エピソード22 魔法剣士vs蒼い暗殺者
「!」
ーーカァん!……パシッ
物陰から飛んできた鋭いナイフを、
アカベコは魔剣で弾き
弾いたナイフを手に取りじっくりと見ている。
(まさかこんな街中で奇襲⁈
敵は何人⁈
目的はアカベコさんの【七色の音色】⁈)
少年は慌てて周囲を警戒した。
……が、
少年はふと冷静になり、
少年もアカベコがいま手に持っているナイフをじっくりと見てみた。
そのナイフに見覚えがあることを思い出す。
(この投げナイフ……よく見ているナイフだぁ!)
少年は気付いた。
「…………いきなり何すんだ?」
物陰から飛んできた方を見て言うアカベコ。
アカベコもこのナイフの持ち主が誰なのか、
とっくに気付いている様子だった。
「いやぁ、
魔法剣士様ならこの程度余裕だろ?」
物陰から音もなく現れた『シャウラ』。
(なんだぁアカベコさんを試しただけかぁ〜)
【七色の音色】を狙った奇襲ではないことに
少年はほっと息をし安堵した。
シャウラは腕を組みながらスラっとした感じで立っていて
壁に寄りかかっては
目を閉じ指をトンットンっとリズムよく打っていた。
しかしなぜか少し苛立っているように見えた。
そのままアカベコに質問したシャウラ。
「その腕ならもっと早くに
双子どもを倒せたんじゃなかったかぁ?」
光と闇の双子との激しい戦闘により、
甘飴甘味の魔力が暴走し
甘飴甘味を危険な目に合わせたことに対して
深い後悔をしているシャウラだった。
パーティーの指揮をしていたアカベコに対して
キツく八つ当たりをしているのだ。
「そう言うなよ。
【七色の音色】によって
甘味の魔力の暴走は抑えられたんだし、
結果的によしとしてくれよ。」
アカベコは困った顔をしながらそう返した。
アカベコ「……」
アカベコ「……なぁ?
さっきのナイフに、
『殺気』が混ざってたんだが?」
ーーシュッ。
そう言いながら
アカベコは手に持っていたシャウラの投げナイフを投げ返した。
ーーパシッ。
それを二本の指で軽く受けとったシャウラ。
「面白いこと言うじゃねーか。
『さっきに殺気』かぁ……
ははっ……うまい、うまい。
………ああ。
……その通りだぜ?」
周りに不穏な空気が流れはじめた
「喧嘩でも売っているのか」と言いたそうに
アカベコはキレている。
「もちろん」っとでも言っているようなシャウラ。
アカベコ『あ?』
シャウラ『あ?』
⁈⁈
周りの空気がピリついた⁈⁈
いますぐにでも
お互い斬りかかりそうな雰囲気だった。
(ま、まさかシャウラさん……
かんみおねえちゃんの魔力が暴走したことを
怒ってるの⁈)
二人のただならぬ雰囲気を察し、
焦り出す少年。
(こいつぁぁてぇへんだぁぁぁ!)
少年はパニックになり
急に江戸っ子のようになりながら
急いで甘飴甘味を呼びに走り出したのだった。
……少年くん?
パニックになるのもわかりますが
キャラが崩壊してませんかね?
おっと、続きをどうぞ。
「はぁ、はぁ、
かんみおねえちゃん!
たっ大変だよっ!……はぁ、はぁ。
ふっふたりがっ…… 二人が!!……はぁはぁ」
少年は息を切らしながらも、
慌てて事情を説明し
それを聞いた甘飴甘味は少年と急ぎ二人の元へと駆けつけた。
(はぁはぁ……ま、間に合った??)
少年はヘトヘトになりながらも、
二人の姿を確認した。
……が、
間に合わず、、、
二人は決闘をはじめていたのだった。
アカベコ「はぁぁ⁈
なにが、
『かんみは俺が守るッ!』だぁ??
お前は剣士じゃねぇーだろうがぁっ!!」
ーーブオンッ!!
とてつもない威力のアカベコの魔剣が
シャウラ目掛けて振り降ろされる……
シャウラ「そんなことはお前に言われなくても
わかってるっつぅーの!!!!!」
ーーキィンッ!!
ギリギリのとこで短剣で剣筋を変え、
重い魔剣の威力を受け流したシャウラ。
魔剣の力を解放していないとはいえ
凡人なら【魔剣アブソリュート】によって
真っ二つに斬られていたであろう……
シャウラはかわしたついでに
気力を込めた投げナイフ3本を1度に
アカベコに向け素早く投げつけた。
ーーシュッ!!!
速い!
物陰から飛んできたナイフなんかより鋭く速い!!
アカベコはどう回避しようとしても避けられない
っと判断し、
魔剣を構えては呪文を唱えた
『炎よ、
熱き盾となり壁となれ!
〈ファイヤーウォール〉!!』
炎の柱がアカベコの目の前で燃え上がり
気力が込められた投げナイフを溶かした。
シャウラは最初から投げナイフは当たるとは思ってはおらず、
次の行動の単なる布石でしかなかったのだ。
アカベコ「⁈」
(やっちまった、、、
ファイヤーウォールで目の前の視界が、、、)
アカベコは直感だが、
シャウラならもうすでに自身の背後に周りこんでいるのだろうっと思った。
そして相手の実力や凄さを認めて
すぐさま魔剣を地面にぶっ刺し、
気力と魔力を同時に込めた。
アカベコ「はぁぁぁぁ」
地面から気力と魔力が混ざった炎のトゲが
勢いよくアカベコの周辺にだけ飛び出した。
その炎のトゲは剥き出しになっていた。
シャウラ「ちっ……」
アカベコの直感通り、
すでに背後に周りこんでいたシャウラだった
急に現れた炎のトゲを代わりに斬り刻み、
そしてバックステップでアカベコとの距離を空けた。
アカベコはすぐさま振り向き、
魔剣を下段の構えから離れているシャウラに向け
気力を込めてはそのまま振り上げた。
気力の刃が飛ぶ。
ーーズババババババッ!
気力の刃が地面を削りながら一直線にシャウラに
向かって飛んできていた。
バックステップの直後を狙われたシャウラだったが、
自身も気力を込め、
飛んて来たアカベコの気力の刃を片足で
蹴り上げては上空に流してみせたのだ。
追い討ちをかけるようにアカベコは魔剣をシャウラに向けて
爆炎の魔法を次々に放った!!
シャウラは爆炎の魔法をサッ、サッ、っと華麗にかわしていく。
アカベコは爆炎の魔法と気力の刃の波状攻撃で
シャウラを自身に近づけさせまいとしていた。
接近戦ではスピード負けすると判断したアカベコ。
シャウラに対して
徹底した中距離戦を意識し戦っているようだった。
この戦法は魔法も使える魔法剣士ならではの戦い方だ。
なかなか相手に近寄れないシャウラが痺れを切らした
崩れた体勢をすぐさま整え
「ふぅ〜」っと息を吐いたと思ったら、
そのまま素早く動き出し
そしてその動きと共に
陽炎のように現れだした残像……
そう……『蒼い残像』
「!!!」
(あ、あれは蒼い残像……!!!!!!
しゃ、シャウラさん⁈まさか本気ぃぃぃ⁈)
少年は本気になったシャウラを見てびっくりしていた
シャウラの蒼い残像と同時に、
物凄い勢いでアカベコの方も魔剣を紅く輝き出した
そして赤いオーラを纏い出したのだ。
アカベコもまた、
シャウラの本気に答えるかのように
魔剣の力を解放し応戦する構えのようだ。
「⁈」
(えっ⁈⁈
ちょっ、ちょっとぉぉぉ!!
アカベコさんも魔剣の力を解放してるぅぅぅ⁈⁈⁈)
少年はアカベコも本気になったことに
いつものように目をまん丸としびっくりしていた。
少年は2人の戦いに瞬きができないでいたのだ。
ここが王都の街中であることすら忘れているほど、
2人の戦いに魅入っており、
戦ってもいない少年が
戦場にいるかのような緊張感を体感していたのだ。
両者の一連の動きに圧倒され
少年は目が釘付けになっていたのだ
そこへ!
物凄い魔力の〈光の魔法〉が、
二人の間に落ちてきた。
←「……ッ!」 「……くっ!」→
二人はたまらず後ろへ跳び距離をあけた。
『ふたりともやめてっ!!』
光の魔法を放ったのは甘飴甘味だった。
甘飴甘味は怒っていた。
『べこ!
あなたは
人を傷つけるような人になりたかったの⁈
違うよね⁈』
「おい、それは言うなよ……」
アカベコがバツの悪そうな顔をしていた。
『シャウぴ!
いつものクールなシャウぴらしくない!』
「甘味……それは……」
『言い訳はいい!
ほらっ
怪我してるじゃない、、、
手当てしに行こ?』
シャウラの腕にはかすり傷だが血が流れていた。
甘飴甘味がシャウラの手を取り離れていく……
いつもと立場が逆で珍しい光景だった。
(いつのまに血が……
さっきのアカベコさんの魔剣の一振りなの?
お、恐ろしい威力だぁ……)
2人が離れて行くその後ろ姿を見ながら、
少年は魔剣の威力に心底驚いていた。
「アカベコさん!
なにも魔剣の力を解放しなくても!!」
戸惑い責め立てる少年に
アカベコは真剣な表情で返したのだった。
「冗談だろっ?
相手は【蒼い暗殺者】と呼ばれてるやつだぞ?
あの『蒼い残像』が出たら最後、
魔剣の力を解放してなきゃ俺がやられていた……」
(アカベコさんにそこまで言わせるなんて……
シャウラさんもやっぱりすごいや……)
少年は本当に二人のことを心配していた。
だけどその反面、
心の奥底では
(もっと二人の決闘を見てみたかった)
っと矛盾を心に抱えていたのだ。
幼いがゆえの好奇心と言うものだろうか。
集合時間になり仲間が再び集まってきた。
この場に紫陽花コンビがいないことを少年が説明をした。
一方、
紫陽花コンビはと言うと……
手当てをしてくれている甘飴甘味に
シャウラは申し訳なさそうな表情で横を向き、
甘飴甘味と目を合わせようとはせずにいた。
そしてそのまま謝罪の言葉を口にした。
「かんみ!ごめん!
つい熱くなっちまった……
オレなんかいない方がいいよなっ……
剣士でもねーのにな!ははっ」
シャウラがなにやら歯切れの悪そうに謝罪をしている。
シャウラの謝罪を聞き
甘飴甘味は表情ひとつ変えずにシャウラの手当てを続けていた。
「シャウぴが剣士じゃなくっても
いつも側にいてくれるから、
かんみはほんっとに嬉しいよ?」
いつもの明るい声でシャウラを励ました。
シャウラ「ははっ。そりゃどうも。」
(違う甘味……!
俺もなんだっ……俺も……
俺もお前と一緒にいれることがっ……ッ!)
シャウラの本心など知るよしもない甘飴甘味。
そんな甘飴甘味の目からは
優しさが溢れていたのだった。
(お前はオレが守ってやる!!)
そう強く決意をするシャウラだった。
「ん?なにか言った?」
「ふっ……なんでもねーよ」
「あっ!気になるやん♪」
二人は笑い合いいつもの調子に戻っていった。
『いつまでも紫陽花コンビとして楽しくいこう』
そう思う二人だったが、
この先に待つ二人の運命は、、、
それはそれは、
あまりにも悲しい運命なのであった……
ーーふふっ。
おふたりの対決はすごい気迫でしたね。
わたくしも少年くんと同じ気持ちなのですが
あのままおふたりの対決が続いていたら……
おっと、
少し不謹慎でしたね。
失礼いたしました。
次回は、
【魔獣王】を倒した『英雄達の1人』が
登場するとのことです。
わたくしも英雄の方達は気になっておりました。
ではまたお会いしましょう。