中学三年生
私は元々、”普通な人”ではなかった。
生まれてすぐは気が付かなかったそうだが、1歳の誕生日を迎える頃には変だったらしい。
人と違うところは色々あったけれど、1番気味悪がられたのは瞳だった。まん丸な黒目の中に小さな白い三角。瞳孔が三角形のように見える瞳は見る人に恐怖を与えるらしく、私に友達ができることは無かった。それに、街を歩いているときの奇異な目も嫌だった。興味、恐怖、嫌悪、時には興奮を向けられることもあった。
だから、隠した。前髪を伸ばし、半目を意識して、メガネをかける。人と目を合わせることも無くなった。
相変わらず友達はできなかったけれど、奇異な目が向かないだけでも心持ちが楽だった。
学校でいじめ等に合うことも無く、勉強も困ってない。受験もちゃんと受かった。まあ、毎日が順調だった訳だが……私は、今、
屋上の端に立っている。
日々、苦しいことも無く、楽しいこと……は毎日あった。昨日までは。
昨日の9時、母が死んだ。唯一無二な家族だった。父が亡くなったあと、女手一つで育ててくれた優しい母だった。
母がいなくなった今、私に話しかけてくれる人はいなくなった。私の身近な人はいなくなった。
もう、この世界に居たくない。
誰もいない家は、誰も帰ってこない家は怖い。1人きりは、一人ぼっちは嫌だ。
身寄りもないし、いなくなって損する人はいない。1つ心残りがあるが、あの子なら大丈夫だろう。
来世はこんな目に生まれないことを、この目に生まれても周りが暖かい事を願って、身を投げた。
屋上が少しずつ遠のいていく。視界の端にたなびく髪が見える。
死ぬのは、痛いのだろうか。痛いのは、いやだなぁ。死ぬのなら、一瞬で、痛みを感じる間もなく死にたい。……母さんは、苦しまずに死ねたのだろうか。痛みを感じる前に死ねたのだろうか。
そんなことを考えながらふと見た階の廊下に人影を見つけた。メガネに長めの髪の少年。何か、見覚えがあるような……?
そこで、私の意識は途切れた。