15「あなたは、雪ノ宮さんとどういうご関係なんですか?」
公園であすかと別れてから、僕はとある人物と会った。場所は公園を出てすぐの路地。俯き気味に歩いていると、その人物は迷うことなく僕の前まで歩を進め、
「すみません、ちょっといいですか?」
僕は顔を上げ、その女性の顔を見た。こういう人、っていう言い方は失礼だけど、礼儀正しい挨拶の仕方から、何となく真面目な人なんだろうなあという印象を受けた。
今時珍しい黒髪の三つ編みおさげな女の子で、何となく素朴で大人しい感じ。切れ長の鋭い瞳に、細い銀フレームのメガネをかけていて、何となく頭良さそう。クラスのまとめ役というか、勉強が出来て、怒ったら怖いクラス委員長。と、ここまでが彼女に対する僕のイメージ。
あすかとの関係性はよく分からないけど。
でも何となく。
あまりな良好な関係とは思わなかった。
彼女の思いつめた表情が、そう感じさせるのだろうか。
「え? ……僕?」
僕は自身を指差して聞き返した。その女の子と面識がなかったからだ。
しかし少女の着ているセーラー服は、先程まで会っていたあすかと同じものだった。するとこの少女は、あすかのクラスメートか何かだろうか。僕がそんなことを考えていた時。
彼女は、口を開いた。
「はい。あの、あなたさっき、雪ノ宮さんと公園でお話してましたよね?」
「雪ノ宮さん……あすかのこと?」
少女は真剣な表情で頷く。
「そうです。一体、何を話していたんですか?」
「え……何って。色々だけど」
「あなたは、雪ノ宮さんとどういうご関係なんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
僕は慌てて、矢継ぎ早な少女の質問を遮った。
「そんな一度に聞かれたって答えられないよ。そもそも君こそ誰? あすかとどういう関係なの?」
「あ、ごめんなさい私ったら。失礼いたしました」
そう言うと少女は、ブンブン頭を振ってお辞儀をした。
ミスをしたサラリーマンが、上司に頭を下げるような感じで。
僕は「いやいや」とフォローを入れるも、内心では全力で嫌な予感がしていた。
早くも予感的中、というのだろうか。その少女は顔を上げると、背筋をピーンと張った姿勢の良い立ち方で、僕にこう言うのだった。
「私、雪ノ宮あすかさんのクラスメートで、立花綾といいます。雪ノ宮さんについて、お話したい大事なことがあるんですけど。今から少しお時間よろしいでしょうか……?」




