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13 森での遭遇

 朝、エリザに話をした。


「なぜか、あの魔族の名前が頭に浮かんだんだけど」


「ミランダですか。撃退した奴の名前ですよね」


「もう、あいつ、去っちゃったしな。何かの間違いだろうか」


 まあ、女神情報が一日ずれることぐらいあるだろう。


「う~ん、もしかしたら、またあの魔族と出会うことだってあるかもしれないですよ」


 それはあまり楽しい話じゃないな……。

 相手は魔族だから、平和的に話が進むとも限らない。


 その日、俺とエリザはファルト伯爵の屋敷に行った。ミルカ姫の父親だ。

 昨日も屋敷で魔族を撃退したことを褒められたのだけど、また今日も来てくれと言われていたのだ。


「何度もご足労いただいて申し訳ない」

 伯爵はやけに上機嫌だった。


「実は君のためにいい武器を手に入れたのだよ。ミルカ、持ってきてくれ」


 ミルカ姫は大ぶりの剣を持って、入ってきた。


「アルトさん、昨日はお疲れ様でした。ぜひ、これを受け取ってください」


「あの、これは……?」


「二百年前にこの街を救った英雄が使っていたという剣です。この街にある剣の中では最高品質のものだと思います」


「えっ、そんなの受け取るはまずいですよ……」


「いいんです。この街が魔族に襲われるようなことも実際にあったわけですし、この剣も宝の持ち腐れにしている場合じゃありません」


 エリザも、

「せっかくですし、もらっておきましょうよ」

 と進めてくる。


 こうして、俺の剣がやけに強化されたのだった。


 これは早速使ってみないとダメだよな。



 俺とエリザは軍隊蟻が出没するエリアに行って、伝説の剣を試すことにした。


 攻撃力は明らかに上がったと思う。

 4回ぐらい斬りつければ、蟻の首が飛ぶのだ。


 逆に言うと、4回も攻撃しないと倒せない程度か……。


「ほいっ、ほいっと!」


 相変わらず、エリザはすぱすぱ蟻を斬って倒していく。


「まだまだ、お前との能力の差が歴然としているな……」


「それはしょうがないですね。私はあくまでも悪魔なんで。一般人だったアルトさんとは力が違いますので」


「わかってはいるけど、なんか釈然としないな……。お前に守られてばっかりか」


 恥ずかしいから具体的には言わないけど、エリザも女の子なんだし、エリザを守るぐらいの力がほしいと思うこともある。


「ああ、俺にも女の子を守るぐらいの力、ほしいな……」


「アルトさんの場合は、女の子に守ってもらう能力が特化してますからね」


 まあ、そういうことだ。俺は女子を落とすことだけ、すごい威力を発揮するので、そこはどうしようもない。


 それに、その力のおかげで前世では想像できないような楽しいこともたくさんあったので、妥協するしかないのだろう。


「さて、もうちょっと森のほうまで入っていくか」


 体力チートのおかげで、疲れはほとんどないし、蟻に囲まれても、おそらく危機になることもないはずだ。


 森に入っても出てくる敵はだいたい軍隊蟻なので、俺はがしがし剣をぶつけて、倒していく。


「今日も、そこそこ儲かりそうですね」


 軍隊蟻は触覚をギルドに持っていけば一体につき、500ゲインが手に入る。


「そうだな、生活するには悪くないな」


 ――と、エリザのこめかみのあたりがぴくぴくと動いた。


「誰かこの奥にいますね」


 悪魔だからなのか、気配を察知するのがエリザは得意だ。


「えっ、またマリシャがピンチなんじゃないだろうな?」


 ちょっと前に軍隊蟻の巣を刺激してしまったマリシャを助けたばかりだ。


「ううんと、そういう鬼気迫る感じではないですね。どっちかというと、枯れてる感じというか……」


「なんだ、それ。森の中で生活してる隠遁中の賢者でもいるのか?」


「あ~、もしかしたらそういうのかもしれないです」


「とりあえず、探してみるか。死にかけてる奴を見過ごしたら罪悪感残りそうだし」


 俺たちはずんずん森の中に踏み入っていく。


 ただ、戦闘が起こっている空気は全然ないから、絶体絶命の危機というようなものは起こってないだろう。


 そして、俺たちはかなり意外な人物に出会った。


 街を襲った魔族のミランダが木の陰に隠れるようにして、膝を抱えて座っていた。


「はぁ……これからどうすればいいのだろう……。帰る場所もなくなってしまったぞ……」


 まだ、こちらには気づいてないようだ。

 なんか、愚痴を言ってるな……。


「勝手に兵士を使ったから役職を剥奪して処刑するって、それはひどいではないか……。我も閑職ながら魔王様の役に立つようなことができないかと動いただけなのに……」


「わかる、わかるぞ」


 俺も下っ端だったからな。


「自分で考えて動けって言うくせに、いざ、勝手に動いたら文句言うんだよ。あのダブルスタンダードは勘弁してくれよ」


「そうか、お前もか――――って、おい、誰だ?」


 がばっと、ミランダがこちらを向く。


「また、会ったな……」


 まさか、二日連続でこいつを出会うとは思ってなかった。


 俺と顔を合わせると、すぐにミランダの目にすぐに涙がたまった。


「アルト、昨日戦った冒険者だな……」


「俺はほぼ戦ってないけどな」


 感極まったようにミランダが言った。


「これも何かの縁だ。我を殺してくれ!」


「はぁ?」

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