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少年と水たまり

作者: 田嶋 圭司

運命とは、なんと残酷なものだろう。それは時に人を翻弄し、まるで楽しんでいるかのように揺り動かす。人間の抱えるジレンマ。どうすることもできない運命と言う名の荒波がそこにはある。

 明智大介君は、幼稚園に通う4歳児の男の子だった。家の近所の幼稚園があるので、よく敷地内で一人、あるいは友達と遊んでいる。これが一番の楽しみであり、二番目は母親の作った漬け物を食べることだった。ある日、雨が止んで、水たまりができていた。空は晴れていたが、雲が重々しく漂っていた。今日大介は一人で遊んでいる。ミニカーをポケットに詰め込んで、どこで走らせようかと思っていた。大介はおしっこがしたくなった。水たまりに長靴で入り、そこでおしっこをしたのだった。ジョボジョボジョボ。それは心地よかった。家に帰ろうと思ったけれど、まだトイレよりこうして水たまりにする方がよかった。あらま!という声がどこからか聞こえたが、放尿感を楽しんでいた。

 近所のおばさん二人がそれを見ていた。水たまりは自動車の通り道にあって、駐車場には何台もの駐車がされている。二人は遠くから見やっていたから、大介は見られていることに気づかなかった。もしも気づいたとしても、おちんちんを隠すこともしなかったろうけれど。近所のおばさんが買い物に行った折、そのことを笑い話にした。スーパーではちょっとした話題になって、みんなで話していた。車はそこを通るんじゃないのか。タイヤは大丈夫なのか。

 おばさん二人は、緑色の服を着ていたと証言している。だが、大介であるということに気づいていない。その子は誰なのか。一体どこの子なのか。スーパーにいた、禿げた親父が言い出した。なあに。子供だから、まだ清純であり、おしっこに余分な不純物は入っていない。だからそこを車が通っても、なんら問題なく、水に濡れた程度だ。タイヤや車が汚れることはない。

 おばさん二人は譲らなかった。汚いおしっこを、水たまりにした。教育はちゃんとしているのか。おしっこのことをちゃんとできるようになっているのは偉いけれど、手も洗っていない様子だし。禿げた親父は反論した。そのようなことは枚挙にいとまがない。いちいち気にしていたら、ドライバーなんてやっていられない。

 だがおしっこではある。送り迎えを車でしている人間には、たまったものではない。いやいやまだ子供じゃないか。可愛いものじゃないか。おしっこでなくうんちだったら大変だけれど、まあいいじゃないか。私は嫌よ。まだおばあちゃんになったばかりの、孫が幼稚園に通っていない女性が言い出した。私は嫌。そういうことはしっかり教育してくれないと。でも幼稚園児のすることと言ったら、お遊戯と、お絵かきと、食事と昼寝。少しは健康に気を使う必要があるけれど、そのようなものではないか。

 スーパーでのバトルは一時間近くに及び、バトルは白熱していた。掃除しなきゃ。水でいいのか。洗浄を行う必要があるんだぞ。どうするんだ。金の問題になるんじゃあないのか。業者が困るだろう。10万はかかるのではないか。タイヤ交換の時に言えるだろうか。男性陣に知れたら最後、大変なことになると判断して、このことはまだ黙っておくことになった。



 とある昼下がり。大介は幼稚園の敷地内にいた。どうしてもテレビが観たくなったので、家に帰った。側には新一くんがいて、彼も敷地内で遊んでいた。おばさん二人が見かけた。あの子よ。あの子に違いない。あらあ。困ったわねえ。どうするのかしら。こら。そこで遊んじゃダメ、えーと、ブーブーが来るでしょ。新一は悲しそうな顔をした。あなた、名前はなんというの?しんいち。その名は街に轟いたのであった。

楽しんでいただけたでしょうか。結果的には満足のいく仕上がりになっています。きっと面白いと思っているので、評価をお願いします。

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