1 零音愁(れいねしゅう)と七宮幸多(ななみやさちた)
高校一年生になり、零音愁と初めて話をした。
彼女とは小中高とたまに挨拶する程度の形だけ幼馴染のような関係だった。
雨が止み、七宮幸多が差したばっかの折り畳み傘をしまおうとした瞬間、水たまりのせいで彼女は盛大に転んだ。いや驚いたね。
幸多は考えた、紳士に声をかけるべきか否か
実を言うと、彼女はうちの学校ではもう隠れ美人的存在になっていた。休み時間はずっと本を読む姿が美しく、見るだけで毎朝手入れされていると感じる綺麗な茶色の髪、そして可愛さを増す丸いメガネ。
触れてはならぬ、鑑賞するべきと男子たちの間でいつのまにか暗黙のルールができていた。
クラスの奴らが見てるかもしれないし個人的には形だけと言っても幼馴染ということはバレたくない。バレたらナンパ師みたいなめんどくさい奴らが絡んでくるからだ。
(また今度)
そう思い、他人のフリして通り過ぎようとした。
世界が自分中心で回っていると言ってるやつの気持ちがわかるほど一気に転んだ。
そして彼女は自分も転んだばっかなのに立ち上がり、手を差し伸べてきた。本当に心配そうに、
「大丈夫?七宮くん」
雪のような白い手を差し伸べて言った。少し抵抗があったのか、手を軽く添えるだけにして、ほとんど自分の力で立ち上がった。
「大丈夫だよ、零音さんこそ大丈夫?」
軽く笑顔をして返した
「...うん」
やけに愁は幸多の目を見ていた。
「目、綺麗ですね」
幸多は昔から目が水色のビー玉のようで綺麗とよく言われていた。言われ慣れているが美人に言われると照れてしまう。
「見つめられると恥ずい」
「あっ、すみません!で、ではまた明日」
彼女はもう一度転びかけてそそくさと帰って行った。そして明日の学校にはなぜかいつもと違う何かがあるんじゃないかと思った。




