7「あれ? これだけ?」
「それじゃあ次は、あたしの料理ね!」
そして、いよいよほみかの番。
意気揚々とほみかは、台所から調理済みの料理を、盆に乗せて持ってきたのだが――
「あれ? これだけ?」
僕が率直な感想を述べると、ほみかは顔を真っ赤にし、
「な、なによ! ちょっと見た目はアレかもしれないけど、問題は味よ! 味味味! 文句は、食べてから言いなさいよね!」
(お兄ちゃん! ほみか一生懸命作ったから、お願いだから食べてえええええええええ!)
「ああ、ごめん……」
ほみかの心の叫び声に対し、僕はお詫びをする。そして再び、ほみかの作った料理をつぶさに観察する。
マヨネーズをかけたツナと、刻んだネギとショウガが乗ってるだけのご飯である。よく見るとトッピング用のチーズが乗ってたりするけど、あすかの作った本格的な料理に比べたら、どうにも見劣りがしてしまう。ほみかには悪いけど。
「それよりも。もう食べちゃっていいかな?」
「そうよ! さっさと食べなさいよ」
「はい。いただきます」
「ふん。心して味わうのよ?」
ほみかの言うとおり、僕はスプーンでご飯をすくうと、ゆっくりと口の中に入れ咀嚼した。
「おお……」
僕は感歎の声を漏らした。見た目はちょっとみすぼらしいけど、うまいぞこれ。
どうも香ばしいと思ったら、ごま醤油がかけられてる。シャキシャキのネギもいけるし、ツナマヨご飯にとろーりとしたチーズも相性バツグンだ。
「あれ……?」
飲み込んでから、僕はその違和感に気づいた。
どうにも、初めて食べた気がしない。前に一度――それも、大分昔に、僕はこの料理を食べたような気がするのだ。
「まさか……」
思い出すのに費やした時間は数秒だった。今から十年前、確かに僕はほみかにこの料理を作ってもらったことがあった。僕はさらに詳しく思い起こそうと、過ぎ去りし日々を追憶してみることにした。