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結末の果て

第一章最終回


「ここは……」


 ヒョウカに胸を貫かれる寸前、ユウトとヒョウカ同様シオンの胸に風穴を開けようとしたウィズは金色のリングに全身を吸い込まれ、一瞬にして病院内から近くの雑居ビル屋上へと転移させられていた。


「ユウ、ト」

「ウィズっ」


 普段では想像もつかない相棒の弱弱しい声にユウトは慌てて相棒の元へと駆け寄った。


 この世で最も信頼する相棒は力を使い果たし、いつもの愛らしい二頭身の姿で屋上の上でゴロンッと横たわっていた。


「無事だったか」


 ユウトの声にウィズは無言で親指を突き立てニッコリといつもの笑顔を見せた。


 その姿にユウトもほっと胸をなでおろし、少しだけ口元を緩めた。


 二人は無事、シオンたちの猛攻を潜り抜け、逃げ(おお)せることに成功した。



★★★



「…………」


 突然、目の前にいた敵ともう一人、その主であるテイマーの姿が消えシオンはしばし呆然とその場に立ち尽くしていた。


「――っ」


 しばらくしてシオンは自身の唇の端を強く噛みちぎった。


 ほっと胸をなでおろした自分がいることに気づき、激しく苛立ったのだ。


 敵の姿が消えてしまった今となってはもう誰もあのまま戦いが続いていた場合に二人がどのような結末を辿っていたのか分らない。ウィズがシオンの息の根を止めるよりも早くヒョウカがユウトを仕留めていたかもしれないし、同時に相打ちになっていたかもしれない……もちろんヒョウカよりも早くウィズがシオンの息の根を止めていた可能性も――


「……」


 シオンは無言で背後を振り返ると、そこにいたよく知る初老の男を激しく睨みつけた。


「何のつもりだ、森谷――」


 ヒョウカの氷の槍でシオンに胸を貫かれた執事の森谷日辻(もりやひつじ)だが、偶然か必然か急所を避け、一命をとりとめていた。


 ユウトとウィズをこの場から消し、逃がしたのはヒツジの使役獣――スピリッツオブゴートの能力だったのだ。


「こんなところでシオン様を失うわけにはいきませんので」


 そのヒツジの言葉がシオンをさらに苛立たせた。


「貴様は、この俺が万が一にもユウトに負けていたかもしれないと言うのか」


「………………………………………………………………」


 ヒツジは目を伏せたまま、何も答えなかった。答えはもう誰にも分らない。ヒツジにも当事者であるシオンにも……


「くそっ」


 珍しくシオンは感情を露にして、近くにあった氷漬けの椅子を蹴り飛ばした。


(絆優人、このケリは必ずつける――)


 シオンはこの時、ユウトを明確な敵として認識した。



★★★



『テイマー同士は争い合う運命(さだめ)にあるんだ。今は大丈夫でもいずれ、必ず、テイマー同士の激しい戦争が起こる。そしてその勝者こそ、この世界の真の王になるのさ。正真正銘、この世界を手にすることが出来るんだよ』


 以前聞いた今は失き友人の言葉をふと思い出し、ユウトは思った。


(きっとまたシオンと真正面から戦う日が来る)


 その時、ユウトとシオンのどちらかがこの世界から――


 そこまで想いを馳せ、ユウトは勢いよく首を横に振り考えるのをやめた。


「とりあえず家に帰るか」

「うんっ」


 そう言って、二人は帰るべき場所――自分たちの家がある方へ向き歩き出した。


 いつか来るかもしれない別れの日。必ず訪れるであろう終わりの日。それらが二人の元へやってくるその時まで二人は二人であり続ける。


ユウトとウィズは互いを活かすために己を使う。共に信頼する相棒のために、相棒のすぐ隣で………………

とりあえずはここで一旦区切りとさせていただきます。

ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます。

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