表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

ブランチ1 乗話

 窓からの木漏れ日がだんだんと強くなってきた。鳥も元気にさえずっている。

 ---朝だ。時計の針は午前七時に十分のあたりを指している。

 実は、二時間ほど前から目は覚めていたのだが、何となく布団の中にとどまっていたい気分だった。

 俺はおもむろに布団を押し上げ立ち上がる。体が重い...というのも、昨日はかれこれ寝るのが十二時を回った。

 そのうえ、自分の部屋が荷物の段ボールでいっぱいだったため、希子姉の部屋でなることになりさすがに意識してよく眠れなかったわけである。

 思春期男子の気も知らないで、「だったら私の部屋に泊めてあげるよ!」なんて、平然と言ってくれやがった。

 眠気を覚ますため、顔を洗った後、リビングに行き朝食を用意していた叔母とあいさつを交わす。

 すると、傍らで新聞を読んでいた叔父も気づいたらしく、

 「おはヨーグルト!!!」と得意気にいい放つ。

 ……希子姉曰く「このおやじギャグうざ絡みが心底うざすぎてやばい。」らしいが、自分の父親と違ったタイプで俺は気に入っている。

 朝食をとった後は、部屋のかたずけをしたが、必要最低限のものしか持ってきていなかったことと、希子姉が手伝ってくれたということもあり、作業は一時間とかからなかった。


 「さて、面倒くさい片付けも終わったことだし、外を案内するよ。」

 作業を終え、一息ついたところで彼女が言う。

 正直、結構疲れてはいたが、好意は無駄にしたくなかったので有難く付いていくことにした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 昨日、八万台から村を眺めて分かったことだが、この集落は周りを森林や山に囲まれっており広さ自体はたいして大きくない。

 その山だが、おばさんの話によれば、この辺の山の一部はどうやら小規模な活火山らしく、周期的に全く問題はないが、ところどころに立ち入り禁止区域も設定されているようだ。

 「----それでー、ここが唐敷神社ね!ここでは唐敷の大御神と呼ばれる神様を千年以上前から祭っていると伝えられていて、最上の姓を持つものが代々、神の教えを伝える伝者として神聖な存在とされているの。」

 「で、今はちょうど一族で神様のお伝えを聞く儀式をしてるからあんまり騒いじゃダメよ。今日で13日目、長いときは一か月以上本殿のほうにこもられたと聞いているけど…。まあ、遅くても17日のお祭りの日にはお姿を見られるから、慎太郎君にまさちゃんを紹介するのもその時になっちゃうかな...。」


 17日、後十日か...。


 「慎太郎君ていうのはもしかして学校の?」


 「そう!、内気だから最初は打ち解けるのに苦労するかもしれないけど、お祭りの日なんか、大活躍で---」


 「おや、お祭りの話かい?」ここで突然老婆が話を遮る。

 「あ、一禅のおばあちゃん!紹介します、この子は、東京から来たいとこの五十嵐政人君です。こちら、ここからもう少し北に行ったところで銭湯を経営している、一禅ふみ代さんだよ。」

 そう希子姉が言うと我先にと言わんばかりにふみ代さんは口を開く。


 「そうか、君が、希子ちゃんのお母さんから話は聞いているよ。ここではみんなが家族みたいなもんだ。何か困ったことがあったら相談しにおいで。」

 「いやな事件もあったしねぇ。お祭りもあるし、早く唐敷様が解決してくれるといいねぇ。」


 ---いやな事件?なんだろうか。ここに来る前にネットとかでも調べたが、特にそのようなものはなかったような...。

 そう疑問に思いながらも「ありがとうございます。」と感謝の気持ちを伝える。

 「いやな事件って?」どうしても気になったので神社から出たときに、希子姉に聞いてみた。

 「ああ、やっぱり気になっちゃうよね、お母さんたちとも話して余計な心配かけないようにってなったんだけど、、、」


 彼女は一呼吸おいて話し出す。


 「実はね、五日前と二日前にこの村で不審死が発生してるの。この村は比較的大きな町に隣接してて、村の西のはずれから十五分くらいで行き来できて、だから大きな買い物とかにも困ってないんだけどね、、、」


 彼女の話だと、隣町から深夜に酔っぱらって帰ってきた男が二日、役場の職員が五日の同じく深夜に亡くなっているのだという。


 「確かに、立て続けにとなると、、、」

 俺がそういうと、彼女はそのこわばらせた表情をこちらに向ける。


 「それだけじゃないの!!!」

 「それだけじゃ...ないのよ、、二人の死には、共通点があって..」


 「共通点?」


 「そう、二人とも状況からみて、警察は自殺だっていう見解なんだけど、、その亡くなり方が…ね…?」


 「会社員の方はこの村の人じゃなくて、酔っぱらって迷い込んじゃったみたいなんだけど、念炉護村に入ってすぐ、持っていたお酒の一升瓶を割って、破片で腹部を切り裂いて、、、中の臓器を引っ張り抱いた形跡があったの。」


 「---そしてね、役場の方は、体のいたるところが欠損していて、、最初はクマか何かにやられたんだろうってなったんだけど、死体が家の中にあって、さすがにおかしいってなって調べたらさあ...。」


 「胃の中から出てきたんだってさ、自分の体片---。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ