エピソード23 英雄により生かされた英雄
アカベコとの決闘での手当てを終え
集合場所で仲間と合流した紫陽花コンビ。
「ほら。アカベコさん謝って。」
少年がアカベコの背中を押した。
甘飴甘味もシャウラの背中を前へと押し出した。
「ほら。シャウぴも謝ってね♪」
『わりぃな……』
先に謝ったのはシャウラの方だった。
『俺も悪かった……すまん』
アカベコも謝る。
2人が素直に謝っている姿を見て
甘飴甘味と少年は
互いに目を合わせてはニヤリと微笑んだ。
「はーい♪
これでもうこの話は終わりですぅ♪
またみんなで楽しく行こうね♪」
甘飴甘味の明るく元気な声に
自然とみんなは笑顔になっていた。
レート「ははっ。(高音)
かんみ。キミはいつも元気だね!」
リンク「まったく、
アンタらときたら
血の気が多いったらありゃしねぇ」
(レートさんも元気いっぱいだよ?
元海賊のリンクさんがそれ言う⁈)
少年は心の中でツッコミを入れていた。
りと!「わたしも2人の対決を見てみたかったわ。
ちょっと今ここでもう一度対決してみて。」
物凄い無茶ブリを平気で注文してきたりと!。
少年「こ、この話は終わったんだからっ!
とっ、とりあえず、
みんなでご飯を食べに行くんだよね! ね!」
(はわわわっ
この話題は避けなきゃ!
でも後でりと!さんに
2人の対決をこっそり教えておこう♪)
少年は空気を読むことを覚えてきていた。
少しずつ成長しているのかもしれない。
ざわざわ ガヤガヤ
(やだっ⁈いま歩いて行った人ってまさか!!)
(う、うそだろ?
もう小国との争いを終わらせて帰ってきたってのか?)
(ここからじゃ魔剣が見当たらないわ?
やっぱり小さい魔剣って噂は本当なのかしら?)
なにやら周りの街の人達が騒がしかった。
『お食事だったら僕もご一緒してもいいかな?』
いきなり知らない男性に声をかけられた一同。
振り向き
声の主の姿を確認した。
そこには魔法使いの長い杖を持ち
これぞ魔法使いといった感じのフードが付いたローブを身に纏った
年齢は30〜40の間であろう男性の魔法使いがいたのだった。
リンク以外の全員が
その男性を見て驚いていた。
なぜならすべての大陸で、
この人のことを知らない人はまずいないからだ。
英雄の1人『魔剣持ちの魔法使いジナトス』
そんな【魔獣王】を倒した英雄の1人が
目の前にいるのだ。
(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぼっ、ぼく、、、
英雄と呼ばれている人を
はじめて見たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)
少年は紫陽花コンビと出会えた時のように
とても感動していた。
……ふむふむ。
途中で失礼いたします。
このお方が
かの有名な『英雄』のお1人なのですね。
しかしこの英雄、、、
どことなく誰かさんに似ているような……
リンク「ジナトスさん久しぶり。
アタイらと食事ってどうゆうことだい?」
英雄を目の前にして平然としているリンク。
少年「え?リンクさん知り合いなの⁈」
少年はリンクの人脈の広さにびっくりしていた。
リンク「ん?
ジナトスさんは
海賊王の弟子だったらしいよ?
てか、
アタイとは小さい頃からの顔見知りだし」
少年「えぇぇぇ。
海賊王のお弟子さん⁈
魔法使いの人なのにぃぃ???
少年はいろいろと疑問に思っていたが、
その答えを英雄がすぐに教えてくれた。
ジナトス「そうだよ。
まぁ普通びっくりするよね。
『海賊王のバンク師匠』は、
僕から無理を言って
弟子にして貰ったんだよ。
いまでも師匠のことは
心から尊敬しているよ。
そして僕の命の恩人でもあるんだ……
本当は僕が【魔獣王】との戦いで
命を落とすはずだったんだ……」
立ち話もなんだからっと、
英雄に食事に誘われついて行くことになった。
ついて行った先は
なぜか国王様がいる王宮に連れていかれた
そして国王様や
ギルド長こと学園長のおじいちゃんのモフ郎さんと
一緒になって食事をすることになったのだ。
食事をしながら英雄のジナトスは
昔に仲間達と倒した【魔獣王】のことを詳しく教えてくれた。
「僕の一族の者が、
まぁ正確に言うと、
父さんとその周りの人達が
【魔獣王】を復活させてしまったんだ……
もちろん兄と僕は復活に反対していたよ?
魔獣を人が制御できるはずがない と、
この世界を危険に晒してしまう と、
しかし父さん達は耳を傾けてはくれなかった……」
「そこで僕達は【魔獣王】に立ち向かえる手段の
【魔剣】を探す旅に出たんだ。
初めは兄さんも協力してくれたんだけど、
僕が【魔剣】に認められてから兄さんは嫉妬し
そして旅から離脱してしまったんだよ。
しばらくして僕は
海賊王のバンク師匠と出会い、
バンク師匠の強さや生き方に憧れては
弟子入りしたのさ。」
「そして【魔獣王】との最後の決戦で、
僕と仲間達は【魔獣王】を追い詰めたんだ。
追い詰められた【魔獣王】は、
自ら自爆を企んでいたよ……
自爆して代わりに強大な【闇】を
この世界に出現させようとしていたんだ。
僕が持つ魔剣アーレアなら
あっ、正式名称で言うと、、、
【魔剣アーレアヤクタエスト】の力なら
自分もろとも相手を閉じ込めることが
可能だったんだ。
僕は死を覚悟し
【魔獣王】を閉じ込めようとしたんだ。
だけど結果は
バンク師匠が僕の代わりを……」
ーーー
『魔剣に認められるやつってのはそうはいねぇ。
だからお前が生きろ!
そしてその力を世に役立てろよな!
いいか?
力ってのは奪う為に使うんじゃねー。
さんざん奪ってきた俺が言うのも
おかしいことだが、、、
だからこそわかる。
力ってのは"護る為"に使うべきだってな。
生まれ変わったチーム【ナイトドラゴン】を、
……アイツらを、、、よろしくな。
それからリンクのことも頼む。』
「バンク師匠!!」
ーーー
短い回想シーンだったが皆は黙って聞いていた。
「海賊王の勇姿を、
仲間達の活躍を、
僕は世界中の人に伝えた。
そして僕達は、
【魔獣王】を倒した『七人の英雄』と
そう呼ばれるようになったのさ。」
それを聞きリンクが
ぐすっぐすっと、
涙目になりながらも鼻をすすっていた。
自分の父親の最後は
昔にジナトスから聞かされていた。
しかし何度聞いても悲しいものは悲しいのだ。
(ジナトスさんは海賊王の人に生かされたんだね……
あれ?
ジナトスさんのお兄さんって……ま、まさか……)
「ジナトスさん
もしかしてジナトスさんのお兄さんって
いま指名手配中のザナトスですか??」
少年は恐る恐る聞いてみた。
そして予想通りの答えが返ってきたのだった。
「……そうだよ。
ザナトスは僕の兄で
彼はどうやら【魔獣王】の強さに
魅入られていたみたいだね。
世界を崩壊させることを今のいままで企み
望んでいたんだ。
僕は兄のことで
国王やギルド長こと学園長のモフ郎さんに
お話を伺いにこの国に戻って来たのさ。
そしたら
紫陽花コンビや仲間達の迷宮での噂を
たまたま港町で耳にしてね
こうして会食の席を設けさせてもらった訳なのさ」
英雄のジナトスは
まさかまさかのザナトスと兄弟だったのだ。
……どうりで似てらっしゃると。
(やっぱりお兄さんだったんだぁ。
ギルド長こと学園長のおじいちゃんはモフ郎って
お名前だったんだね!
モフ子さんのおじいちゃんだから
てっきり
モブ爺かと思ってたぁ)
……少年くん。それは別の酔っぱらいの人ですよ?
「甘飴甘味って娘はキミかな?
たしかにピンクの髪が目立ってるね。
噂はいろいろ聞いているよ。
キミがギルド学園時代には魔力適性で
歴代最高得点を叩き出したこともね。
兄がキミと同じ魔力を手に入れたみたいだけど……
よかったら君の魔力を見せてほしいな。
キミは魔力を普段から抑えているんだってね。
僕に構わず全力で魔法を放ってみてくれないか?
安心していいからね。
魔剣の能力があるから
僕の心配はしないでいいよ。」
ジナトスが懐から小太刀のような短い魔剣
【魔剣アーレアヤクタエスト】を取り出しては
テーブルにゴトッっと置いた。
その魔剣には黒い宝石が2つ埋め込まれていた。
「英雄さんよ。
全力って言っても、
かんみの魔力が暴走したらどうするつもりだぁ?」
シャウラが英雄に釘を刺そうとした。
「相方のシャウラさんかな?
言いたいことはもちろんわかってるよ。
暴走する前に終わらせるつもりだし
それに暴走した時は……
そちらの赤い髪の青年にでも止めてもらうさ。」
英雄のジナトスはニコっと微笑み、
アカベコの方に目を向けたのだった。
「!」
アカベコは少し動揺した。
(なぜ知っている?
それともカマを掛けているのか?)
と言った感じで疑心暗鬼になり、
チラッとレートの方に目を向けた。
リンクもそれをジーッと見ては通訳した。
アカベコがレートに
(お前が国王に報告した時にでも話をしたのか?
【七色の音色】は、
俺たちだけの秘密にするつもりだったろ?)
っと目で会話をしているようだった
レートの方も首をフルフルさせては、
(いや、音色のことは誰にも話をしてないよ?)
っと目で返事をしていた
そこへシャウラも入ってきた。
(ふっ……
おそらくだが
【王都暗殺部隊】の連中だな。
さすがに情報を得るのが早い早い。
きっと英雄の1人でもあるアノ婆さんの仕業だぜ)
っとシャウラも目で会話をしていた
リンク「……」
リンク「いや
だからあんたらさぁ?
『口で会話しろやぁぁぁぁぁぁ!!』」
リンクがテーブルでもひっくり返すのかのような勢いでツッコミを入れたのだった。
リンク「アタイの通訳が間違ってたら
どうするつもりだったんだぁ⁈あぁん?
なんならさっきのセリフを変えて
いま読んでくれている『あなた様』に
おもしろおかしく伝えてやろうかぁ? あ?」
〜ピン・ポン・パン・ポーン♪〜
ここからは先ほどの目での会話を
リンクがセリフを変えてお送りいたします。
アカベコ(お前が国王に
今日の晩飯のこと言ったぁ??
やだぁ〜。
ぼっちの国王からご飯の誘いが
きちゃったじゃーん。どんだけ〜。
おまけにハッピーセットのおまけの
おじいちゃんまでついてきちゃたわ♡)
レート(首フルフル体操♪ フルフルフルフル♪
ボクちらな〜いフルフルフルフル♪)
シャウラ(ふぅぅぅヒャッホーイ♪
おそらくだが!だが♪ ヘイッ!
王都ギルドのぼっち阻止団体のぉ♪
連中だな!だな♪ ヨォ!
さすがにウザい♪ウザい♪
きっとかまってちゃんのぉ♪
婆さんの仕業だヨォ♪)
〜ピンポンパンポーン……〜
リンク「とかになってたら
どうするつもりだったんだよぉぉぉ!!」
りと!「リンクしゃんそりな!」
甘飴甘味「面白いからアリやん♪」
少年 「いやアリなの⁈」
アカベコ 『ねーわっ!』
レート 『ナシだね。』
シャウラ 『あってたまるか!』
っと、
3人はさすがに否定した。
国王 『ぼっち……』
モフ郎『わし、、、おまけなの?』
それを間近で聞いていた国王とモフ郎の2人は
(´・ω・`)←こんな顔をしておりました。
そして食事を終えた一同は場所を変え、
王都ギルド騎士団の訓練所にて
甘飴甘味の魔力を見ることになった。
国王とモフ郎は
リンクのセリフがよほどショックだったのか、
英雄のジナトスに
「後は任せた(´・ω・`)」と言い残しては
悲しげな表情をしながら2人して去っていったのだ。
そしてこの後、
英雄のジナトスは
甘飴甘味の膨大な魔力に唖然とすることになる。
そして甘飴甘味の方も、
【魔剣アーレアヤクタエスト】の能力を
その身を持って体感することとなるのだった。
ーーふふっ。
まさか英雄の1人が
悪役のザナトスの弟でしたか。
魔法使いなのに魔剣の所有者とは??
小太刀のような小さな黒い魔剣ですか。
宝石も2つ付いておりましたし
とても気になりますね。
ではまたお会いしましょう。