エピソード6燃えさかる保健室
保健室の前まで戻ってきた七星みらいとザナトス先生だったが、
ザナトス先生が"ある質問"をした
その質問とは……
「ああ、
そういえば、
みらい先生に1つ聞きたいことが……
『【七色の音色】は誰に託したのですか?』」
この質問を受け
七星みらいは驚愕していた。
「な、なぜ音色のことを
ザナトス先生が知っているの?」
聞き返した七星みらいは明らかに動揺していた。
そんな七星みらいを見ては、
ザナトスは邪悪な笑みを浮かべながら、
メガネをクイッと二本の指で持ち上げこう言った
「……やはりあなたの補助魔法の正体は、
神秘の音色でもある【七色の音色】でしたか
まぁ、正確には、
【七色の音色】を真似た、
みらい先生の再現魔法と言ったところですね……
再現魔法でさえ扱える者は少ないのに、
ましてや音色を再現できるなんて、
あなたは実に優秀で素晴らしい!
しかし残念ながら、
本来の音色の効果からはほど遠いようですね……」
ザナトスは七星みらいを称賛しながらも、
どこか邪悪な気配を帯びていた。
「本題に戻りましょうか
あなたのおかげで
【七色の音色】が
この世界に存在することはわかりました。
いえ、
元々はあなたが所有していたのでしょう?
そしてその力を誰かに託した……」
七星みらいはザナトスの話が正確なことに
かなり焦っている様子だった
「音色は幼い頃に覚えないと使えない……
だとすると、
紫陽花コンビといつも一緒にいる
あの少年か……
はたまた紫陽花コンビの1人でもある
相方のシャウラにでも幼い頃に覚えさせたのか」
ザナトスを睨みつけている七星みらい。
(やはりこの人は【七色の音色】の
ことを知っている!)
っと、七星みらいは確信したのだった。
「いやなに、
苦労しましたよ?
賞金首の男を使っては
幼い子供を何人も何人も誘拐し、
その子供達に音色が無いかどうか調べたり、、、
まぁ、この話はいいですね(クイッ)
どの道すべての力は、
私が頂くのですからっ!くっくっくっ(クイッ)」
そう邪悪な笑みを浮かべながら
ザナトスは七星みらいを保健室に突き飛ばした
そして自分は保健室には入らずに、
魔法で保健室に火を放ったのだ。
「この炎の魔法は保健室にしか広がらず、
時間も短いですが……
その代わり消せませんよ?(クイッ)
それにこの異世界空間で出来ている保健室は
閉じ込めさせて頂きます」
「ご安心を!
私が作り出した空間では、
中にいる人達が死んだら
その力は私に吸収されますからねぇ。
みなさん喜んで死んでいってください。
くっくっくっ、あっはっはっはっはー!!」
そう高笑いをしながらザナトスは、
〈ねるねるじくね〉と呼ばれる物を取り出し、
異世界空間であるはずの【七星みらいの保健室】を
さらに上書きするかのように、
ザナトスが作りだした異世界空間で
保健室の中にいる人達を閉じ込めたのだった。
保健室に閉じ込められている者たちは当然パニックにっていた
いきなり火が燃え広がっているのだから
???「い、いおりちゃん!
ど、どうしよぉ〜!
みらいさんの保健室が"萌え"てるよぉ〜!
それに私達がいた世界に帰れないみたい!」
赤い色をしたアイドルの衣装を着た女の子が焦っていた
隣にいた青い色をしたアイドルの衣装を着た女の子、
いおりと呼ばれた子が返事をした。
「わかったからあいす!
落ちついて!
それに燃えてるが萌えになってるから!
あと服をそんなに引っ張んな!脱げるだろ!」
どうやらこのアイドルみたいな女の子2人組は、
異世界から遊びに来ては、
【七星みらいの保健室】で休んでいたようだった。
フードを被った謎の男もつぶやいた。
「やれやれ……これは困りましたね。
久しぶりに同志に会いに来てみては、
この状況とは……」
背中に見慣れない楽器を背負った男、
『フードを被った謎の男』も、
燃えさかる保健室に閉じ込められ焦っていたのだ。
……はい
恥ずかしながら、
わたくしめもこの時に、
紫陽花コンビや他の方達と一緒に
ここに閉じ込められておりました。
ピンチでした。
「……心配しないでみんな!!
みらいがなんとかするからね!」
なにかを決心した七星みらい
すぐさま呪文の詠唱を始めたのだった。
その詠唱を聞きフードを被った謎の男は気がついた。
「これは転移魔法⁈
異世界空間こど転移するおつもりですか?
そんな無茶な……
いえ、
違いますね。
これはわたくし達を……
なるほど、、、そうゆうことですか……」
わたくしめはみらいさんが何をしようとしているのか
察してしまいました。
しかしそれでは彼女はすべての魔力を使い切ってしまうのです。
フードを被った謎の男は、
"この世界に名前を残す"かどうか迷っていた。
「ほんと……
いつぞやの同士達のみなさんで議論したことが
懐かしいですね、、、
『神と言う存在はいるのだろうか』っと」
フードを被った謎の男は哀しい目をしていた
「いらっしゃるのでしたら、
わたくし達に起こる悲劇を
救ってはくださらないのか?
いや、
この悲劇すらも、
七星みらいの〈役目〉
だとおっしゃるのでしょうか?」
そんなことをフードを被った謎の男は嘆いていた。
……わたくしはこの時ほど、
神の存在を疑ったことはありませんね。
七星みらいの呪文の詠唱が終わった
と、同時に、
保健室に閉じ込められている人達の全員の身体が、
光に包まれ、
ギルド学園のすぐ外に転移しようとしていた。
そんなみんなの姿を確認した七星みらい
みんなに別れの挨拶を切り出したのだ。
「心配しないで
みんなだけでも無事に転移させるからね?
いつも保健室に遊びに来てくれるみらいじんの
みんな……ありがとう♡
『やっぱり、神様なんていなかったね』」
彼女が言うみらいじんとは、
七星みらいの所に遊びに来てくれる人達のことを称して言うのだ
彼女は涙を流しながら微笑み、
燃えさかる炎の中で自分の最後を覚悟した。
みんなを見送る七星みらい
それを見たみんなは悲しみの表情を浮かべていた。
「ちっ、みらい先生め、、、余計なことを」
ザナトスは自分の計画を狂わされ、
さらには保健室にいた人達の力、
とくに甘飴甘味の膨大な魔力と、
あの中の誰かが所有しているであろう
【七色の音色】
が、手に入らなかったことに悔しがり苛立っていた。
「まぁいいでしょう……
すべての魔力を使い切ったみらい先生は
もう助からないことでしょうね(クイッ)
みらい先生が死んで〈神の使者の力〉だけでも、
吸収するとしますか……」
「ギルド長の賢者モフ郎や、
あの子達と戦うのは今は分が悪いですね……
ここにいては危険か……
わたしは去るとしますか……(クイッ)」
メガネをクイッと二本の指で上げ、
ザナトスはその場から姿を消したのだった。
パチッ
ゴォォォォ
パリパリ ゴォォォォ
パチッ ゴォォォォ
保健室が激しく燃えている……
「おねえちゃんたちどうしよ⁈
このままじゃ……みらいさんがぁ
みらいさんがぁ!……ぅぅぅ」
少年は地面に顔をうずめ、泣きじゃくっている。
魔法剣士のアカベコも、
その顔には涙を流していた。
「俺はまだあの人に……うぅ
立派な姿を見せてねーよ……うぅぅ
た、頼む……誰かっ!誰でもいい!
誰かあの人を助けてくれよっ!!……たのむ!」
涙を流しながら悲願するアカベコ
七星みらいのおかげで保健室から転移できた人達もまた、
七星みらいの最後の状況に
悲しみの表情を浮かべていた。
そう……
たった2人を除いては……
『かんみ!いけるか⁈
オレのナイフに魔力を込めろっ!
そして後は任せたぞ!!』
シャウラが甘飴甘味に呼びかけた
『うん!シャウぴ!任せて♪』
瞬時にシャウラの考えを読み取る甘飴甘味
シャウラの指示を「待ってました♪」と、
言わんばかりに、
シャウラのナイフに魔力を込めはじめた。
シャウラは少年が感じた違和感の正体に
つい先ほど気付いたのだ。
「甘飴甘味の膨大な魔力は、
もしかしたら異世界空間に干渉できるのでは?」
っと。
それを証明するかのように、
甘飴甘味から魔力が篭ったナイフを
保健室にめがけて思いっっきり投げつけたのだった。
シャウラの考えが正しいのならば
この甘飴甘味の魔力が篭ったナイフは、
きっと異世界空間の保健室に干渉できるはず……
ーーピキッ
ほんのわずかだが、
保健室にヒビが入った
(ふっ……気付いたのいまさっきだぜ?
偶然かこれ?)
シャウラが不適な笑みを浮かべながら、
あとは「甘味を信じるだけ」っと、
1人余裕の表情で待っていた。
甘飴甘味は膨大な濃さの魔力の渦を自身に纏い、
シャウラが作ってくれたヒビに向かって
突っ込んで行った。
ーーパリーーーンっ!
な、なんと!!
甘飴甘味は
遮断された異世界空間に穴を開け、
そのまま入って行ったのだ。
『みらいさぁぁぁぁぁぁーーーん!!!』
突然
空いた穴から甘飴甘味が燃えさかる保健室に現れた。
そんな甘飴甘味の姿を見ては、
びっくりしている七星みらい。
「ばかね……助けにくるなんて……」
涙を流しながらも、
甘飴甘味に微笑んでいた。
自身はもう、
助からないと覚悟していたのに……
「大丈夫♪
みらいさんはわたしが助けるから♪」
そう自信満々に言い放ち、
燃えさかる保健室の中を勇敢に進み、
自身の魔力で〈消えない炎〉を蹴散らし、
道を作りながらも、
甘飴甘味は七星みらいを連れ出し
見事に〈燃えさかる保健室〉から脱出して見せたのだった!
ワァーー
パチパチパチパチパチ
ワァーー ワァーー
すごいぞー ワァー ワァー
パチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチ
ワァーー みらいせんせーい
パチパチパチパチパチ
かんみせんぱーい
ワァーー ワァーー
周囲からは喝采や称賛の声があがっている。
ギルド学園にいた先生や生徒みんなが、
その現場を目撃し
そして見守っていたのだ。
「ははっ……すげぇな甘味」
泣きながらも安堵の表情を浮かべているアカベコ
七星みらいが救出され、
1番喜んだのはきっと
この赤い髪の青年ではなかろうか……
そんなアカベコを見た少年は、
(もしかしてアカベコさんって、
みらいさんのことを……)
そんなことを推測していた少年だった。
七星みらいと甘飴甘味が無事に脱出できたことを、
シャウラや少年そしてアカベコは、
みんなと一緒に喜んだのだった。
騒ぎを聞きつけ、
学園長ことギルド長のおじいちゃんが現れた。
みなを心配している。
そしてこの世界に取り残された、
〈異世界の人達〉に、
まずはこの国の王と謁見することを説明した。
なぜならこの国の国王が、
異世界の人達の持つ力が、
この世界に対して脅威になるかどうかを
判断しなくてはならないからだ。
フードを被った謎の男はそのことを聞き、
そおっと姿を消したのだった。
(わたくしめの正体を、
ましてや『名前』を、
この世界で明かす訳にはいきませんからね……
申し訳ございませんが、
ここは隠れさせてもらいます……)
「おい! お前ら!いまのうちにずらかるぞ!」
「「「「へい!おかしら」」」」
保健室で治療を受けていた他の異世界から来た同じ顔の怪しい謎の集団も、
この騒ぎに常時、
その場から姿を消したのだった。
ーーふふっ。
一時はどうなることかと思われましたね。
周りが絶望し、
悲しむ中、
紫陽花コンビの2人だけは
決して諦めていませんでしたね。
しかしこの時のわたくしは
【七星みらいの保健室】を燃やされ、
元の世界に帰れず、
こちらの世界に取り残されてしまいました……
それはさておき、
目的を果たせなかったザナトスは、
次なる手段を用いて、
力を手に入れようとするのであります。
おっと、
その前に予告を……
次回は"アノ"
天才錬金術師の登場です。
ではまたお会いしましょう。