エピソード38世界崩壊前夜それぞれの決断
重い空気の中、
甘飴甘味は何かを決心し、
みんなにこう告げた。
『みんな安心して♪
甘味があの暗い空を止めてくるから!
だからその前にね、
ちゃんと1人ずつね、
『最後のお別れ』の挨拶がしたいなぁ♪』
甘飴甘味は明日リオンが教えてくれた
〈たったひとつの世界を救う可能性〉を実行するつもりだ。
みんなに向けて無理にでも笑顔を
作って見せている甘飴甘味 。
ーーズキッ
みんなの胸が痛んだ……
甘飴甘味の心の中では
すでに自分が犠牲になることを選んでいるのだ。
そんな彼女の姿を見て、
みんなは悲しみと哀しみの両方のトゲが
胸の奥底に突き刺さった気がした……
彼女の強さを思い知らされたのだ。
英雄達は空気を読み、
この素晴らしい仲間達の為に そぉっと席を外した。
甘飴甘味の希望通り、
ひとりずつ別れの挨拶をすることになった。
1対1で面と向かって話をすることで、
素直になって話し合えることもあるかもしれない。
1番最初に訪れたのは……
「やほ♪『レート』♪
(最初はレートね。
名前の由来がチョコレートの「レート」って
聞いた時は、
ちょっと笑っちゃったんよなぁ)」
甘飴甘味は普段通りに明るく振る舞った。
「レートって
ギルド学園時代からあまり変わってないよねぇ♪」
レート「それを甘味が言うのかい?
……いや、
甘味は変わったよ……強くなった。
そしてさらにぶっ飛んだね!
シャウラ大好き病も深刻になってたね。」
2人は笑い合った。
思えばみんなとはギルド学園時代からの仲間だ。
ギルド学園の時から色々あったけど
みんながいてくれたから楽しく過ごせていた。
レートはいつもみんなから信頼されては頼りにされていたのだ。
レートがいるだけで安心感が全然違ってくるからだ。
『一緒に居て楽しい♪』
甘飴甘味もレートも、
お互いそう思っている。
甘飴甘味は
レートの信念や立ち振る舞いを尊敬していたのだ。
レートに別れを告げ、
そして感謝した。
次にリンクが来てくれた。
リンク「アタイは転校生だったし
りと!しゃんと仲良しだったから、
がっつりとはアンタ
と、そこまで仲が良い訳じゃない……
うぅぅ……自分を犠牲にするなんて、、、
かっこいいよ……アンタ……
ンんぅぅぅ、、ぐすっ、、、ぐすっ
みんなもアンタの明るさや元気な姿に……
マジで勇気や元気を貰ってるから…ぐすっ
たいしたやつだよアンタは……ぐすっ、
アタイも楽しませて貰ってたよ……うぅぅ
おしまいなんて、、消えてしまうなんて、、
うそだよな?……ぐすっ…ぐすっ
なぁ、あんな闇なんかすぐぶっ飛ばしてよ
約、約束してくれよ、、、ぅぅぅ、、、
束ざに、、即座に帰還するって約束を……
だからさぁ、、帰ってくるよなぁ?
よなぁ……」
最後の方は『か細い声』になりながら、
リンクは ぽろぽろと涙を流し甘飴甘味が帰ってくることを望んだ。
いつもぶっきらぼうに振る舞っているリンクだが
本当は1番感情移入がしやすく、乙女で、
心優しい女の子なのだ。
甘飴甘味やみんなは、
そんなリンクのことをギルド学園時代から
もちろん理解していた。
だからこそ一緒にいたのだ
いや、
一緒にいたかったのだ。
「リンク……いつもツッコミありがとうね♡」
甘飴甘味は抱きしめながら
感謝の言葉を送った。
リンク『って、それだけかよッ!!!』
リンクは涙を拭いながらツッコミを入れた。
リンクはそれだけではないことを
甘飴甘味に抱きしめられていてわかっていた。
リンクなりの照れ隠しだったのだ。
もちろん甘飴甘味もそのことはわかっている。
次に来たのはアカベコだった。
アカベコ「なぁ甘味。
覚えてるか?
オレがお前の為に曲を作ってやるって、
約束したこと。」
ギルド学園時代はアカベコの職業は吟遊詩人だった。
その時に甘飴甘味のイメージソングを作る約束をしていたのだ。
しかしアカベコが魔剣に認められ
〈魔法剣士〉となり、
音楽に触れる機会が少なくなった為に
曲はまだ完成されていなかった。
だが、
アカベコ「出来たから聴いてくれ。
この世界で誰も作れない曲だぜ?
なんせ、
【七色の音色】を使った
幻の曲だからな!」
アカベコは甘飴甘味を想い、
綺麗な優しい声で歌った。
世界でたった一つの曲を送ったのだ。
2人に恋愛感情はなく、
友情とは別の『絆』がある。
こればかりは本人達にしかわからない
もしかしたら本人達すらわからないのかもしれない。
甘飴甘味
「やっぱべこの声いいね!好きだわぁ♪」
アカベコ「また聴きたくなったらいつでも言えよ?」
アカベコなりの「帰って来いよ」っとでも
言っているのかもしれない。
甘飴甘味
「べこもまたぶっ飛ばされたくなったら言ってね♪」
アカベコ「勘弁してくれ……」
2人は笑い合った。
甘飴甘味は笑い涙を流していた。
笑いから来る涙なのか……別れの涙なのか……
最後の2人の掛け合いになるだろうと、
胸を苦しくさせながらアカベコも多いに笑った。
次はりと!だった。
さぁ、
どんな面白い発言が飛び出してくるのやら……
しかし、
わたくめの予想はまんまと覆されました。
りと!「かんみ……行かないで!行かないでよっ!」
意外だった。
甘飴甘味も意外そうな顔をしていた
涙を流しながら引き止めているりと!の姿を
目の前にしてびっくりしていた。
りと!は涙を流しながら必死に
甘飴甘味を引き留めようとしている
本当はみんなもそうしたかったはずなのだ。
だが、
しなかった。できなかったのではなく、
しなかったのだ。
それはもちろん
甘飴甘味を困らせたくはなかったからだ。
りと!もそんなことはわかっている!
百も承知だ!!
わかっている……頭ではわかっているのだ、、、
甘飴甘味の顔を見たら、
無理してでも
いつもみたいに笑顔を作っている
この優しいピンクの髪の女の子を見てしまったら、
りと!は引き止めたくなってしまったのだ。
純粋にいなくなってほしくないからだ……
甘飴甘味はりと!が泣き止むまで
優しく抱きしめた。
りと!も泣きながらぎゅうっと抱きしめ返した。
甘飴甘味はりと!に一言謝った。
「ありがとう……ごめんね……」
次はシャウラが来てくれた。
たぶんこの仲間達の中で1番、本当に1番、
甘飴甘味の側に誰よりも長くいて、
誰よりも甘飴甘味のことを理解している人物だ。
甘飴甘味「シャウぴ……」
部屋に入って来ても黙っているシャウラに
甘飴甘味は声をかけた。
だけどシャウラから返事は返ってこなかった。
甘飴甘味「……」
シャウラ「……」
しばらく長い沈黙が続いた。
シャウラは甘飴甘味に言いたいことが
きっといっぱい、いっぱいあるのだろう。
「何を勝手に自分が犠牲になることを選んでるんだ?」
「どうして1人で決めた?」
「オレやみんなのことはどうでもいいってのか?」
「オレは必要ないってか?」
「紫陽花コンビは、、、
このコンビは、、、
2人だからそう呼ぶんだろう?」
「なぁ甘味……オレは……」
シャウラはこれらのことはいっさい口に出さずに
グッと飲み込んだ。
そして代わりに出て来た言葉は、、、
シャウラ「……甘味。『頼んだぞ!』」
(違う!オレはそんなことを言いたいんじゃねぇ……)
甘飴甘味はシャウラが放った言葉に
一瞬おどろき目を見開いたが、
すぐにニコッと微笑んだ
だけどその目は哀しみを帯びていた、、、
いつもの明るさを装っては元気よく二つ返事で返した。
甘飴甘味「……任せて♪」
甘飴甘味もそんなことを言いたい訳じゃなかった。
もっと、もっとこう、違う言葉を、、、
いつも一緒にいたのに……
お互いの行動や考えは
手に取るように感じてわかっていたのに……
理解できていたのに……
っと、
この時の2人はお互いにそう思っていた。
この時だけは、
わたくしの目から見ても、
【紫陽花コンビ】と呼べるほどの
有名な2人組には見えなかった。
最後に訪れたのは『少年』だった。
(最後はこの少年ね。
思えば不思議な子だったなぁ……
きみは色々なことに気付いてたよね?
そう言えば かんみってば、
初めてきみを見たときに
きみの無邪気な笑顔が可愛いすぎて
倒れそうになってたよね?
なんだか懐かしいなぁ。
りと!が気に入るのもすっごくわかる)
甘飴甘味は少年に別れを告げた。
だが、
少年は珍しく駄々をこねて
甘飴甘味を困らせていた。
この少年は本当に甘飴甘味のことが
大好きなのだ。
いや、
甘飴甘味のことだけじゃない、
【紫陽花コンビ】を含め、
『みんな』が大好きなのだ。
そして『みんな』のことが大好きなその気持ちは
甘飴甘味も同じだった。
少年「嫌だっ!!
たとえ世界が救われたって、
かんみおねえちゃんがいなくなるんだったら、
そんな世界になんて……
意味なんかないよっっっ!!!!!」
少年の言葉を聞き、
甘飴甘味はそっと目を閉じて
両手を胸元に乗せては
目の前の少年に優しく語りかけた。
「かんみはね。
自分のことを好きでいてくれるって人が
1人でもいてくれるだけで、
元気が出てとっても嬉しくなるの……」
甘飴甘味の声は
いつもの明るく元気いっぱいな声とは違い、
とてもしおらしい声だった。
甘飴甘味は閉じていた目を静かに開き、
少年のことをじっと見つめながら
自分の決断を少年に打ち明けた。
「それにね。
怖くなんてないよ?
かんみの命と引き換えで、
大好きなシャウぴや、
他のみんなが助かるのなら、
甘飴甘味はぜんっぜんっ!
怖くなんてないっ!!」
真っ直ぐとした瞳で
そうハッキリと宣言した甘飴甘味。
少年は唇を噛みしめ少し俯向きながらも、
世界を救ってしまえばもう会えないであろう
『甘飴甘味の声』を、
『甘飴甘味の優しさ』を、
少年は「決して忘れまい!」っと
黙って覚えるように聞いていた。
甘飴甘味は微笑みながら
いつもの明るい声に戻り少年の頭を優しく撫でた。
「応援してくれている人達の為にも
この世界を終わらせたくないの。
みんなに生きてほしい!
だからね、、、
かんみが命をかけても絶対にこの世界を
救ってみせるからっっ!!」
甘飴甘味の言葉はとても力強く、
そして優しくて揺るがない決意だった。
まだ幼い少年にとっては、
この言葉は納得せざるを得ない言葉だったのだ。
みんなと別れの挨拶を終えた甘飴甘味
独り、たった独り、
【深淵なる漆黒の闇】が広がり続けている
〈絶望の谷〉の奈落の底へと向かったのだった……
ーーふふっ。
甘飴甘味の決断は見事なものですね。
いよいよ物語も終わりが近づいてまいりました……
最後の結末を、
『あなた様』とご一緒に見届けたいと思っております。
ではまたお会いしましょう。




