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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ4~決着!? 最後に誰が選ばれるのかがヤバい!~
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21「――いよいよ、ラストターンね」

 ――覚悟!


 葵は凛とした声と共に、神速の動きでレインに詰め寄った。


 ドカッ、バキッ、ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


 凄まじい打突音や破壊音が鳴り響くやいなや、葵の逆転劇は始まった。

 その強さは圧倒的で、見る見る内にレインの体力ゲージは五割近く削られていた。そして、追い詰められたレインは膝をつき――


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


「はい? どうかなさいましたか? ほみかお姉さま」


「どうかなさいましたか? じゃないわよ!」


 ほみかはポーズボタンを押して、一度画面をオプションモードにしてから、


「は、反則よ! 初心者のくせに、アルティメットチャージを使うなんて!」


「何を仰るかと思えば。しゃにむにボタンを押していたら、偶然が功を奏しただけですわ」


「あのタイミングで、偶然アルティメットチャージなんか成功するはずないじゃん! アンタ、このゲーム実は知ってたんでしょっ!?」


「いえいえ。ですから、やったことなどありませんわ。嫌がるわたくしに無理やりこのゲームを勧めたのは、あなたではありませんか。わたくしはただ、チュートリアルを懸命に覚えただけですわ。それに、小学生でも出来る簡単なゲームと言ったのはあなたでしょう? でなければ、初心者が数時間練習しただけでは、到底マスター出来ないゲームを提案したと、ご自分でお認めになるということですか?」


「ううっ、さすがに何も言い返せない……でもね! まだ勝った気になるのは早いわよ! レインにだって、体力はまだ充分残ってるんだから! ……葵のアルティメット状態をしのげればだけど」


 強気なのか弱気なのか、よく分からないほみかだった。


「どうでもいいですけど、早く中断を消して頂けませんか? せっかく流れに乗っていたというのに。今度無断でポーズボタンを押したら、ほみかお姉さまの負けにしますよ? よろしいですね?」


「わ、分かったわよ。悪かったわね……続けましょう!」


 ほみかは気まずそうに謝罪しながら、ゲームを再開させた。


 その後、アルティメット状態の葵にレインは苦戦を強いられるものの、細かい攻撃を何発か当てられるようになってきた。そんなわけで、二人の体力、気力ゲージはほとんど差がなくなり、勝負はいよいよクライマックス。ここで超必殺技を受けようものなら、すぐにでも敗北が決定する。


「うふふ。いかがですか? ほみかお姉さま。プロを自称する方が、わたくしのような素人に追い詰められるご気分は?」


「う、うう……」


「コンボを入力する指さばきといい、敵の攻撃を見切る動体視力といい、わたくしの集中力は留まることを知りません。もはや、ここまでのようですわね?」


「はあ? 何チョーシ乗ってんのよ! ド素人のくせに! ……あたしは負けないわ。ここから大逆転してみせる!」


 と、ほみかが吼えたのには理由があった。葵のアルティメットチャージが解けたのだ。元々のあすかの実力は、ほみかに遠く及ばない。アルティメット化というパワーアップがあったからこそ、戦況を覆せてただけで。

 

 その葵のアルティメットチャージが解けた……これを受けて、次にほみかが繰り出す戦術とは?


「――いよいよ、ラストターンね」


「いいですわよ。どこからでも掛かってきてくださいまし。わたくしはそれを、正々堂々打ち破ってみせますから」


「望むところよ! ――レイン!」


 ――Haaaaaaaaaaaaaa!!


 ほみかが特殊コマンドを入力し、レインが叫び、その手のひらに全てのエネルギーが集中する。

 その膨大なエネルギに―によって揺らぐ大気、崩壊する地盤。

 体中から深紅の気炎を発しながら、電光石火のごときスピードで飛び掛かり、全身全霊の攻撃を食らわせようとした、その瞬間、


 ふわっ


 と。

 葵がまるで風に飛ばされる綿毛のように、ゆるやかに飛び上がった。

 これが『ズラし』と呼ばれるテクニックだった。

 当然当てるべき対象を失ったレインのオーラは、空しく空を切り、葵はレインの後ろ側の地面へと着地した。つまりは、


「――外れた!?」


「やった! やりましたわ!」


 悲観の声を上げるほみか、歓喜の声を上げるあすか。その叫び声が指し示す意味は、画面中央にデカデカと映し出されていた。


 再び葵は青白いオーラをその身にまとい、アルティメット化していた。そうか、これが狙いだったのか。僕には、あすかの企みが全て分かった。


 総合的な技術では、あすかはほみかに及ばない。そこであすかは、レインの攻撃をズラすことだけ考えていたのだ。


 ズラしは高等テクニックだ。ボタンを押すタイミングがシビアだし、もし失敗したら自分が手痛い打撃を受ける。でも押すボタンの数は少ないし、タイミングさえ合えば敵の攻撃を全て防ぐことも不可能ではない。しかもズラした分気力ゲージが溜まるので、こうしてまたアルティメットチャージすることが出来たのだ。


 ということは、ほみかは――


「ちょ、ちょっと待ってよ……」


 ほみかは、絞り出したようにか細い声を発した。

 しかし、現実は非情だった。

 なぜならば、これは真剣勝負だから。ほみかのプレイングも見事なものだったが、最終的にはあすかの智謀が光った。『肉を切らせて骨を断つ』を見事に体現したあすかが勝つ、いや、勝とうとしているのは。むしろ当然の結果と言えるんだけど。


「いやっ、来ないで……っ!」


 目に涙を溜めながら、ほみかは方向キーを押してレインを後退させながら、


「あたし、まだこの家を出ていくわけにはいかないのよ……まだまだ、一緒にゲームしたり、一緒に映画見たり、一緒にお風呂入ったり、一緒に寝たり……ほんとに、やりたいことがたくさんあるんだから。こんなところで、負けるわけにはいかないのに」


「問答無用!」


 そこからの決着は、呆気ないほど簡単な幕切れだった。葵が高速移動でレインの後ろに回り込み、素早く手刀を食らわせ、ノックダウンしたのだった。


 ――Wow!


 ――You win!


 悲鳴を上げて倒れこむレインを見下ろしながら、葵は拳を高々と挙げ、勝利の祝福を受けるのだった。


 長かった三本勝負も、ついに決着。

 あすかは最後の最後で、非常に勝算の低い勝負で、最後まで冷静さを欠かせることなく、見事逆転してみせたのだった。いや、本当に名勝負だったよ、拍手を送りたいくらいに。負けた方が家を出ていくっていう取り決めさえなければ。


 ……でも、勝負はついてしまった。

 ほみかとあすかの三本勝負、勝ったのはあすかだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [一言] ほみかから小物臭が・・・・;;; さて、自分の思惑から外れてしまった透君は、一体この場をどう収めるつもりなんであらうか・・・・。
2020/04/10 22:48 退会済み
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