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サーファーの遺思が導くもの

作者: 真ん中 ふう

祐介は廃墟と化した空き家の中央にたった。目を閉じ何やら呪文のようなものを唱える。すると祐介の目の前の空間が歪み蒼白い靄がかかり、何かの輪郭を生み出した。


「あなたがこの家の所有者、滝沢充さん?」


祐介が靄に話しかけると、靄が少しずつ晴れ、顔色の悪い人物が不機嫌そうな顔で現れた。


「お前は?」


「私は役所の職員です。この家が<空き家プロジェクト>の対象となりました。我々はこの家を託児所にしようと考えております。幸いこの家は、海の目の前で大きなガレージもありますので、子供たちを遊ばせることができます。」


すると滝沢は「ふんっ。」と鼻を鳴らした。気に食わないのかも知れない。しかし滝沢は破顔した。


「いいアイディアだ。海の町に住む子供たちにはぴったりな遊び場だ。でも、条件がある。」


祐介は「きたな。」と内心思った。霊が言い出す条件さえクリアしてしまえば、この家に化けて出ることもなくなる。プロジェクトは進められるのだ。


「俺はな、サーファーを育成するのが夢だったんだ。」


「そういえば滝沢さんはプロのサーファーでしたね。」


しかし滝沢は大会の事故で、夢半ばで死んだのだ。


「ここに通う子供にサーフィンを教えてやって欲しい。ガレージにはまだまだ使えるボードが山程ある。俺がガキの頃から使っていた代物だ。」


滝沢は意気揚々と言うがその考えは現実味がない。たくさんの問題を無視して夢だけで語っている。

しかし滝沢の意見は面白く、世の中を驚かせる種がある。それは、夢追い人独特の世界観であり、思考だと感じた。


「園児には危険なので、小学生高学年から高校生の放課後の教室としてならいけるかもしれません。普段は託児所、放課後はサーフィン教室と言った具合で。しかしお金を取ることは出来ないので、講師を雇う予算が取れるかどうか…」


「なら、俺と同じ様にサーファー育成に力をいれている奴を紹介する。」


もう死んでしまっているのに、どうやって紹介するのかと思ったが、滝沢の話には引き付けられる。祐介は夢を現実に出来るかもしれないワクワク感を感じていた。

こんな気持ちを父親は感じながら生きていたのか。

悔しさと羨ましさが交差する。

祐介は自由人の父親のようになりたくなくて、堅実に生きてきた。だが、中味はやはり父親と同じ要素を持っているのかも知れない。そう思うとなんだか父親に話を聞いてみたくなった。


この件が片付いたら、父親の墓参りにでも行ってみるか。




読んで頂き、ありがとうございました。

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