来た客がびっくりしてたぞ!」


 そんな声が聞こえてくるから、味は本物なのだ。

 いいレストランが街にできて俺もいいことをしたな。

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