番外編【不思議な館(洋館)からの脱出】中編
少年は寝起きでこの状況がまだハッキリと
わかってはいなかった。
「アカベコさん、コレって……???」
ちゃんとアカベコには見せないようにして
少年は渡された封筒の中身を再度確認した。
カードには先ほどのメッセージと、
〈村人〉のイラストが描かれていた。
「それはポケットにでもしまっておけ。
どうやら俺たちは
"この館に閉じ込められている"みたいだな。
窓も開けられない状態だから
なかなか強力な結界だぞこれ……」
しばらくすると、
廊下に設置してある〈魔道スピーカー〉から
館の主の女の子『みぃと』の声が聞こえてきたのだ。
『みぃはろー♪
みんなもう起きたかなぁ?♪
簡単にキミたちの状況を説明するよ?
キミたちはこの館にね、
閉じ込められてしまったのだぁ♪
脱出するには〈魔獣王討伐ゲーム〉って言う
心理戦のトークゲームをやって貰うよぉ♪
見事に〈魔獣王の役〉の人を見つけて
投票してやっつけたら
このゲームはお終いだよぉ♪
キミたちの勝利ってこと♪
ただし、
〈魔獣王の役〉の人は
僕が作り出した偽物だから気をつけてね?
偽物が勝ってしまったら
キミたちの旅はここでお終いなんだなぁ。
本物の人を返して欲しかったら、
ちゃんとルールに従ってゲームしてね♪
それと人数が少ないから、
村人側は特殊な役職は無しにしてるよー。
キミ達の普段の会話から偽物を見つけてね♪』
そう楽しそうに説明をしている館の主の『みぃと』。
『ちなみにみんなの状況は魔道カメラで
貴族仲間達に配信してお届けしてるからねぇ♪
どちらが勝つか賭けをしてるんだぁ♪
あっ、
これはキミ達に教えなくてもいい情報だったね。
とゆー訳で、
早く昨日の食堂に集合してねー』
放送を聞き終えたみんなが食堂に集まってきた。
リンク 「先に言うけど、
アタイは〈魔獣王の役〉
じゃないからな?」
シャウラ「ふっ……。
開口一番に出てきたセリフがそれか?
如何にもって感じだな。」
2人はすでにゲームを開始しているのか、
ひとりひとりの言動や行動を注意して観察していた。
アカベコ「この館に張り巡らせてある結界は
なかなか強力な結界みたいだぞ?
甘味と俺で破ることは可能っぽいが」
アカベコがチラッと魔道カメラに目を向けた。
魔道カメラで監視されている為か、
アカベコは【七色の音色】のことを
詳しくには話さずに伏せているのだ。
りと! 「すぐにでも実行しましょう!
館を壊してでも脱出するべきだわ。」
甘飴甘味「やんなぁ☆
でも誰かが偽物やねんなぁ……」
レート 「あぁ そうだね。
僕達に偽者が混ざっていて、
本物はどこかに監禁されているのかな?
だから強引に脱出は出来ないね。
その前に確認しておきたいんだけど、
みんなは〈魔獣王討伐ゲーム〉の
ルールはもちろん知ってるんだよね?」
レートの問いに少年は首をフルフルと横に振り
知らないことをアピールした。
他の者たちは黙って頷いたので
ルールは把握している様子だった。
レート「わかった。
じゃあ少年くんに説明するね。
このゲームは心理戦のゲームで、
〈村人陣営〉と〈魔獣王の陣営〉があり
最後まで生き残っていた方の陣営が
勝利となるんだ。
魔獣王は夜になったら
村人側をひとりずつ殺してくるよ。
魔獣王をやっつけるには
みんなの投票で決めた〈怪しい人物〉を、
英雄召喚でやっつける流れなのさ。
〈怪しい人物〉が魔獣王なら
村人側の勝ちだよ。
もちろん魔獣王は村人のフリをしていて、
誰かは本人以外はわからないんだ。
本来なら
いろんな役職があるんだけどね。」
リンク「説明はもういいよ。
さっきのスピーカーで聞いた通り、
〈預言者の役〉は無しなんでしょ?
だいぶ難しいよこれ。
まったく、
誰が進行したらいいのかねぇ……」
りと!「そうよね。
とても難しいわね。
〈聖騎士〉の役職も無いんだったら
確実に村人側が減っていくわね。」
甘飴甘味「まず票が割れるやんなぁ☆」
シャウラ「ふっ……その前にまず、
〈魔獣王の役〉は夜になって
オレ達のことを倒せるのか?
夜でもオレに奇襲をかけるなんて
ほぼ不可能だぜ」
たしかに、、、
このメンツをひとりずつとはいえ、
やっつけるのは不可能に近いはずだ。
そう誰もが思っていた。
まずは最初の投票になった
甘飴甘味が、
「誰にも投票しなかったらどうなるの?」
っと発言した為、
最初の投票は誰にも投票しないことになった。
投票時間が過ぎてしまった
英雄召喚によって出てきたのは、、、
英雄の1人《海賊王バンク》だった。
リンク 「え⁈ オヤジ⁈」
シャウラ「リンク落ち着け。これは幻影だぜ」
バンク『おぃおぃ。お前ら正気か?
誰にも投票してねぇじゃねーか。
まぁいい。
手っ取り早く近くにいるやつにするか。
じゃあな!』
そう言い終わるのと同時に、
英雄の海賊王バンクが攻撃を仕掛けた人物は、
近くにいた『天才錬金術師りと!』だった……
りと!をガシッと掴んでは一緒に消えてしまったのだ。
『え⁈』
全員が一瞬の出来事で唖然としていた。
すかさず またしても放送が聞こえてきたのだった。
みぃと『みぃはろー♪
〈魔獣王の役〉の人じゃなかったみたいだね
残ったみんなは早く部屋に戻ってねぇー
夜になると魔獣王がひとりを選ぶよー
ドキドキだね。』
そして夜になり、
強い人は狙われないだろうと言った全員の予想が
まんまと覆されたのだった。
なぜなら最初の犠牲者が
まさかのアノ人物だったからだ。
朝になり昨日と一緒でみんなは食堂へと集まった。
最初の犠牲者になったのは……
『魔法剣士アカベコ』だった。
少年「朝起きたらアカベコさんがいなかったよ!
夜中に物音もしなかったよ!」
甘飴甘味「アカベコがやられたの⁈ うそやん⁈」
シャウラ「アイツがやられるなんてな……
戦闘能力は関係ないってことか?」
リンク「りと!しゃんも消えたから
もしかしてべこも消されたとか?」
レート「これは思ってた以上に
危険なゲームかもね……」
一同は黙り込んでしまった。
甘飴甘味 「……今日の投票はどうするの?
早く〈魔獣王の役〉の人を
見つけなきゃ☆」
少年「ほんとだね。
(なんかかんみおねえちゃん
いつもと違う感じがするなぁ。
あんな☆使ってたかなぁ??)」
レート「少年くんは
べこと同じ部屋だったんだよね?
もしかしたら僕達は
固定観念に囚われているのかも……
こんな幼い少年には無理だっと。」
レートは少年に睨みをきかせていた。
シャウラ「……」
リンク 「だぁぁぁ!
こんなのわかる訳ないだろっ!!」
レート 「ここはみんな
それぞれ怪しいと思った人物に
投票してみないかな?」
甘飴甘味「え?
ちょっと待ってレート。
ちゃんと見つけよ?
なにそのやり方。レート怪しいわね」
投票時間が迫ってきた為、
レートの提案を受けて
それぞれ怪しいと思っている人物へと投票をした。
一番票が多かったのは……
《魔闘士レート》だった。
レート「僕かぁー」
レートは肩をがっくりと落としたが、
すぐさま気持ちを切り替え身構えてみせた。
どうやら処刑執行してくる英雄に抗うみたいだ。
召喚されて出てきた英雄は……
《双剣の剣士 りゅのくん》だった。
りゅのくん『キミが投票された人?
なにその構え、、、
もしかして幻影の俺と戦うつもり?
無駄だけど、
その姿勢は好きだぜ!』
そう言い終わると同時に
英雄の『りゅのくん』は、
【魔剣アルト】を鞘から抜き能力を発動させて
二本の剣へと変形させた
そして、
りゅのくんは構えているレートを一瞬で切り刻んだ。
斬られたレートは光の散りになって消えていく……
気付けば英雄のりゅのくんの姿も消えていた。
少年「……レートさん。」
残念なことに、
レートは〈魔獣王の役〉ではなかったみたいだ。
このゲームはまだ続く……
残ったみんなは悲しい表情で部屋へと戻って行った。
そして次の犠牲者になったのは……
『海賊王の娘リンク』だった。
これで残りは3人となってしまった……
甘飴甘味「『まさか』よね?」
シャウラ「あぁ……『まさか』だな」
少年「(そ、そんなぁー
2人の内のどちらかが
〈魔獣王の役〉だったの⁈)
少年のカードは〈村人〉だった。
つまり、
紫陽花コンビの内、
どちらかが〈魔獣王の役〉で偽物なのだ。
甘飴甘味「まさか"少年くん"だったなんて……」
シャウラ「まさか、、、な。」
少年「え?
か、かんみおねえちゃん??
しゃ、シャウラさん??
なっ何を言ってるの⁈」
少年はとても焦った。
まさか2人が〈村人〉である自分のことを
疑ってくるなんて、、、
少年は自分が投票されるなんて
これっぽっちも思っていなかったからだ。
少年「ち、違うよ!
ぼくじゃないよっ!!!
あっ、
そ、そだ!!
かっカードっ!!
カードを見せるから!! ね!!」
みぃと『おっと!
カードを見せるのは反則だからね?』
館の主の女の子『みぃと』は、
ちゃんとこちらの動きをチェックしていた。
少年は必死になって2人に訴えかけた。
(あんな仲良しの2人から見たら
僕が怪しまれるのは当然だよね……)
少年は最後には納得してしまったのだ。
少年は絶望に落ちいり床へと泣き崩れた。
少年「ち、違うから、、ぅぅぅ
ぼくじゃないのにぃ、、ぅぅっ」
甘飴甘味「シャウぴ。投票しよ☆」
シャウラ「そうだな……」
少年は怖くなり、
目を閉じてはさらに泣きじゃくった。
少年「うあぁぁぁん!!
負けちゃうよぉー!!
みんなごめんなさい、ごめんなさい、、、
ぅぅぅ、、、」
そして投票されたのはもちろん少年……
と、
"もう1人の人物"が投票されていたのだった!!!
少年「……え」