40「バ、バカ兄貴! きてやったわよ!」
そんなこんなで。
ほみか、りおん、アリサとお風呂に入ることになった僕は、海パンを履いて一人で温泉に浸かっているのであった。
着替えまで一緒にするのはまずいということで、僕だけ先に一番風呂を頂く形となったのだが……いや、本当にまいったね、クリスティーナさんの強引さには。
僕にとって、一番大切なのはほみかであって。
一番と言えば、りおんとの付き合いが一番長い。
一番隣にいて落ち着くのはアリサだけど。
一番守ってあげたいのはあすかだ。
でも今僕にとって、一番やらなければいけないこと。
ことりと接触して、彼女の誤解を解き、あすかの精神的負担を和らげつつ、立花綾さんとの仲も何とかする。ミッション難易度は間違いなくハードだが、やらなければならない。うん。
……。
…………。
……………………それにしても。気持ちいいなあ。
僕は岩肌の縁にもたれかかりながら、おっさん臭くため息をついた。
天然水で供給された温泉ということで、身も心も癒される。ここの所神経を張り詰めることが多かったけど。いい休養になるね、これは。
天然温泉の露天風呂。
銭湯としてもやっていける――というのは少し大げさだが。それでも数人で利用するには十分すぎるほどの広さがある。しかも、夜空には満点の星。僕らだけで利用するには申し訳なさすら覚える。
「……アリサとクリスティーナさんには、本当に感謝しないといけないな」
真っ暗な空一面に輝く無数の星々を見上げながら、僕は呟いた。
派手な装飾はない。
ジャグジーなどの機能がついてるわけでもない。
それでも星空や森林といった大自然を見渡せる――そんなナチュラルな外観には芸術性すら覚えた。
うーん、それにしてもいいお湯だ。
体の芯から温まって、血行が良くなるのをひしひしと感じるよ。
ほんとに、何もかも忘れられそうなくらいに。
なんてことを考えていると――。
「お……? どうやら、着替えが終わったようだな」
わいわいがやがやと。脱衣所の方から声が聞こえてきた。
「り、りお姉! 早く開けなさいよ! 後ろが詰まってるじゃないの!」
「待って! もう少し焦らそう! そうしたら、ムラムラした透ちゃんに襲ってもらえるかもしれないし!」
「……あんまり待たせても、透さんのぼせるだけですよ。風邪を引きますしもう入りましょう」
ガラガラガラ、と。
ガラス扉を開けて、彼女達は入ってきた。
その絢爛華麗さに僕は思わず感歎の声をもらす。
「バ、バカ兄貴! きてやったわよ!」
そう不機嫌に叫ぶほみかの水着は、フリルのついた黄色のビキニだった。
胸元は二段フリルでほみかの可愛らしさを存分にアピールしつつ、下のビキニはかなり際どく、彩り鮮やかな花柄がプリントされていた。貧乳を誤魔化しつつも、自身の持ち味を活かした正統派なスタイルと言えるだろう。
「透ちゃん、お待たせ! りおんのダイナマイトボディをとくとご堪能あれ!」
自信まんまんにポーズを取るりおんの水着は、何とピンクのマイクロビキニ。
いや、布地の部分が少なすぎるよ。
というか面積が小さすぎてほとんど水着の意味を成していない。
まるで取れたてのスイカのように瑞々しい巨乳を包むブラは、背中と首の後ろで紐を結んでいるだけだった。ショーツはもう……何か色々見えてるよ! ツルツルしたのが! そこにいたってはまともに視線を向けることさえ出来なかった。
「……あの、何りおんさんばっかりジロジロ見てるんですか? この変態が」
ジト目で僕を睨むアリサの水着は白のワンピース。
その美しさは、正に別格だった。
胸元も太腿もスカートで包み隠されているが、それでも印象づけているのは、水着の白さに負けないアリサの純白な美肌によるものだろう。
しっかりとした生地により、スラリと伸びた手足はより強調され、その清楚さはまさに深窓の令嬢と言える――けど。
この三人と一緒にお風呂に入るのかあ。……持つかな? 僕の理性。