5「今日だけは一緒に寝てあげるわよ……バカ兄貴」
「それで? あたし、今日はどこで寝ればいいの?」
夕食を終え、風呂も入り終え、すっかり夜も更けてきた頃。
ほみかは食器を片付けている母さんに尋ねた。
「ああ、そうねえ。ほみかちゃんのお部屋で……と言いたいところだけど、お掃除も荷解きもまだ全然終わってないのよねえ。まあ、それは明日やるとして。今日はお母さんの部屋で寝ましょうか?」
そう、母さんの提案はもっともなことだった。ほみかも何ら反抗することなく「わかったー」と頷いている。その提案に異論を唱えたのは、僕だけだった。
「あー、ちょっといいかな?」
「え? どうしたの? 透」
母さんとほみかは、一斉に僕の方を見る。う……何だか視線が痛く感じる。でも、そんな痛みに負けず僕は思い切って発言した。
「今日は……その、ほみかは僕の部屋で寝させてあげないかな?」
「はあ?」
僕がそう言った後、二人は「大丈夫か? お前」というような顔で僕を見た。特にほみかは、呆れたようにはあっと僕に向かってため息をついた。
「……あんた、何考えてんの? ガチで変態? 年頃の妹と一緒に寝ようだなんて。マジキモイんですけど!」
(イイよー♡♡♡ 全然イイよー♡♡♡♡♡♡ これもうフラグ? 結婚フラグ? 二人で一つの寝床で寝るとか、兄妹の一線ここで超えちゃうフラグ!?)
うん、妹よ。お兄ちゃんは、お前がそう言ってくれることを信じてたぞ。
「透。お母さんもそう思うわ。流石にその歳の兄妹が同じベッドでっていうのは……ねえ?」
母さんは、顎に手を当てて困ったような表情を浮かべていた。
僕は苦笑しながら答える。
「いや、ほら、今日だけだよ。七年ぶりに会ったんだし、積もる話もあるしさ」
「そりゃあ、まあ、色々話したいことはあるでしょうけど……」
「別に一緒のベッドで寝ようってんじゃないんだ。僕は布団を敷いて別で寝るから。ただ、昔を懐かしみたいだけなんだ。駄目かな? 母さん」
「え? ああ……そう言われたら、お母さんにはどうこう言えないけど……」
言葉を濁しつつ、母さんはじっとほみかを見つめた。どうやら、ほみかに決定権を委ねたようだ。もちろん、ほみかの答えを僕は知っていたが。
案の定、ほみかはすーっと息を吸うと、僕に向かってこう言った。
「……仕方ないわね。仕方なくだからね? 今日だけは一緒に寝てあげるわよ……バカ兄貴」
(キター♡♡♡ ついにこの時がキター♡♡♡ 襲う、これは襲う! お兄ちゃんが寝てる時にこっそり抱きついたり♡ 匂いくんかくんかしたり♡ ていうか、いくところまでいっちゃうー? ほみかはもう、全然Okだよお兄ちゃあああああああん♡♡♡)