表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

<明日の、またね。>

作者: ささめけ。

ちょっと、上げてみる。

「うん、ありがとう。私は大丈夫。」


「………そっか。」


冬の一日。


僕と彼女が分かたれた日。


「じゃぁ、またね。」


「うん。また。」




私立病院の一角。個人病室。


それぞれの単語が、僕を締め付ける。病室の色。言葉を紡ぐ、愛しい彼女の青ざめた唇。




「ちょっと、家族と話すから。」


かける言葉は無く、かけられる言葉もなく………



「………じゃぁ、ね。」


「うん、また明日。」


………彼女と交わした最後の会話。


また明日。その約束は果たされることなく


彼女は、この世を去った。






………。


朝。


「ねぇ、起きてよー。朝だよー。」


間延びした声色で、切羽詰まった言葉が投げかけられる。


あぁ、また夢を見たのか。

どうしても忘れられない夢。忘れたい夢。



その夢に足を掴まれたような、重い足取りでベッドから体を起こす。



「おはよう。」


半分寝ている眼で、母に声をかけた。


「あー、やっと起きたー。」


「朝飯は?」


「冷蔵庫に入れてあるから、チンして食べて。」


「了解。んじゃ、いってらっしゃい。」


「はーい。いってらっしゃい。」


病院勤務の母を見送る玄関先。登校まで、まだ余裕がある。

さぁ、朝ごはんだ。


もそもそと、用意された朝食を口へと運ぶ。

少しベチャついている、いつもの朝食。


これが我が家の味。いつもの朝食。







………僕には、彼女が居た。

五年間の関係。



最初の一年は知り合いとして、二と三年は友達として。


最後の二年は、最愛の人だった。



久々に見た彼女の夢は僕の心に、温かさと寂しさを運んできた。




「じゃぁ、行こっか。」


制服の内ポケットの写真に、声をかける。


女々しいといわれても、仕方ない。けど、止める気は全くない僕の習慣。



今日も朝日が眩しい。さぁ、『僕の一日』を始めよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ