エピソード32 月夜を駆ける銀狐(ぎんぎつね)
今宵は満月。
月夜を駆ける1人の盗賊の少女が
銀の髪をなびかせては
夜の街の屋根を次から次へと飛び移り、
軽快に走り抜けていた。
少女の見た目は小さく髪は銀色をしていて
右眼には眼帯をしており
その身体は黒いコートに包まれては
夜の闇と同化していた。
この盗賊の少女は満月の夜に限り、
悪い貴族を狙って
アルセーヌルパンや快斗キッドもちょっぴり褒めるほどの
見事な手際でお宝を華麗に盗み出していたのだ。
盗んだお宝は闇市場へと売りに出され、
換金したお金のほとんどは貧しい村へと寄付されていた。
いわゆる〈義賊〉と呼ばれているのだ。
この少女がなかなか捕まらないのは
本気で逃げる際に、
気力を両手両脚に込めて
『狐』のように四足歩行で走り出して
物凄いスピードを出すからなのである。
そんな少女についたあだ名が……
『銀狐』
りゅうちゃ『ルンルンルン♪
さぁ〜って。
今夜のターゲットは……
貧しい村に税金をいっぱいかけた、
悪い貴族にしよぉ〜っと♪
ルンルンルン♪』
銀狐の少女の名前は『りゅうちゃ』。
最初は鼻唄混じりで機嫌よくターゲットの館を目指していた。
……が、
ターゲットの館に近付いた所で
この少女の顔は
みるみる雲行きが怪しくなっていった。
りゅうちゃ『な、なっ、
なんなのあいつらは?』
少女はターゲットの館を警備している紫陽花コンビと
その仲間達を近くの屋根の上で目視しては
とても驚いていた。
りゅうちゃ『まさか私の狙いを読まれたの⁈
い、いや、そんなはずないよね……』
少女はとても焦っていた。
これまでも盗みに入った館には
もちろん警備がいたことはあった。
たが、
今回のターゲットの館の警備は〈異常〉だ。
3日前に下調べをした時には
この館には警備など1人もいなかった。
それが今日に限って
Aランクの冒険者が何人も警備しているのだから……
少女は戸惑い焦っていた。
(このまま実行?
いいえ、
今ならバレずに引き返し逃げることも……)
っと、
どう行動するべきか『迷い』が生じ、
自らの足を止めてしまっていたのだ。
紫陽花コンビや仲間達は
その『時間』を見逃さなかった。
りと!『いたわ!』
リンク『見つけたぜ!』
高台で見張っていたりと!とリンクから
魔道具での連絡を受け、
紫陽花コンビと少年そしてアカベコは
すぐさま銀狐の捕獲に向かったのだった。
りゅうちゃ『……!
気付かれた⁈
他にも見張りがいたの??』
(私としたことがぁぁぁ判断が遅れたぁぁぁ。)
少女はすぐさま両脚に気力を込め、
引き返すことを選択した。
……が、
少女の目の前にいきなり爆炎の魔法が広がり
少女はよろめいたのだ。
りゅうちゃ『ーーあちちっ⁉︎』
魔剣を背負った赤い髪の魔法剣士が
爆炎の炎の柱と共に
少女の目の前に立ち塞がった。
アカベコ「おっと悪いな?
ご自慢の銀色の前髪がちょい燃えたか?」
りゅうちゃ『(あらやだイケメン♡
ってそんなこと言ってる場合かっ!
こ、この人、強いわね……
それに私じゃ魔剣には勝てないわ……
でも1人なら逃げきれる!)』
少女は再び両脚に気力を込め、
すぐさま上へと跳んだ。
軽々と目の前の爆炎を跳び越えて見せたのだ。
りゅうちゃ『(屋根から落ちちゃうけど……
仕方ないわ。
地面の着地と同時に
街を駆け抜けてやるんだから!)』
着地と同時に物凄いスピードを出して走りだす少女。
そしてすぐさま
銀の髪をなびかせては四足歩行で走りだしたのだ。
その姿はまさに『狐』のように見えた。
スタタタタタターー(銀狐の走る音)
スススススススーー(こちらはあの人の走る音)
2人共 物凄いスピードだ!!
りゅうちゃ『えっ、2人共???
ナレーションは
なにを言ってるの?』タタタタ
シャウラ「ふっ……銀狐とは
よく言ったもんだな。」スススス
りゅうちゃ『はぃぃぃぃぃ⁈⁈⁈』タタタタ
なんと!
逃げる少女のすぐ後ろを
物凄いスピードで『蒼い残像』を出しながら
いとも簡単に追いついているシャウラがいたのだった。
少女は走りながらも
声がする方を振り向き確認してみた。
りゅうちゃ『(あらヤダこっちもイケメン♡
って私のバカぁー。
な、何者なの⁈
ダメ、、、
これ以上は気力が続かないわ)』
気力が切れ少女の足が再び止まった。
シャウラ「ん?
追いかけっこはお終いかい?
お嬢さん」
りゅうちゃ『ハァ……ハァ……』
(なんなのさっきのイケメンと言い、
こっちのイケメンと言い、
……両方ともタイプだわ♡
ってまたまた違うってば!
しっかりしろ私!
それにしてもこの人、、、
ぜんぜん息を切らしてないじゃない⁈)
シャウラは律儀にも
少女の気力が回復するのを待ってあげていた。
相手が男なら
シャウラは容赦なく、
鋭いナイフで斬り伏せていただろう。
しばらくすると、
アカベコと甘飴甘味が
そして遅れて少年が
空を飛びながらも追いついてきたのだった。
シャウラ「さぁってどうする?お嬢さん」
甘飴甘味「走り方がほんとに狐みたい〜♪」
少年「ほんと2人共すごいスピードだったよね……
(かんみおねえちゃんの魔法で飛んできてよかったぁ)」
アカベコ「ふわぁ〜。
もうこれ詰みだろ?
眠いからさっさと終わらせようぜ」
さすがの銀狐も
このメンツが相手では逃げられないご様子。
……無理もありませんね。
わたくしならこの状況でしたら
ジャンピング土下座でもして許しを乞いますね。
……おや?あなたがなぜこちらに??
りゅうちゃ『ハァ……ハァ……』
(気力は回復してきたけど
この人達が相手では逃げ切れないわね……
銀狐もここまでのようね……)
少女が諦めかけたその時!
少女の頭の中に直接、声が響いてきたのだ。
???『はぁ……やっと見つけたわ。
ほんとイケメンに気を取られるとか
あんたバカなの?』
りゅうちゃ『え???』
すると突然!!
少女の身体が光り出し転移したのだった。
シャウラ「今のは転移魔法⁈
かんみ!
魔力の痕跡を辿れるか?
(マジかよっ……
オレの索敵範囲の外からだと⁈)」
アカベコ「げっ!
捕り逃したとかウソだろ?
てか他にも仲間がいたのかよ!」
(もしかして徹夜ぁ〜⁈ だりぃー)
甘飴甘味「シャウぴ任せて♪
……捕らえたわ!
あっちの方向よ♪
でもこれって……
転移魔法の魔力の質が違うみたいなの……
この感じ……
ま、まさか⁈
仲間ってみらいさん⁈」
少年「かんみおねえちゃん。
さすがにそれは無いんじゃないかなぁ……」
アカベコ「とりあえず追うぞ!」
(残業とかしたくねぇ〜〜)
紫陽花コンビと仲間達は
あと一歩の所で銀狐を取り逃がしてしまったのだった……
ーーふふっ
まさかあなたがこちらの世界に来ていたなんて
しかも〈名を残している〉とは……
おっと失礼。こちらの話です。
消えた銀狐の行方はいかに⁈
残業が嫌いなアカベコの運命は⁈
銀狐の仲間のことを七星みらいと言い出すボケをかました
甘飴甘味の予想は当たっているのか⁈
続きが気になりますね。わたくしもです。
ではまたお会いしましょう。




