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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ1~妹と幼馴染のバトルがヤバい!~
7/217

7「うん、間違いなくかかってるな。ヤンデレ病に」

「ふわぁ~~あ……ああ」


 朝日が目に差し込む。僕は眠たい瞼をこすりながらゆっくりと身体を起こした。ふと横に目をやると、布団の中にほみかの姿はなかった。


「む……寝坊したか」


 それもそのはず。時計を見ると、時刻は七時五分だった。一時間前には起きる予定だったのだけれど。


「ほみかのおかげで、興奮して寝れなかったからなあ……」


 ぶつぶつ文句を言いつつもパジャマから制服に着替える。

 リビングに下りると、テーブルの上にスクランブルエッグにトースト、サラダにコーンスープを並べる母さんがいた。


「あら、透。おはよう」


 そこにもほみかの姿はなかった。ということは、ほみかは既に家を出ていて、僕は置いていかれたということか。


「おはよう母さん――ほみかはもう学校に行ったの?」


「ええ。あなたが寝てる間にね。起こそうか? って言ったんだけど、『バカ兄貴と一緒になんて行きたくない』ですって。ごはん食べたらすぐ行っちゃった」


「そう」


 僕は答えると、テーブルに着いてテレビの電源を入れた。

 そこでは、あるニュースが流れていた。

 どうやら、長年付き合っていた彼女が、彼氏を刺し殺したらしい。

 男は浮気性で、他にも付き合っている女性がいたらしい――まあ最低だ。浮気がバレて、当然女と口論に。激しい言い争いになって――と、ここまではよくある痴話喧嘩だが。ここからが違う。女は男を包丁で刺し殺したのだった。


「やあねえ。ここのところ発症してる人が多いらしいじゃないの――ヤンデレ病」


「え? ヤンデレ病……? 何それ?」


 母さんが呟いた言葉に、僕は思わず問い返した。

 ヤンデレ病――初めて聞く病気だ。


「ヤンデレ病っていうのはね、最近見つかった病気よ。ある日突然、精神的に病んでしまい、異性への思いが激しくなりすぎて止められなくなって、過激で病的な行動に出てしまうというものよ。好きな人が自分以外の子と仲良くしてるのを見て、気分よくする女の子はいないでしょ? ヤンデレ病って、そういうところからくるらしいわ」


「へえ……そんな病気があるんだ」


 思わず昨日のりおんを思い出す。

 りおんはヤンデレかと聞かれれば、間違いなくヤンデレではない。むしろ、心の優しいお淑やかな女の子と言えるだろう。しかし、僕が他の女の子と話をする時、嫉妬の目を向ける時がある。幸い、僕は女子から言い寄られるほどモテないんで、そういった機会はほとんど無かったのだが。


「透」


 そんなことを考えていると、不意に母さんが僕の名を呼ぶ。


「あ、ああ。何? 母さん」


 母さんの目は、とても真剣だった。思わず視線をそらしてしまいそうなほどに。母さんは、まるで悪戯っ子をたしなめるような口調で、僕に言った。


「ほみかちゃんのこと……まだ許せてないの?」


「え? 何さ、いきなり」


「いいから。正直に答えて」


 ああ、なるほど。僕とほみかのこと気にしてたのね。

 僕は少し緊張した面持ちの母さんに答えた。


「許すも許さないも、気にしてないさ。ほみかは僕の――大切な妹だからね」


 そこで、緊張の糸はピーンとはち切れた。

 母さんはホッとしたように息をつきながら言う。


「よかった……お母さん、あなた達のこと、心配してたから。ほみかちゃんのこと。病気とはいえ、透が怒ってるんじゃないかって。それに、あの事件のこともあるし」


 母さんの言う病気とはツンデレ病のことだ。しかし僕は何も気にしてない――たとえ、共感性症候群がなかったとしても。僕がほみかを嫌うなどということは、未来永劫ありえなかっただろう。

 

「いいんだ。ほみかのツンデレ病にも慣れてるし」


「うふふ、いいお兄ちゃんじゃないの。流石は『ほみかを将来僕のお嫁さんにするんだ』とか言ってただけあるわね~」


「なっ……母さん。覚えてたのか……」


 母さんの軽口に僕が不満の声を上げようとした時だった。

 インターホンが鳴らされた。母さんが「は~い」と席を立ち応対する。

 その数十秒後、母さんはりおんを連れてきた。


 僕はその時、初めて彼女の本音を聞いた。

 もちろん口からではなく、心の声の方だ。


「透ちゃん……朝早くにごめんね? ひ、久しぶりに、一緒に登校できないかなって。む、無理かな? 無理だよね? ごめんなさいっ」


(……朝から見るとおるちゃんの顔とっっっても素敵♡♡♡♡ 超小型の隠しカメラ持ってくればよかった。でもいいの。とおるちゃんと私は結婚するんだもん♡♡♡♡ 三百六十五日、いつでもとおるちゃんと一緒の朝を迎えるんだから。そして、病める時も健やかなる時も死ぬ時も一緒に……)


 うん、間違いなくかかってるな。ヤンデレ病に。

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