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紡ぐ言葉  作者: 朔良
壱章 日常
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6話 苦手なんだよな

(注)この物語には多少の流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます

昼休み。

千里は伊織と蒼にお昼ご飯を一緒に食べないかと誘われていたので二人が待つ隣の教室に弁当を持って訪ねていた。千里が訪ねたときにはすでに二人は食べ始めていて、待たせたなぁと思いつつも千里は二人のいるすぐ近くの席から椅子を借りると二人の間に座るように腰を落ち着けお弁当を開く。


「千里ってさ……もしかして楔のこと嫌い?」


千里が食べ始めたとき、開口一番に伊織にそう聞かれると、少し面を食らったかのように目を見開いてから若干悩みながらたこさんウィンナーを口に運びながら、答えを考えるも、そもそもの話聞かれる理由がわからず、思わず聞き返した。


「……なんで?」

「なんというか……千里って楔に対してあんまり仲良くない人とか、苦手だったりする人ととる態度が同じだったり、楔のことだけ名字で呼んでるし……。まぁ、何となくだけど」

「うーん、……縁自体は嫌いじゃないよ、多分。けどなんか……苦手、なのかな……アイツ裏がありそうでさ……。なんか……苦手なんだよなぁ」

「嫌いではないんだ……」

「おぅ……。でもまぁそのうち慣れるよ。……多分」


伊織は聞き返されると少し悩んだように、宙を見上げた後に恐る恐る、といった感じで口を開きながら千里の疑問に対して答える。千里は態度と言われ、そこまで表面に出てたかと思うと苦笑がこぼれそうになる。それでも千里はその後に、なれるよ、多分。と言うと、伊織は

「多分なんだ……」

と呟くように千里の言葉に返すとそのあとすぐに顔をくしゃりと綻ばせながら口を開くのだった。

「楔いい子だし、すぐに千里も馴染めると思うな!それに千里と楔って気が合いそう」

「……いい子、ねぇ。んー、どうだろうねぇ……」

それ以来千里は縁楔の危険性があるかないかについて考え始める。蒼に聞いてもいいのだが、あまり仲の良くない蒼のことだ。碌な意見は来ないだろうから、もとより蒼の事は期待はしていない。千里の予想にしか過ぎないが、恐らく縁という男も蒼と同じで、この目の前にいる橘伊織のことを好いていると思っているし、そうとなれば、仲が悪くなるのも頷ける。それに楔のほうは千里には予想になってしまうが蒼も楔もお互いに引くことを覚えない。余計に仲も悪くなるのだって理解ができるのだ。

そして対する伊織は人を疑うことを知らない純新無垢な性格だ。千里からすれば、伊織という女の子は、将来悪い人に騙されるんではないかとひやひやしながら毎回見守っている。……まぁそれはこの場にいない秋良も同じ話なのだが、騙されたら恐らく千里は総力を挙げてそのなぎグループをあぶりだすだろう。

「まぁ……いいか。にしても姉妹校に転校生来たらしいな。確か、四月一日徹守……ってやつだっけ?」

「そうだよ。その人になら僕今朝あったよ。何かねー、僕の家の周りで迷ってた。駅に行きたかったんだって」

「へー……じゃあこの周辺に住んでんだ。その割なんで遠い高校通ってんだろ……」

「うんー、何かねー、推薦らしいよー。それでここに来たんだって。美術と水泳」

千里は話題を変えるべく姉妹校に転入生が来たことを大して興味もなさげに話を振ると伊織は既に対面済みらしい。伊織の推薦できた、という言葉と伊織の家の周りで迷っていて、駅に行きたがっていた、という点から、この学園でもよかったはずだ。千里はふっとこの学園の部活を思い出すと、余計にわからなくなった。部活や学力も大体同じくらいなのになぜだろう、と。

「この学校でも通えたんだけどな。美術部も水泳も推薦生徒を受け付けてるだろ?……学力か?……あ、でも向こうも同じぐらいか……ううん、余計に分からん……」

「うん、僕は千里の呟いてる事の方が頭良すぎてよく分からないけどね」

「……え?俺一応このしゅ……学園の部活と姉妹校の偏差値と部活ぐらいなら把握してるから」

「え、それちょっと怖いかも」

「千里ちゃんって変なところ、頭いいよねー、元ヤンのくせに」

「うるせぇなぁ、元ヤンとかそれは関係ねぇだろー。つか、ふざっけんなよ、俺は昔の名残で文武両道なんですぅー」

「いひゃひょひゃんのかあひぇおいふぃ」


一度、この周辺の高校、と言いかけて姉妹校、自分の高校と姉妹校の部活と学力は把握してる、と口にすると伊織は怖い、というと蒼が、変なところ頭いいよね、とニコニコとしながらいった。伊織は千里の記憶力の良さに若干引いていた。

その事をほんの少し不快に思った千里は、お弁当箱に残っていた最後の唐揚げを蒼の口に無理やり突っ込むと手早く片付けた。蒼はあまり反省したそぶりはなく“千里ちゃんの唐揚げおいしい”と告げる。それに追い打ちをかけるように千里は顔を露骨に顰めながら「ふざっけんな」と口をひらく。その顔を見て蒼はニヤニヤと笑いながら、幼馴染みだからこそ知っている、そして家が近所にあるからこそ知っている特権を話し始めた。

「うん、知ってる。夜中の3時ぐらいまで勉強してる事もあったよね」

「なっ……!!そればらすなアホ蒼!!蒼のバカ!!」

「うん、どっちも同じ意味だよね。それでたまに寝落ちて風邪ひいて死にかけてたり、寝坊してたら意味無いけどね」

「ほんっと何でそればらすの?!てかなんで知ってんの?!」

「だって千里ちゃんの部屋、僕のいる部屋から丸見えなんだもん。カーテンは閉めてあるけど、電気ついてる時は大抵勉強でしょ?」

「うるせえなぁ……蒼、お前後で覚えておけよ」


伊織は千里と蒼の話題についていけずに呆然としながら、二人の会話に耳を傾ける。千里は特に勉強などしていないがこの場には千里の大きな秘密を知らない彼女がいる。下手なことをいえずに困っていると蒼は相変わらずにやにやとしながらこっちを見ていた。内心こいつ後で覚えてろよ、千里はそう思いながらあの書類を今日中に片付けなくちゃ。そう思いながら、ふたたび会話を開始するのだった。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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