エピソード39 ともに……
甘飴甘味は独りで
〈絶望の谷〉の奈落の底へと辿り着いた。
【深淵なる漆黒の闇】がどんどん空に向かって
広がっている。
不意に、
【深淵なる漆黒の闇】が甘飴甘味の魔力に反応した。
「うそ⁈
【七色の音色】の効果が切れちゃったの⁈」
甘飴甘味は焦ったが、
すぐに違う【七色の音色】の効果が現れて
今度は甘飴甘味の魔力を増大させた。
「甘飴甘味が大人しくしているはず無い」
っと、
アカベコはあらかじめ予想し、
この【闇】に立ち向かうべく、
甘飴甘味の魔力を増大させる音色を使ったのだ。
「べこ……さんきゅ♪」
別れの際に聴かせた曲に
【七色の音色】の効果をつけていたのだからさすがだ。
甘飴甘味の魔力と
【深淵なる漆黒の闇】がぶつかった。
【七色の音色】によって
魔力が吸い込まれずに済んではいるが、
それも効果が切れてしまえばお終いなのだ……
遠くにいるみんなは
【闇】と『七色に光っている魔力』が
ぶつかり合っているのを見守っていた。
「甘飴甘味ならきっと成し遂げるだろう……」
っと、
誰もが甘飴甘味が世界を救うことを
信じて疑わなかった。
しかし、
少年だけはわずかな不穏な気配を察知していた。
そしてシャウラにまさかの言葉を送ったのだ。
『シャウラさん!!
今すぐ
かんみおねえちゃんの所に行ってあげて!!』
少年はシャウラに必死に訴えかけた。
「行かなきゃ!
シャウラさんが行かなきゃっ!
今すぐにっ!!
他の人じゃダメなんだと思う……
きっとかんみおねえちゃん、
シャウラさんが来てくれるのを待ってる……
絶対に待ってるからっ!!」
甘飴甘味がいる奈落の底に行く
それはつまり
もう二度と
"こちらに戻ってくることはない"と言うこと……
すると、
意外な人物が少年に近付き、
激しい怒りと共に少年の胸ぐらを掴んだのだった。
その意外な人物とは……
アカベコだった。
『お前は何を言ってるのかわかってんのかっ⁈
こいつ(シャウラ)に死んでこいって
そう言ってるのと同じことだぞっ!!
甘味がこいつ(シャウラ)や仲間のことを
生きていてほしいと思ったからこそ
自分が犠牲になることを選んで
独りで向かって行ったんだぞっ!!』
アカベコが初めて少年に怒鳴った。
少年は怯えて怖がっているが、
それでもまだ、
シャウラに訴えかけ続けていた。
「それでも……ッ!それでも行かなきゃ!!
シャウラさんが行かなきゃッッ!!!
……ぼく、気付けなかった
お別れの晩に……
かんみおねえちゃんってば優しいから、、、
きっと言えなかったんだと思う……
ううん……
きっとかんみおねえちゃんのことだから、
言わなかったんだと思う……
『たすけて』
『こわいよ』
『つらいよ』
『みんなとお別れするのヤダよ』
って、、、」
「それはお前の勝手な想像だろっっ!!!」
アカベコが少年にキツく怒鳴り手を振り上げた。
ビクッ!
少年は
アカベコが手を上げようとしてきたことに怯え、
ぎゅうっと目を閉じた。
少年「……?」
少年はアカベコから平手打ちでも来るのかと思っていたのだが、
なにも起きなかったので少年はそっと目を開け
様子を伺った。
するとそこには、
シャウラがアカベコの手首を掴み止めていたのだ。
「少年の言う通りだよ……
オレ……行くよ……」
シャウラは2人に哀しい目を向け優しく微笑んだ。
そして振り返って
他の仲間達にも自身の思いを打ち明けた。
「ほんとに少年の言う通りなんだよなぁ……
オレやみんなもさ?
甘味の本心を知ろうともせずにさ
『甘飴甘味なら出来てしまうんだろうなぁ』
って、
いつも勝手に期待して
いつも勝手に押し付けてしまってさぁ
実際に幾度かそんな場面もあったよなぁ?
まぁ現に甘味のやつは、
今まで遣って退けて来た訳だし……
アカベコの言うこともわかるぜ。
甘味の気持ちは甘味にしかわからないしな」
アカベコはそっと少年の胸ぐらを離し
辛そうな表情をしていた。
「オレが行った所でさ……
なにもできないかも知れないけどさ……
それでも、
それでもオレ……
甘味のとこに行ってくるわっ!
いや、
オレが側にいたいんだよ……
そしてちゃんと連れ戻してくるからさ?
……じゃあな、みんな」
シャウラは哀しみに溢れた目をして
微笑みながら去っていった。
シャウラ自身もまた、
自分が戻って来れないことは理解していた……
それでも、それでも……
甘飴甘味の側にいることを選んだのだ……
アカベコ「バカやろうがっ……!!」(ガンッ)
レート「かんみ……シャウラ……」
りと!「ふたりがいなくなるなんてイヤよ!」
リンク「なんでこんなことに……」
少年「神様……
お願いだからおねえちゃんたちを……
うぅぅぅぅ……」
みんなは悲しみに必死に耐えていた。
世の中には理不尽なことや
許せないことなどいくらでもある。
【紫陽花コンビ】の2人が何をしたと言うのか?
世界の為に
自らの命を犠牲にして救おうとしているのに。
むしろこの2人にこそ、
『神の祝福』と言うものがあるのなら
それを受けるべき人物達ではないのだろうか?
しかし現実には、
神や仏の姿はどこにも見当たらず、、、
存在しているのかどうかすら証明できず、、、
『原因と結果がもたらす真実』しか
現実には訪れてこないのだ。
「はぁ……はぁ……」
シャウラは全力で走った。
相方の甘飴甘味の元へと全力で走った。
(きっと甘味なら、
オレがいなくても この
【深淵なる漆黒の闇】を止めちまうんだろうなぁ。
それでもオレは……
ふっ……。
少年の言う通りだぜ。
オレが行かなきゃな。
最後の最後に
甘味を独りにさせずにすんだよ……
……ありがとな。
思えば不思議な少年だったよなぁ
……あれ?
………………ま、まてよ⁉︎
う、うそだろ⁈⁈
オレ達……
誰1人として、、、
アイツの『名前』を知らねぇぞ⁈
ふっ……。 なるほどな。
アイツはもしかしたら……
ほんと気付くのが遅いよなぁオレ)
シャウラ「ーーッ!」
甘飴甘味の魔力が
【深淵なる漆黒の闇】と衝突していた。
『かんみぃぃぃぃぃぃ!!!』
甘飴甘味「……え⁈」
甘飴甘味「しゃ、シャウぴ⁈
どうして来たの??
なんで来ちゃったの⁈」
甘飴甘味はシャウラが来たことに
戸惑いを隠せないでいた。
『そんなことはいいからっ!!
オレもお前と最後まで一緒にいてやる!!
だから、
だからさ?
そんなやつ さっさとやっつけちまえ!!」
シャウラは甘飴甘味に微笑んだ。
甘飴甘味もシャウラに微笑み返した。
「任せて♪」
今度はお互い何を考えているのか理解していた。
甘飴甘味の迷いは吹っ切れ、
全力の魔力をぶつけた
【深淵なる漆黒の闇】を奈落の底へと
叩きつけたのだった!!
しかし【深淵なる漆黒の闇】は
甘飴甘味の魔力を求めて
何度でも何度でもまたすぐに戻ってくるだろう。
それを防ぐ為に、
甘飴甘味は自らの命を犠牲にするのだ。
シャウラもまた、
二人で奈落の底へと落ちる決断をした。
そしてシャウラは
そっと甘飴甘味の手を握った……
甘飴甘味は安心したのか
シャウラがいてくれて嬉しかったのか
甘飴甘味の瞳からは
大粒の涙が溢れたのだ……
シャウラは黙って
甘飴甘味の側に寄り添い抱きしめた……
ーーふふっ。
いよいよ次がラストエピソードとなります。
甘飴甘味が1人で犠牲になるのかと思われましたが
最後はやはり【紫陽花コンビ】の2人で命をかけるのですね……
この作者さんは鬼畜ですか?
それとも外道なのでしょうか?
人の皮を被った悪魔なのかも知れない。
……はっ!
ご、ゴホンッ。なんでもありません。
悲しい結末かも知れませんが、
『最後の最後まで』お付き合いくださいませ。
それではまたお会いしましょう。




