表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予言の聖女は囚われる  作者: ナルハシ
4話 狭間の勇者
15/45

4-1 非常事態には走った方がいい

 穏やかな昼下がり。新米魔王の治める魔族の国は今日も平和そのもの――であるはずだった。


 いつものように遊びに来たメリエルの相手をしている時のこと。突如、爆音が王城に響き渡った。

 反射的に窓の方へと目を向けると、城門の方角から煙が昇っているのが見えた。

 城内が慌しくなり、兵士が廊下を走る音が聞こえてくる。


「何がありました? 報告を」


 常に魔王の傍に控える宰相テューロが、転がり込むように入室してきた兵士に尋ねる。

「しゅ、襲撃です! 人間が、正面から突っ込んできました……! 人数は――一人」

「なんだって!?」

 王位継承以来――それどころか自分が知る限り、人間が単独で魔王城に乗り込んでくるなどという無茶な事件は初めてだった。

 驚いて立ち上がるが、爆音に驚いたメリエルが服の裾にしがみついていることに気が付かなかったため、少しつんのめってしまった。

「相手は一人ながら、苦戦を強いられています……現在は城門で食い止めていますが――どうなさいますか?!」

「念のため裏門の警備を強化。正面には水銀の第一・第二部隊を回してください。私もそちらへ向かいます」

 息を切らす兵士とは対照的に落ち着いた様子で指示を伝えると、テューロは兵士と共にこの場を立ち去ろうとした。

「待て、俺も行く!」

 非常事態だ。黙って待って見過ごすことは出来ない。

「陛下を危険に晒すわけには参りません。自慰でもなさって待っていてください」

「非常事態に誰がそんなことするか!!」

 ツッコミの言葉も聞かず、テューロは走り去ってしまった。

「ああ、もう……!」

 ガシガシと頭を掻き毟ると、しゃがんでメリエルの手を握った。

「まおーさん……」

 不安そうに、こちらを見上げてくる。

「大丈夫、何も怖いことはないから。すぐに終わらせてくるから」


 裾を掴む手をそっと解くと、城門へと走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ