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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ3~主人公、まさかの離縁!? 幼馴染とクラスメートのバトルもヤバい!~
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10「……答えは、いつでもいいので」

 そして、やってきたいつもの中庭。


「……すみません透さん。こんな所までお呼びして」


(……他の人に聞かれるのは恥ずかしいんです)


 僕とアリサさんは、花壇の横のベンチに並んで腰掛けていた。というか、あれだよね。クールな態度取れるようになってるし、心の声も聞こえてくるってことは。

 

 デレ期、治まってるよね?

 という疑問は置いといて。僕はアリサさんの謝罪に答えた。


「いや、いいんだけどさ。話って何? アリサさん」


「……ここの所私、少し変だったじゃないですか? 授業中なのに告白をしたり、休み時間はトイレの中までくっついていったり、お昼はお弁当を透さんに『あーん』させようとしたり。普段の私では、絶対にしない行動だと思います」


「……まあ、そうだね。僕もそう思うよ」


「……ですよね。なので、その件についてお詫びしようと思って」


「お詫び? なんで?」


「……私の軽率な行動が、一ノ瀬さんの嫉妬を招き、今回の事件に発展したからです。おかしくなっていたとはいえ、透さんにも迷惑をかけてしまいました。なので、この場を借りて謝りたいと思います」


 そう言って、僕に対し深々と頭を下げるアリサさん。

 いやいや、と僕は首を横に振る。


「そんな、別に気にすることはないよ。りおんだってちょっとやり過ぎてたし。僕も別に、迷惑だなんて思ってないしね」


「……透さんにとってはそうでも、私にとってはそうじゃないんです」


(……私のせいで、一ノ瀬さんは死んでいたかもしれないんです。気にします)


「まあ、そうかもしれないけどさ」


「……あと、一つ言っておきますけど。私の取った数々の行動は、頭が少々混乱していた為のものであり、正気ではなかった状態だからと認識してもらいたいんです。今はもう、この通り元に戻りましたので、またいつものように接することにします。なので、よろしくお願いします」


「あ、はい。こちらこそよろしく」


 ペコリを頭を下げるアリサさんにならって、僕もお辞儀をする。

 アリサさんの言う『正気ではなかった状態』というのは、間違いなくデレ期のことだな。落ち込んでるアリサさんには申し訳ないけど、あれはあれで結構、いやかなり可愛かったんだけどね。


 でも無口で無表情で無愛想な態度を取る女の子が、内心ではドン引きするくらいデレる……というのも、同じくらい可愛げがあるんだよね。

 うーん、どちらの状態も甲乙つけがたいけども。


「それで? 僕もこれまで通り、普通にアリサさんに接していいんだよね?」


「……はい。そうしてもらえると助かります」


(……本当は、今すぐ私と結婚してほしいんですけど)


「そっか。ところで、一つ気になってることがあるんだけど、いい?」


「……なんでしょうか?」


「君はさっき『正気を失っていた』って言ってたけど、どこからが間違いで、どこまでが本気だったの? たとえば、結婚式場で僕に告白をしたこと。あれは、どっちだったの?」


「……それは……本気の部分も、なくはないですけど」


(……あうう、百%本気に決まってるじゃないですか。でも、そんなこと素直に言えませんよう)


 僕が少し意地悪な質問をすると、アリサさんは表面上クールに、内心ではあわあわとうろたえながら答えた。

 うん。やはり、デレ期は完全に無くなっている。さっきまでのアリサさんなら、僕に飛びついて過剰な愛情表現をかましていたはずだ。


「分かった。試すようなことを言ってごめんね。君の気持ちは伝わってるし、告白されたのも凄く嬉しかったから」


「……そうですか。まあ、私にとってはそこまで本気というわけではないのですが。透さんがそこまで真剣になってしまったのなら、受け入れないのは悪い気がしますね」


(……透さん。今なんて言いました……? 私からの告白が、嬉しかったと……? ああ、幸せです。やはり今すぐ結婚を……)


「……その件なんだけど」


 心の中で歓喜に酔いしれるアリサさんに、僕は言葉をかけた。

 ちなみに、今から僕が言うことによって。喜びに満ちる彼女の心が曇ることは間違いない。だから、多少の気は引けるのだけど。


「アリサさんからの告白は嬉しかった。それは間違いない」


「……そんなに言わなくてもいいんですよ? モテない透さんが女の子から告白されて舞い上がってしまうのは分かりますけど」


(……私の方こそ、嬉しすぎます。あの告白で、透さんから嫌われたらどうしようって思ってましたから……)


「でも僕は、今アリサさんと付き合う気はない」


「……はい?」


「もう一度言うよ。アリサさんと『今は』付き合う気はない」


「……それは、えっ? どういうことですか?」


(……もしかして私の人生、終わりました?)


 いやいやいや、何でそうなるんだ? 確かに、好きな男から『付き合う気はない』って言われたらヘコむものかもしれないけど。僕の話にはまだ続きがある。


「早合点しないでもらいたいんだけど。『今は』だからね? りおんにも同じことを言ったけど、今の僕にはやらなきゃいけないことが山ほどあるんだよ」


「……なるほど。だから、『今は』付き合えないというわけですね?」


(……つまり、それが終わったら、私と結婚してくれるってことですか?)


「うん、まあ、色々なことが片付いたら、ゆっくりと自分の気持ちにけじめをつけたいと思うんだ。『急がば回れ』って言うし、ちょっとの間でいいから、待っててくれないかな?」


「………」


 僕の言葉を、彼女は赤い瞳でじーっと無言で見つめていたが、やがて口を開くと、


「……分かりました。いいですよ」


(……ほっ……よかった、透さんにフラれたんじゃなくて)


 意外にも、アリサさんの口から出てきた言葉は、肯定だった。

 それどころか、僕からの提案にホッとしている始末。


「……答えは、いつでもいいので」


 アリサさんは、白い頬を桜色に染めながら、僕のことを上目遣いに見つめた。


「……ただ、これだけは覚えておいてください。私が透さんにした告白。あれは『間違いなく』本気だったということです。私、透さんのこと信じて、いつまでも待ち続けますから」

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