エピソード3 先生は異世界人???
保健室は外見では想像がつかないほど広く、
この世界の物とは思えない見たことがない物が置いてあった。
さらに保健室の中で休んでいる人達は、
それぞれ異様な格好をしていた。
アイドルみたいな衣装を着た2人組の女の子。
背中に見知らぬ楽器を背負ったフードを被った男。
みんな同じ顔をしている奇妙な怪しい集団。
などなど、
いろんな人が保健室に訪れていたのだ。
ここだけ別の空間と思わせるような、
"異質な存在感"が、この保健室にはあったのだ。
少年は保健室に入って気がついた。
さっきまで歩き疲れていた身体が、
自然と回復していくような……
そんな不思議な感覚を身体全体で感じていた。
「お、少年!気がついたか?
身体が自然に回復してくるだろ?
ここは、
【七星みらいの保健室】って言って、
"異世界空間" で出来てるんだぜ?
しっしっし、びっくりだろ?」
それを聞いた少年は目をまん丸として驚いていた。
シャウラはびっくりしている少年を見ては、
予想通りの反応だったので楽しそうに笑っていた。
甘飴甘味がひょっこり顔を出し
シャウラの説明に付け加えた
「それにこの保健室って、
異世界からわざわざ治療しに来る人が
たくさんいるんだよぉ♪
みんなみらいさんに会いたいんだね♪」
甘飴甘味も楽しそうに話す。
すると、
こちらに気づき、
若々しく感じるお姉さんが向こうからもの凄い勢いでこちらに向かって来たのだ。
七星みらい「かんみちゃーん♪」
甘飴甘味「みらいさーん♪」
二人はお互い両手を合わせ、
ぴょんぴょんと、とび跳ねている。
まるで仲のよい姉妹のようだ。
「久しぶりねー♪
聞いたよ?ギルド長からの依頼。
ギルド長から"許可"が出たから、
大好きなかんみちゃんに、
いっぱい、いっーーぱい。
補助魔法をかけてあげるからね♪」
七星みらいの補助魔法とは、
誰もが羨むほど強力な効果を秘めているとか……
それを甘飴甘味にかけるってんだから……
あなたはこの世界に、
"魔王"でも作り出すおつもりですか?
「みらいさんありがとう♪」
「いいのいいの♪
推しは推せる時に推せってね♪」
「推しぃぃ???」
たびたび七星みらいから
この世界では聞かないような言葉が繰り出されている
ギルド学園時代から紫陽花コンビや周りの方達を困惑させていたのだ。
ちなみにこの世界には、
推し
と言う言葉の意味は使われていない。
「こっちの話だから気にしないで♪」
ふふふっ。と笑う七星みらい。
「シャウくんも相変わらずの男前ね♪」
「くんはやめてください。それにオレは女です」
シャウラは少し照れながら言った。
「こっちの少年は……もしかして2人の子供かしら?」
笑いを取るためボケているのか、
はたまた天然なのか、
この人の場合……恐らく後者でしょうね。
「せやで♪」「違います!」
甘飴甘味は肯定し、シャウラは否定した。
「ふふふっ。2人は相変わらずなのね」
七星みらいは優しく微笑んでいる。
そして少年に自己紹介をはじめたのだ。
「異世界から来た七星みらいです!
"ななほしみらい"って読むの。
ここで保健室の先生をしてるのよぉ
まぁベッドの1つは、
私が使ってるんだけどね!ドヤッ」
保健室での治癒力は、
七星みらい本人には効かないとのこと。
「綺麗なお姉さんも
かんみおねえちゃん達と同い年なんですか?」
物腰はとても落ち着いており、
その割にはずいぶんと若々しく見えるその容姿……
少年は不思議に思い、
それを確かめてみたくて
女の人に年齢を聞いてしまっているのだ。
……女性に歳を聞くなんて、
少年くん、
きみはまだまだ若いですね。
「あら!綺麗なお姉さんだなんて、、、正直ね!
嬉しいわ♪
後で面白い物いろいろ見せてあげるわね♪
ふふふっ。
ちなみに歳は777歳なのよ♪」
ある誕生日の日から、
これ以上は歳をとらなくなったとのこと
しかし身体は病弱なんだとか……
「かんみ達はこれから、
ギルド長のとこに行ってくるね。
みらいさん、その間この子をお願いね♪」
甘飴甘味は七星みらいに少年を預けては、
シャウラと共にギルド長がいる校長室へと向かった。
保健室に残った少年に、七星みらいが声をかけた。
「ふふふっ。
待っている間は暇でしょ?
では少年!
ここいらでデュエルでもしましょうか!」
「デュエルぅぅ???」
少年は知らない単語が出てきて訳もわからずにいた。
七星みらいはそんな少年のことなどお構いなしに、
なにやら見たこともないカードを取り出しては、
嬉しそうに少年にカードゲームのルールを説明していた。
一緒に遊ぼうとしているのだ。
……少年くんの将来は、
立派なデュエリストでしょうか?
その頃、紫陽花コンビは校長室の前まで来ていた
ーーコンコンッ
シャウラが大層でかいドアをノックした。
「……どうぞ」
中からおじいちゃんのような声が返ってきた。
ーードンっ!
甘飴甘味が勢いよくドアを開ける
いえ、
"ブチ開ける"の方が正しかったですね。
「……はぁ、もっと静かに開けれんのかいな」
勢いよく校長室へと入って来た紫陽花コンビ
そんな2人を見ては、
呆れた顔をしているおじいちゃんことギルド長
「ちすちす♪
学園長の『モフ郎』さん
お久しぶりでございますです♪」
甘飴甘味なりの丁寧な言葉使いなつもりなのであろう。
しかし、
丁寧なつもりの振る舞いでも、
先ほどの勢いで台無しなだけ残念だ……
「久しぶりだなじいさん!
俺たちに依頼があるんだって?」
シャウラが単刀直入に聞いた。
「……はぁ、 わしもこやつらに頼むとか、
どうかしたかのぉ」
学園長でありギルド長のモフ郎は嘆きながらも、
内心では紫陽花コンビの実力は認めているのだ。
そして依頼の説明をはじめた
「ふーん
ようは魔獣を倒せばいいってことなのね!」
甘飴甘味はざっくりとした解答をした
「かんみ。
聞くところこいつは
普通の魔獣じゃなさそうだぜ?」
シャウラが慎重に話を聞いていた。
「そうじゃ
普通の魔獣とは違い、
こやつはAランクのモンスターに分類されておる。
今でこそ魔獣は
【魔獣王】 が英雄達により倒され
全体的に弱くはなっとるのじゃが
それでも気を抜くんでないぞ?」
モンスターには強さによってランク付けされており、
その中で魔獣はいろいろな種類がいるのだが、
世界を2度目の危機に追いやった【魔獣王】がいない
今の世界の魔獣たちは、
強くてもBランクまでなのだ。
それなのに異例のAランクが付いている魔獣となると、
いかに危険か……
「今回は特別に、
みらい先生の補助魔法の許可も出しておる。
それと、
おぬしらもよく知る
"魔法剣士"にも同じ依頼を出しておるからのぉ
安心せい。
本来ならあやつが1番、
魔獣討伐には向いておるからのぉ」
「へっ!
"アイツ"より先に
俺たちで魔獣を討伐してやるぜ」
シャウラはなぜか、やる気が出たみたいだ
「楽しみね♪」
甘飴甘味もなぜかわくわくしている
「では頼んだぞ」
ギルド長が紫陽花コンビに魔獣討伐を依頼した。
紫陽花コンビの2人が保健室に戻ってきた。
「おねえちゃんたちおかえりなさい♪」
少年は七星みらいがオススメした魔道テレビと呼ばれるものを2人で見ていた。
……おや?デュエリストへの道は諦めたのかい?
「かんみちゃん、シャウくん、
今回はわたしも2人について行くわね」
七星みらいの補助魔法を使うことを
ギルド長が許可している為、
紫陽花コンビに同行することを決めた七星みらい
「みらいさんってすっっごぉぉいんだよ?
いろんなこと知ってるし、
なにか不思議な物を いっぱい、いーっぱい、
見せてもらったぁ♪」
少年はおもちゃを与えられた子供みたいにはしゃいでいた。
そんな少年も、
ギルド長の依頼の内容を聞き、
だんだんと顔が青ざめていったのだった。
「え、Aランクの魔獣なんて……
き、聞いたことないやっ……
(今回ばかりは
かんみおねえちゃんたちも危ないんじゃぁ……)」
少年はAランクの魔獣と聞かされ不安になっていた。
しかし、
七星みらいの補助魔法と、
憧れの"魔法剣士"の話が出た途端、
少年の顔は期待でいっぱいになっていたのだ。
4人は魔獣討伐に向け、王都を出発したのだった。
ーーふふっ。
"やべーやつ"の1人、
七星みらいが登場しましたか……
この先から どんどん"やべーやつ"が出てくるので
お楽しみくださいませ♪
ではまたお会いしましょう。