第11話 工場生活スタート?
「これ毎日やってるんですか?」
「ああ、毎日だ」
三浦は翌日。つまりは三連休のど真ん中の日曜。シャンプー工場で働いていた。
本来だったら冷房のある部屋で受験勉強をしつつその間には休憩として漫画を読んでいたのにも関わらず。何故自分はこの熱気のこもった工場で、おっさん達と共にシャンプーの容器をノズル付き蓋で閉めなければならないのか。それも毎度絶妙な力加減でやらなくてはならない。これが本当に面倒くさい。
「サボるなよ」と隣に並んで同じ作業をしているおじさんが忠告してくる。彼は同室に住む先輩でもある。熟睡していた三浦をそのおじさんは午前7時に叩き起こした。何も分からない三浦を食堂に連れていき朝食を食べさせると、その足で更衣室へ向かった。
作業服と作業靴、そしてマスクを付けさせられ彼はいきなりラインに実戦投入された。
三浦はもう限界に達していた。(こんな事してられっか……)
彼は工場からの脱走を決意する。とはいえタイミングが重要だという事は彼もよく分かっていたのですぐには逃げない。先輩の工場作業員である同室のおじさんは三浦の監視を任されているのか、片時たりとも彼から目を離さない。寝ていた部屋から出て以来ずっとだ。
新入りが逃げるのはよくある事なのだろう。
まだ未熟とはいえ作業は一応できる、そんな新入りを逃したら自分の作業量が増えてしまう。だから逃げるのを警戒する。大方そんな所だろう。
(あの食堂だな……)
彼は朝食の時を思い出す。食堂のトイレは外にあった。食堂から外廊下を挟み、10メートル以上離れた所にあるその場所からなら逃亡できるかもしれない。
しかし気がかりな事があった。
そもそもここは何処なのか、どの道を進めば彼の住んでいた佐竹町に戻れるのか。
大体の場所くらいは聞き出しておきたかった。とはいえ彼を監視しているおじさんに訊いたら怪しまれる。
(まじで時間との戦いだな)
同室のおじさんにトイレに行く許可を取る。そして食堂から外に出て、その道すがらこの工場の場所を聞きだす。それから逃亡。
三浦は高を括っていた。仮に逃げたとしてもそれ程執拗には追ってこないだろうと。働いているのは自分だ、だから選択権も自分にある筈だと。しかしそれは世間知らずにしてアヤメ知らずの高校生が故の勘違いである。




