エピソード7天才錬金術師りと!との再会
「相変わらずでっかい工房ね♪」
「ほんとだぁ〜でっかぁぁい♪」
甘飴甘味と少年は、
建物の上にある大きな釜が特徴の
バカデカい工房を見上げては楽しんでいた。
この工房は
この東の国の国王がわざわざ
〈天才錬金術師〉と呼ばれている1人の女の子の為に
作らせたほどの工房でもあり、
大陸1の工房としても有名なのです。
他の大陸から〈天才錬金術師〉宛に
大量の魔道具の作成や開発の依頼が、
連日、山のようにくるのです。
そもそも今ある4つの大陸にいるすべての錬金術師の間で、天才錬金術師の名前を知らない者はいないほど。
「さぁってと、
『りと!』はどこかなぁ??」
そんなバカでかい建物にはまったく興味を示さず、
冷静に探しだしているシャウラ。
なぜ紫陽花コンビと少年が、
『天才錬金術師りと!』のことを探しているのか……
それは……
甘飴甘味が七星みらいを保健室から救出したすぐ後のことだった。
「あいすちゃん、いおりちゃん、
帰れなくなってごめんなさいね……
すぐに保健室を作り出すから何日か待ってて」
七星みらいが異世界から来た2人組の女の子達に謝っていた
最初は帰れなくなり焦っていた2人だったが、
今は特に気にしていない様子だ
「みらいさんが無事でよかったよぉ〜。
心配しないで!
わたし達ならどこでもアイドルできるからね〜
なんてったってみんなのアイドルだからね♪♪」
赤い衣装を着た可愛い感じの『七森あいす』は
アイドルの写真撮影でもしているかのように
元気に明るく手を上げてはポーズをとっていた。
もう1人の青い衣装を着たクールでお姉様のような
顔立ちの
『海原いおり』が助言をした。
「いや、あいす?
お前は前に来た時に"名前を残し"てるんだろ?
なら力を使えるんじゃねーの?
私と違ってあいすはみらいさんと
"同じ"なんだから、
異世界空間を作るのを手伝えよ」
っと、
相方の七森あいすにツッコミを入れたのでした
「……あ、たしかにぃ〜」
「……あら?ほんとね〜」
七森あいすと七星みらいは
二人して忘れていたみたいだった。
……どちらも天然ですね、まったく
近くでそれを聞いていた少年は
(みらいさんと同じってどうゆう意味だろ???
七星みらいさんっと
七森あいすさんって
たしかに名前もどことなく似てるけど……)
っと、不思議に思っていた。
「空間を作るのに必要な材料なんだけどぉ〜
みらいさ〜ん
この世界に〈ねるねるじくね〉を作れる人って
いるのぉ〜??」
間延びした声で質問する七森あいす
なんでも〈ねるねるじくね〉とは、
時空をネジる?ことができる不思議な材料のことです
それを媒体にして
異世界空間を作り出せるのであります。
「1人だけ作れる錬金術師がいるんだけどねー
その子って、
ちょっと変わってる子なのよねー」
七星みらいは手を頬につけては
少し困った表情をしていた。
「いいなぁ〜
こっちの世界ぃ〜
私達の世界では、
もう作れる人っていないんだよねぇー」
七森あいすの顔は羨ましそうにしていた。
今度は七星みらいが思い出したかのように
言葉を発した。
「ふふふっ
そうだわ♪
紫陽花コンビにお願いしてみるわね!
その子とはあの2人は
ギルド学園時代からの知り合いなのよ」
「紫陽花コンビぃぃ???」
海原いおりが質問すると、
七星みらいは紫陽花コンビを呼び出し二人に紹介した。
紫陽花コンビのシャウラの姿を見ては、
海原いおりはなぜか胸を押さえていた
そしてその顔は赤く染まっていた。
海原いおり「シャウラさ……ん……いえ、さま!」
シャウラ「ん?呼んだかい?いおりちゃん」
さっそく仲良くなり、
シャウラは海原いおりのことを"ちゃんづけ"
で呼んでいた。
「はぅ⁈」
名前で呼ばれて顔を真っ赤にする海原いおり。
さっきまでのクールなお姉様の顔は
いったいどこに行ったのやら……
七森あいす「さま⁈
さんじゃなくてさま⁈
いおりちゃんどおしたの〜⁈」
乙女な顔をした相方に、
七森あいすはものすごく心配していた。
そんな海原いおりを見ながら少年は
(シャウラさんにハートを盗まれちゃったんだね、、
ぼくも出会った最初に
お兄さんって言っちゃったからなぁ
いおりさんにシャウラさんは女の人だよ?
って伝えたらびっくりするのかなぁ??
……ううん
いおりさんならきっと最初から気付いていそうだね)
少年は海原いおりの目が
ハートになってしまうのもわかる
っと、
心の中で同意しては
シャウラのイケボとその容姿に納得をしていたのだった。
ーーー
そんなこんなで場面は戻り、
紫陽花コンビと少年は
異世界空間を作り出す為に必要なアイテム
〈ねるねるじくね〉を作ってもらう為に
大陸1の工房までやってきたのだった。
工房を見渡すと、
紫色の髪をしていて目はぱっちりした女の子が、
忙しそうに動いているのを発見した。
そしていつのまにかシャウラがその紫色の髪の女の子の近くまでいたのだった。
……ほんといつのまに
「よぉ『りと!』。久しぶりだな?元気かぁ?」
挨拶するシャウラ
りと!「……」
りと!「わたしりと!
あなたモロロって言うのね!」
モロロとは、
人気アニメのジブールシリーズに出てくるアニメの
キャラクターのことである。
そしてこの紫色の髪をした女の子『りと!』は、
そのアニメに出たきたセリフを真似ているのだ
しかも真顔で。
(普通の挨拶で返ってくると思ったら全然ちがったぁぁぁぁ)
少年は心の中でツッコミを入れていた。
シャウラ「いや、違うぜ?
ってか知ってる仲だろ!」
どうやら紫陽花コンビの2人とは知り合いのようだ。
遅れてきた甘飴甘味と少年にも、
りと!はシャウラと同じような言葉を送った。
りと!「わたしりと!
あなたモロロって言うのね!」
「ごめんりと!
わたしジブールに詳しくないんよなぁ〜」
甘飴甘味のすぐ隣にいる幼い少年を見つけたりと!
りと!「わたしりと!
あなたモロロって言うのね!」
少年「……」
少年「もぉぉろぉぉろぉぉぉぉろろろろろろろろろ」
なんと!
少年は口を大きくあけては、
モロロのモノマネをして見せたのだ!
りと!はとても驚いている
そしてりと!は嬉しそうにして目を閉じながら、
ぎゅぅぅぅっと少年に抱きついたのだった。
どうやらりと!は
この少年のことを気に入ったみたいだ。
シャウラ「で、だなぁーりと!
りと!が作れる
〈ねるねるじくね〉が今、必要なんだが?
作ってくれるか??」
りと!「やだ」
少年を抱きしめたまま即答で拒否するりと!。
少年「……」
少年「今すぐ作ってくれるモロロかぁ?」
りと!「つくるぅぅ!♪」
少年を抱きしめたまま嬉しそうに答えるりと!。
さっきまでのシャウラに対しての対応とは真逆で
一同は笑い出した。
「おぃこら、お前ら。しかも語尾がモロロって」
シャウラも笑いながら返した。
抱きしめられたままの少年は、
りと!の手が少し荒れていることに気付いた。
そして周りの部屋にはメモやら材料やらが散らかっているのを発見した。
「……りと!さんって実は、
すっごい努力家なひとなのぉ?
みんなから天才って呼ばれている人だから、
僕、てっきり真逆の人なのかと思ったぁ」
「!」「!」「⁈」
少年の発言を聞き、
甘飴甘味やシャウラ、
とくに
りと!はとても驚いていた。
紫陽花コンビの2人とは
りと!はギルド学園時代からの付き合いであった為、
りと!が頑張り屋さんで努力を惜しまないことは昔から知っていた。
だからこの少年が一目でりと!のことを見抜いたのだから
驚いたのだ。
りと!の夢や目標は
魔力が弱い人でも快適に過ごせる世の中を作りたいと本気で願っており、
そのことをギルド学園時代に
りと!が甘飴甘味に話をした
すると甘飴甘味は、
シャウラやそれに他の友人達をも巻き込み、
この国の国王様に向かって
『これはりと!にしかできないことなのよ!
そんなこともわからないの⁈
わかったらさっさと協力して♪』
っと、
前代未聞の
お城にまで殴り込みに行ったほどなのである。
このことも甘飴甘味のぶっ飛んだ伝説の1つとして
今でもギルド学園で伝えられているのだった。
……国王に向かってその態度、、、
甘飴甘味はたしかに〈やべーやつ〉ですね。
ギルド学園時代は他の周りが
りと!のことを
「変わっているやつだから近寄るな」っと、
いじわるしていたのだが、
紫陽花コンビや友人達はそんなことなんて気にもせず
卒業した今でもりと!と楽しく接している。
さらにはこの国の国王も見る目があった為、
りと!の錬金術に協力をした。
その結果、
どんどんこの東の国は豊かになっていったのだ。
そしてりと!と国王の間に、
奇妙な信頼関係が生まれたのだった。
そんなりと!と国王の会話を
少しだけ見てみましょう。
ーーーー
「国王様!
こんな訳もわからない言葉を
信じると言うのですか?
いくらこの娘が
〈天才錬金術師〉と呼ばれているからって、
神がどうのこうの言い出すとは……
構わずこのまま作らせましょう!」
大臣が国王に助言をしている。
国王「………」
国王はりと!がさきほど述べた言葉を再び思い出し、信じるべきかどうかを考えていた。
当時のりと!は、
人が快適に過ごせる物は何か?っと、
毎日考えていて
そして健康な身体が1番だと結論が出ていた。
人の身体を癒す薬を!万能薬を!
りと!は毎日、毎日、眠らず本気で考え、
何度も失敗し、
十六夜がいる図書館にも通い、
試行錯誤をしながら一生懸命に薬を作っていたのだ
そんなある日、
りと!はついに死者すらも蘇らせることができる薬、
『生命の秘薬』を作り出したのだ。
薬の出来栄えに満足したりと!は、
何日も寝ていなかった為、
久しぶりにゆっくりと睡眠をとったのだった
イケメンアイドルの抱き枕を抱きしめては、
ぐっすりと眠っている。
すると、、、
な、なんと⁈
『神』
と名乗る人物が
りと!の夢の中に現れたのだ!!!
……ばっ、ばかな⁈
〈わたくし達〉ですらお会いしたことないのに⁈⁈⁈
……し、失礼しました、、、続きをどうぞ。
『神』はりと!に、
その薬を作ることを禁止し警告したのだった。
その言葉をさきほど聞いた国王は、
「わかった……信じよう」っと決断した。
りと!が言っていることを信じ
その薬を預かり大切に保管すると約束したのだ。
りと!の方も、
「わたしももう作らないわ。
他の方法を模索する」
と言い残し、
2人は今後この薬は二度と作らないことを約束したのだった。
この『生命の秘薬』が後に、
【神が禁じた生命の秘薬】として、
先祖代々国王の〈秘密〉として受け継がれることとなるのです。
ーーーー
なぜ3人が驚いているのかわからない少年は、
工房で作られている魔道具を見て続けてこう言った
「それに孤児院でも見たことあるような
扱いやすい魔道具って、
ここで作られてたんだね♪
魔力が弱いぼくのような子供でも、
簡単に使えるものを発明してくれて
りと!さん、ほんとぉにありがとう!!」
少年は自分のことを抱きしめているりと!を見上げながら
心からの感謝を述べた。
その言葉を聞き、
少年を抱きしめたままのりと!の瞳から思わず涙がこぼれていた。
(わたしの信念は間違ってはなかったのね)
涙を拭いながらりと!は感謝の言葉に救われていた。
周りからは
『また変わり者が変なのを作っている……』
っと、
作っている時は馬鹿にされ、、、
『天才だからすごいのが出来て当たり前だ!』
っと、
出来上がれば努力には気付かれず、、、
そして出来上がった物にしか目を向けられず、、、
『そんな物より強力な兵器を作れ!』
っと、
自身の信念とは逆のことを言われたり、、、
そんな心ない言葉をいくつも聞かされてきていた
しかし、
りと!は周りから何か言われようが、
黙って淡々と〈人の為に〉と必死に作り続けていたのだ。
「誰かに褒められたくて作っているのではない!!」
「地位や名誉の為に作っているのではない!!」
『誰かがこの世界を過ごしやすいように』
っと、
自身の信念を貫き通してきたのだ!!
さきほどの少年の、
そんな
〈当たり前の感謝の言葉〉
が、
りと!にとっては心の底から嬉しかったのだ
「……1日、ちょうだい」
そう言い終わると、
さきほどまで少年を抱きしめていた手がスッと
離れ、
真剣な顔付きになり工房へと戻り出したのだ。
〈ねるねるじくね〉を作るのには本来は
3日は掛かるそうなのだが、
それを1日で作ると言うのだから驚きだ。
しかし彼女なら作ってしまうのでしょうね
りと!が誇らしげに楽しく作業をしている。
そんな友人の姿が見れた紫陽花コンビは
嬉しくなり、
りと!の邪魔をしないようにと
そぉっと、
少年と一緒に工房を後にしようとしたのだった
……が、
りと!がツタツタとこちらに走って戻って来た
「少年は置いていきなさい!
完成したら一緒に連れて行くから!」
……少年のことがよほど気に入ったんですね。
紫陽花コンビはりと!が相変わらずなことに笑い
そして工房を後にした。
こうして少年は工房でりと!の作業を手伝いながら、
一緒に一晩を過ごすこととなったのでした。
ーーふふっ。
"わたくし達"がお会いしたことがない『神』と、
まさかお会いになられていたとは……
それにしても、
『天才』ってなんなんでしょうね……
ほぅ、
〈天が与えた才能〉ですか、、、
いい答えですね。
まさしく書いて字のごとくですもんね。
なら彼女も天が与えた才能なのでしょうか?
たしかに彼女は天才です
発想もズバ抜けてます
でも、
それだけでしょうか?
努力する天才だから?
休まず頑張る天才だから?
……それもあるかもしれませんね。
しかし、
1番大切な天才なことって、
本当は誰にでも持っている物ではないでしょうか?
彼女は『その思い』が、
他の誰よりも1番強かっただけのことですよ。
ふふっ。
わかりましたか?
わかったあなた様も『天才』ですよ。
おっと、
なにやら偉そうに説明してしまいましたね
……失礼いたしました。
わたくしも真摯に向き合い、
彼女を見習い
人の為に奏でることにいたしましょう。
おや?
なにやら次のエピソードでは、
ボソっと話す小さな声が……
そう、
次回は〈妖精〉と呼ばれている
小さな女の子の登場です。
ではまたお会いしましょう。