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カーリーの魔法学院生活  作者: 田中
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運命の糸

「う……ここは?」


目を覚ますと、私は見知らぬ天井を見ていた。

淡く柔らかいオレンジ色光をはなつランタンが幾つも浮んで白い天井を温かくてらしている。


周りを見るとこれまた白いカーテンで、囲まれ、自分はベッドに寝かされていたらしい。固くないベッドで眠るなんて何年ぶりだろう。


「そうだ、試験っ」


身体を起こそうとした瞬間微かに胸が痛んだ。


そこで、自分の胸がケルピーに食いちぎられたことを思い出して手をやると穴など無くいつも通りの板のような胸があった。


そしていつの間にかボロのエプロンドレスは脱がされ簡素な白い入院着と呼ばれるものに着替えさせられているのに気づく。


「いったいあれから…なにが」


「あーら、目覚めたの?どう具合は?」


「え、あ、な、なんとも…ちょっと胸が痛む気が」

「幻肢痛ね〜。大きな怪我に回復魔法をするとよく起こる事よ。暫くしたら収まから大丈夫♡。」


動きやすそうな白衣のローブを着た筋骨隆々な女性…いや男性?…性別不詳な人がカーテンを開けて入ってきたかと思うと、矢継ぎ早に聞かれそれに応える。私が呆然と見ていると、その人はアラ、ヤダと口元に手を当てて笑う。


「いきなりこんな綺麗なお姉さんが現われたらビックリしちゃうわよね?私は王立魔法学院の保険医、ロドリゲス・ベルガよ。ロディ先生って呼んで」


「は、はぁ…」


「もー、反応薄いわねぇ。」


「(そりゃこんな化け物に寝起きそうそう声掛けられたらそうなるだろ)」


パカリ、パカリと音を立ててやってきたのは、私を小川にひきづりこんだあのケルピーだった。

けれど不思議な事にちゃんと下半身は魚じゃなくて馬だ。


「(陸に上がる時は姿ぐらい変えられる。)」


ケルピーから、気を失う前に耳にした男性の声が聞こえた。


「なんで、声…それになんでいんの?」


「それはあなたがケルピーと運命の糸を結んだからよ」


「(不服ながらな)」


「運命の…ってことは、私合格したんですか!?」


胸の痛みも忘れガバッと起き上がるとロディ先生はくすりと笑った。


「ええ、そうよ。」


「良かったぁ…ってああああ!!!!カっ、カンテラッ…こいつから私助けようとして火の玉が…」


「ああ、その事なら大丈夫よ。あなたに魔法を掛けてここまで連れてきたのはそのカンテラの火なんだから。」


「良かったぁ…」


「ふふ、改めて合格おめでとうカーリーちゃん。今日はここに泊まって体を休めなさい。明日にでも寮の方に案内するわ。」


「はい」


ロディさんがローブを翻して行ってしまうと私とケルピーだけになってしまう。


海中では良く見えなかったけれど、薄水色のような藻色のような不思議な色をしている。にしても捕食者と一緒にいるのは落ち着かない。


「あー…それで…運命の糸を結んでるからあなたの声が聞こえるんだっけ?」


「(ついでにお前の声もな。運命の糸を結ぶってのは一心同体になるってことだ。お前が死んだら俺が死ぬし俺が死んだらお前も死ぬ)」


馬顔でも心底嫌そうなのが手に取るように分かった。


「なら、どうして私を食べようとしたの?」


「(まさか運命の糸結ぶ羽目になるなんざ思わなかったからな。)」


馬が溜息を吐く姿は凄いシュールである。


「(まぁ結んじまったもんは仕方ねぇからこうして陸まで上がってきた訳だ)」


「へ、へぇ」


じっと青色の瞳がこちらを見る。


「(けど、言っとくぞ。こき使ったら承知しねぇからな)」


あまりの剣幕にコクコクと頷くとケルピーは満足したのかベッド脇に寝そべる。


…もしかして学院生活の間、いやそれ以上にずっと私の傍にいるのか。


サラブレッド並の大きさの馬というのは些か不便…あ、けど相乗り馬車を使わなくて良くなるじゃん。


「(言ったそばからそこらの馬と一緒にすんじゃねぇガリガリ)」


「ガリガリじゃないし」


「(ガリガリだろ。なんだあの不味い肉)」


「…知らないよ。もとからこんなんだし」


「(そうか、学院の食堂は色んなモンが出るそうだ。たくさん食えば美味い肉になるだろ)」


「…また私を食べるの?」


「(言ったろ一心同体だって。殺したら俺も死ぬんだ、食わねぇよ。馬鹿)」


「馬はあなたでしょ。」


「(うるせぇ、ただ…)」


「ただ?」


「(いや、なんでもねぇ。)」


それきり寝てしまったのかケルピーから話しかけてくることはなかった。


本当に魔法学院に入学したのか。


これからどんどん勉強して立派なお金を稼げる魔法使いになる。


私を散々馬鹿にしてきたセフィルを、父を義理母をぎゃふんと言わせてやる。


ぐっと手を握った所で、お腹がぎゅるるるっとなった。


…明日起きたらケルピーの言ってた学食に行こう。


学院の医務室

白色の部屋だけれどもオレンジ色の灯りのため暖かな印象の部屋。

基本は回復魔法でどうにでもなるために多少の傷で利用するものは少ない。魔法の魔法使い特有の病気、また回復魔法で回復出来ない呪いの治療に使われる。生徒以外にも国民や卒業生も利用可能となっている。

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