エピソード26 狙われた踊り子
北の大陸のコンサート会場がある街の路地を
踊り子の格好をした獣人族の若い女の子『Rio』が、
猫耳や尻尾をピョコピョコと動かしながら
必死になって走っていた。
どうやら何者かに追われているようだ。
タタタタタタタッ
タタタタタタタッ
「はぁ……はぁ……」
私は必死に走っているの。
(てかなんで私が狙われてるの⁈
なんでこんなに走らなきゃいけないの⁈)
「はぁ、はぁ、……も、もう大丈夫かな?」
チラッと。
肩で息をしながらも、
私は後ろを振り向き確認したわ。
「ヒッ⁈」
私は心臓が止まるかと思ったの。
全身を黒いコートで身を隠し、
顔には〈黒い仮面〉を付けた怪しい3人の男達が
さっきより距離を詰めて私を追いかけてきていたのだから……
私は涙目になりながらもまた走ったわ。
(私のファン⁈
握手やサインはしてないって言ったから怒ってるの??
だから追ってきてるのね⁈
私が愛くるしくて、
猫耳が似合ってて、
プリティで、ナイスバディで、セクシーで、
あと、あと、可愛いくて、……えーっと、
あと、あと、もっかい可愛いからって……
なんで私が狙われなきゃいけないのよぉ!)
タタタタタタタッ
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
(人気が出てきたから⁈
いやいや、あのね?私だってね?
最初から人気だった訳じゃないんだからねっ!!)
私の名前は『Rio』 職業は踊り子やってまーす♡
気軽にリオちゃんって呼んでね♡
最近まで私は全然有名ではなかったし
私は自分の踊りにまったく自信が持てずにいたの……
どうして踊り子になったのかって??
私が踊り子になった理由はシンプルだょ?
私は魔力が人並みより弱い方の獣人だったからなの。
気力や魔力が弱い人って、
冒険者の職業を選ばずに、
武器商人や道具屋、宿屋や鍛冶屋など、
副職業に就く人が多いのよ。
あっ、宿屋って言っても、
英雄の1人『双剣の剣士りゅのくん』様の
〈英雄の宿屋〉は別よ?
冒険者って実はとっても危険で
命をかけてモンスターや魔獣をやっつけたり、
はたまた困難な迷宮に挑んだり
憧れやロマンはもちろんあるけど、
とても危険な職業なの……
でもね?その分ね?
見返りは大きいらしいよ?
素材やドロップアイテムが手に入るし、
クエスト依頼の達成報酬など貰えるみたいだから。
副職業の方は売れれば儲かるし安全だし、
モンスターや魔獣がこの世界からいなくなれば、
副職業がメインになる時代がくるって
英雄の1人でもある王様がそう言っていたわ。
私はその言葉を信じて
疲れた人を癒す踊り子になることを決めたの。
だけど私はスランプに陥ったのよ……
わざわざ私の為に踊りを観てくれている人達に
勇気や元気を与えているのかどうかすらわからなくなってしまっていたの。
毎日を不安な気持ちで過ごしていたわ……
そんな時にね、
私は気分転換に、
〈東の国の守護神龍さまのお祭り〉を見に行くことにしたの。
正直、今までの東の国の守護神龍さまのお祭りは
順番が来ても力を入れてない感じがして、
ショボいお祭りだったからあまり期待はしていなかったの。
まぁ、食べ物は美味しいから、
お土産には持って帰るつもりだったけどね。
でもね!
今回のお祭りはね!
良い意味で私の期待を裏切ってくれたのよ!!
私はあのライブのことを生涯忘れないと思うわ!
そのライブはね!
異世界から来たアイドルユニット2人組のライブだったのよ♪
踊りをしている私にはすぐにわかったわ。
異世界の2人組は物凄い集中力で歌い、そして踊り、
笑顔を観客に絶え間なく向けていたの。
目が合えばドキッとさせられるほど魅力的だったわ。
そして極めつけはアンコールね。
異世界から来た2人組はアンコールの為に
わざわざ白い衣装へと着替えていたの。
その姿はまるで
東の国の守護神龍さまの白龍がモデルとなっている
ロマンス小説にもなっている
『白い涙の歌姫』を連想させられたわ。
おまけに雪も降ってきたのよ
信じられる?
私の住んでいる北の国とは違い、
東の国ではまず雪は降らないはずなのによ?
(まさか白い涙を演出しているの⁈)
私はそれに気づき、
思わず涙を流していたわ。
隣の人は初めて雪を見た人なのかな?
私と同じで感動して泣いていたの。
なんだろう……
この切ない気持ちは……
そして周りの観客は肩を寄せ合い、
みんなで一緒に波を作っていたわ。
会場は一体感で包み込まれていたの。
(すごいライブを観てしまった……)
私はお土産を買うのも忘れるほど、
〈心ここにあらず。〉と言った感じで、
帰りの船の中でも ふわふわぼーっとしていたわ。
見所のある素敵なライブが
何度も何度も頭の中で再生されては
圧倒されていたの。
周りから見た人は私のことを、
すごくぽけぇーっとしている獣人族の女の子に見えていたかもね。
まぁその通りなんだけどね。
途中から乗ってきた若い青年がいたわ。
なにやら暗い顔をしている青年だったわ。
悩み苦しんでいる感じが伝わってきたの。
近くにいた商人のおじさまがそれに気づき、
親身になって青年の話を聞いてあげていたわ。
そして青年に、
そっと優しく
南の国の王女の話を、
その青年に教えてあげてたの。
ふわふわぽにゃ〜っとしていた私も、
初めて聞くその話に、
このプリティな可愛い猫耳で
聞き耳を立てる感じで興味津々に聞いちゃってたの。
商人のおじさまはその青年に優しく語りかけたわ。
まだ成人もしていない若い王女が、
勇気を出して一歩踏み出し、
失敗しても堂々とダンスを披露したこと。
そしてその日から意識や見方が変わった王女さまは
見返りを求めない優しさで、
国の人や周りの人達に優しく接し
今でも多くの人に勇気を与え続けていること。
そして彼女自身も日々成長しているのだと言うこと。
その話を聞いて
思い詰めていた青年の顔が
次第とやる気に満ちて来ていたのがわかったわ。
もちろん私も勇気が出たわ。
おそらく私と同い年か、
少し下かもしれない王女さまが、
ダメな自分から勇気を出して変わったのよ。
私も悩み苦しんでいる。
同じなんだと思ったらなんだか心が軽くなったの。
この2つの出来事のおかげで
私はすごく調子が良くなったのよ♪
だんだん噂が広まるぐらいに人気も出てきたの♪
しかもだよ?
なんとね!
アノ、
《明日リオンの音楽隊》から
コンサートで歌と踊りを披露して欲しいって言う
オファーが来ちゃったぁー!!
すごくない⁈
『最後のエルフでもあり英雄の1人』の
『明日リオン』様からだよ!?
私の中での四大憧れの四天王。
《紫陽花コンビ 甘飴甘味》
《深淵なる保健室の先生 七星みらい》
《世界一のファッションモデル いちごしろっぷ》
《エルフの英雄 明日リオン》
の1人からオファーがくるなんて!!
私はその話をマネージャーから聞いたときは
子供のように無邪気にはしゃいだわ!
でもね、、、
喜んでいたのも束の間で、、、
コンサートに向かう途中でね、、、
なぜか黒い仮面の男達に追われているのよ……
ほんとなんなのこの人達??
「はぁ……はぁ……」
(道が分かれてる⁈……ど、どっち?
そうだわ。迷ったら左よね?)
ドンッ!! [ ザンネン壁でーす。]
「うそ⁈ 行き止まり⁈」
(……てか、なんかちょっとむかちゅくんだけど)
サササササササッ
すぐそこまで迫ってくる〈黒い仮面〉の男達。
(ほんと怖いっ!こわいから来ないでっ!!)
するとね
幼い子供の声が聞こえてきたの。
『かんみおねえちゃん!シャウラさん!
こっちの道にいたよぉ!』
それと同時にね
ーーバリバリバリバリッ!!!
って音がしたのよ。
雷の魔法が目の前に降り注いでは、
黒い仮面の男達に直撃して男達は倒れちゃったの。
私は一瞬の出来事でびっくりしちゃったわ。
そしてこの後、
幸運なことに、
四天王の1人にお会いできたの♪
あ、私の中で勝手に憧れて
四天王って呼んでるだけだからね?
『大丈夫?
怪我はない?
踊り子のRioちゃんやんなぁ♪
コンサート会場まで
かんみ達がしっかり守るから安心して!♪』
あぁ……可愛い♡
なんて明るくて、
元気で、
可憐で、キュートで、ヤァンな声なの……♡
こんな可愛いらしいお方のことを
『ぶっ飛んでる』とか、
『やべーやつ』なんて、
一体誰が噂しているのかしら⁈ まったく!
きっと頭がモヒカンの飲んだくれね。
フードを被った謎の男「……」
だいたい合ってます。
とゆーかあなた。
さっきからわたくしの代わりに
ナレーションをしておりませんか?
ちょっとわたくしが
北の大陸の錬金術師でもある、
『レイジ (桑田)』の作った世界初の
二足歩行の〈巨大な魔道兵器〉に
目を奪われている隙に、
……まったく。
ゴホン。
ではここからはわたくしめが。
こうして紫陽花コンビと少年は
獣人族の踊り子Rioと合流し、
会場まで護衛する依頼が開始されたのでした。
そして物語は3つのルートに分かれることに……
①エピソード27『踊り子を守りきれ』
(紫陽花コンビvs黒い仮面の集団)
②エピソード27『英雄は元魔法剣士』
(アカベコ、明日リオンvs謎の司祭の2人組)
③エピソード27『巨大な魔道兵器の襲来』
(レート、りと!、リンクvs魔道兵器の軍団)
ーーふふっ。
獣人族の踊り子さんですか。
猫耳がとても可愛らしいお嬢さんですね。
ふむふむ。
どうやら次のエピソードは
①〜③のこの3つの中から、
作者さんの配信で
コメントが1番多かったエピソードを投稿するとか。
いったいどれが選ばれるのやら楽しみですね。
ではまたお会いしましょう。