エピローグ
私は、ずっとあのヒトことが大好きだった。
あのヒトは私に新しい世界をくれた。
とても優しくて、理想の実現のために一所懸命なヒト。
少し悩み過ぎるところもあるけれど、そんなところも含めて私はあのヒトが好きだった。
『好き』の種類が変わってきたと気付いたのは一五歳になった頃。
みんなが私のことを『聖女』と呼ぶ意味が解ってきた頃。
私がここに連れて来られた意味が解ってきた頃。
あのヒトと私に与えられた予言の意味が解ってきた頃。
私は少しだけ悩んだ。
少しだけ一人で悩んで、すぐに相談した。
私の秘密の話を聞いてくれた宰相さんは、こっそりと自分の秘密も教えてくれた。
大切なヒトとの、大切な約束の話。
「もしかすると、私の望みはもう叶っているのかもしれません」
あまり表情を変えない宰相さんが、その時は優しい微笑みを浮かべていた。
『聖女と崇められし少女は神の子を孕む。神の加護を受けし聖女の第一子により、黒き魔王は滅ぼされるだろう』
きっと、もうすぐ『魔王』は滅ぶ。
あのヒトのことを今も『魔王』と呼ぶヒトは、もうほとんどいない。
けれど私はきっと、あのヒトのことを『魔王さん』と呼び続ける。
それは私だけの大切な呼び名だから。
みんながあのヒトのことをどう呼んでも、あのヒトがあのヒトであることに変わりはないから。
私は、ずっとあのヒトのことが大好きだった。
あのヒトはずっと、私にとっての神様だった。
だから――……
聖女は、神の子を孕む。
初投稿な上に、オリジナルの作品を文章で完結させること自体初めての試みだったんですけど、なんとか無事完結できました。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
気が向けば番外編的なものも書いてみたいな~と思っています。




