28話 夢
(注)この物語には多少の流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます
『おねがい……けて……!か……ん、おと……』
『金のない子供は救えないんだよ』
『お前なんか……お前さえ……お前さえいなければ千歳姉さんは……!』
『お前なんか、いなければいいのに』
「っ……!!トイレっ……」
息苦しい感覚で目が覚めて一気に起き上がる。起き上がると同時に胃からの不快感に口元を手で押さえながらトイレへと一気駆け込む。何分間そこでそうしていただろうか。時折むせているのか咳き込んだり、嗚咽が聞こえたような気がしていたが千里にはその時間がとても長く、何時間にも渡っていたような気もするが実際の時間にすると10分かそこらぐらいだった。まだ暫くトイレから出れそうにはないので、ため息をこぼした。
「ずいぶんと久しぶりに見た夢だったなぁ……」
正直今日見た夢の詳細は忘れたい過去だった。今も千里を苦しめている、過去の出来事を思い出させる夢だった。それも鮮明でいて、また目の前で繰り広げられているような感覚になるのだ。夢だというのに嗅覚やたい感、感覚の全てがリアルなので。最近は見てなかったし、油断してたのもあったが千里自身もあまり見たくはなかった。前は頻繁に見ていたし、そのたびにさっきみたいにトイレにこもっていた。もちろんその後は暫くトイレから出られなくなるのだが。目をつむるとあの夢がまた出てくるんじゃないか、そう思うと瞬き以外で今はなんとなく目は閉じたくなかった。再び一つため息をこぼしてからトイレから出てくるなりトイレの扉に寄りかかるかのように座り込んでから、頭を抱えた。
「やだなぁ、もう見なくなったと思ってたのに……だめだなぁ、俺は天才で、完璧で有能にならないといけない警視総監様なんだから、あれが怖いなんて言ってらんねぇよ、このくらいでへばってらんねぇ」
体の震えを取るために、千里は体をさする。それでもしばらくは足に力が入らずに立ち上がれなかったし、体の震えも学校に行く時間の直前まで止まらなかった。”情けない“そう思いながらも、この夢を見るたび、怖くなる。あの匂いが鼻から離れない、あの感触が手から離れない。
「忘れられたら、楽なのになぁ、これが罰ってやつなのかなぁ、―――――守れなかったことに対する」
千里が頭を抱え込みながら呟いた声はどこかかすれていて聞き取りにくく、聞き取れたのは、そこだけだった。
起きてから、どのくらいの時がたっただろうか。足の震えも止まり、立ち上がれるようになった。少しだけふらふらするような気もするが、大丈夫、そう判断すると、居間に向かい、時間を確認した。どうやらいいj感で、いつもならそろそろ蒼が迎えに来る時間だった。すぐに学園に行く用意を済ませる。
いつも通りの時間に蒼が迎えに来ると、千里は蒼の隣を目指して歩き始める。蒼はいつもよりも千里の顔色が悪いことににすぐに気が付き、じっと顔を見つめながら千里が隣に立つと同時、、声を掛けた。
「おはよう、千里ちゃん。……大丈夫?顔色悪いよ?」
「蒼ちゃん……。んーん。ダイジョーブだよ」
「うん、千里ちゃん嘘はよくないよ。……またあの夢、見たの?」
千里が大丈夫だ、そう告げると少し厳しい目つきになりながら千里をけん制する。千里は少し困ったように笑いながら、騙せないことを悟ると、少し黙り込んだ後に口を開く。流石長年付き合ってきただけあるが、そんなにわかりやすいのかと思うとほんの少しだけ落ち込むものだ。
「……やっぱりパパは騙せないね、うん。あの夢見ちゃった」
「……そっか。気分は?」
「あんまりよくない。……でも、大丈夫。前よりはましになったから」
「そっか……」
あの夢見ちゃった、と言いながら、リュックサックの肩にかける部分を強く握りしめる。手がまだ少しだけ震える。ソレを押さえるために次に続いた質問に千里は良くない、と行った後に少し困ったようにうまく笑えていない顔で笑うふりをした。蒼は知っていた。千里はいつも嘘をつくとき、大丈夫じゃないのに大丈夫だ、と言うときは、へたくそな笑顔で笑うのだ。それでも蒼は軽く頭をなでると、再び口を開く。
「無理、しないでね、千里ちゃん。何かあったら何でも相談して」
「ん……ありがと、蒼。無理そうになったら蒼に言う」
「そうして。僕は千里ちゃんのお父さんの代わりなんだから」
「蒼、それ自分で言っちゃう?」
「言っちゃった。でも、本当のことだから。なんでも遠慮せずに言ってよ。いいわけでもなんでも僕がしてあげる。土浦先生もまかせておいて。僕が言いくるめておくから」
蒼の言葉を聞いてようよくいつもよりは元気はないしぎこちないが、笑ってくれ、ほっとしていた。……まぁ、その笑顔も大してうまくはないのだが、先ほどの笑顔と比べれば大分自然だった。蒼としては休んでほしかった。でも休めと言ったところで、千里が素直に言うことを聞くとは思えなかった。いつも自分を極限まで追い込むのは、とある事件が起こってからだった。
「あ、蒼。皆にはね内緒にしてほしいの。その、事情を知ってる人ならまだいいんだけど楔とか伊織は知らねぇじゃん?だから秘密にしておいてほしい……」
「……まだ、話せない?」
「信用してないとかじゃねえの。ただ、話すのが怖いんだ。まあ、俺に何かあって事情を知らない人に聞かれたら如一には俺から話は通しておくからさ、蒼が話してもいいって思った人には話して。俺の家で。鍵も如一なら持ってるし。あー、でも口止めだけはしておいて。人に知られたくないはなしだし。秋良には警視総監やってることすら話してねぇんだ」
駅まで近づくと、千里のは何かを思い出したかのように慌てて口を開くと、今の状態の理由は秘密にしてほしい、そうせがまれ、蒼は、少しだけ瞬きした後に少し寂しそうにまだ話せないのか、と聞いた。千里は少しもどかしそうにカバンの取っ手をぎゅっと握りしめながら、説明をした。じっと青のことを見つめるその瞳の置くには何も映らない。それでも何かを伝えたくて必死になっているその顔を見ると蒼は何も言えなくなる。
「何も無いのが一番だけどね。でも分かった。千里ちゃんの身に何かあった時、過去のことでなにかフラッシュバックが起きて何かあった時は僕の気が向いたら、みんなに説明しておくね」
「……ありがとう、蒼」
蒼は、何も無いことが一番だった。千里のトラウマ。それはすなわち、誰かが悲しむような結末があるかもしれないと言うこと、もしかしたらこの平和な日々に傷が入るかもしれない、と言うことなのだから。それでも、なにもない、と言いきれないのが今の世の中だ。だから、約束もしなければ、千里のその、日常の会話とっして終わらせた。蒼は、ちらりと、千里の横顔を見つめる。千里は少し安心したかのようにほっとした顔をしていた。
丁度話し終える頃、丁度駅に到着する。千里はこの話はここまでだ、とでもいいたげに千里はなるべく普段と変わらない何気ない会話に戻る。「今日は調理実習がある」だとか、「体育だりぃ」とかそんなくだらないことを。そんなことを話をしてると不意に千里は肩をたたかれ、振り返ると、伊織と楔、それから翔太が経っていた。翔太がどうやら、肩を叩いたのは伊織のようだった。目が合うなり伊織はいつものようにヘラりと笑いながら声をかけてきた。伊織の後に続くように翔太も挨拶を入れた。
「千里、蒼。おはよ」
「今日ははやいんだな、千里も翔太も。部活もねぇくせに」
「お、伊織と翔太じゃん。おはよ。正直俺そのセリフは翔太に言われたくないかもなぁ」
「おはよう、伊織ちゃん。僕も千里ちゃんに同館かな」
「ちょっとぉ、僕も忘れないでよぉ。おはよぉ、千里ちゃん。千里ちゃんはたまに太田君置いていくぐらい早いよぉ。だから、千里ちゃんは翔太に言われたくないと思うなぁ!」
「おー、楔もおはよ」
「みんな俺に対してひどくない!?」
伊織が挨拶をすると、千里も翔太と伊織に挨拶をした。楔のことをダイレクトに無視をしながら。千里たちは会話(翔太いじり)をしながら再び歩き始めた。さすがにこんな大人数で横になって歩くのはほかの利用者の邪魔になるのも知っているので千里と蒼が一番前でその後ろに楔と伊織、一番後ろで見守りながら歩くのは時間があって一緒に登校するときは大体翔太の役目だった。たまに千里が一番後ろになるときもあるが。いつもどおりだなぁ、なんて思いながら歩いていると、楔がほんの少し何かに気が付いたかのようにひしぎそうにしながら口を開く。
「あれれぇ、千里ちゃん顔色悪いけど、大丈夫ぅ?」
「あー、うん。今日ちょっと夢見悪くてさー。自分が死にそうになる夢で……。いつも5時に起きるんだけど、今日は三時に目ー覚めた」
「ええ?!千里大丈夫?!」
「んー?大丈夫大丈夫」
楔が気が付くとは思っていなかった千里は確実に反応に遅れ、苦し紛れのごまかしのような返答になったような気がしたが、伊織はどうやらごまかせたようだった。翔太と楔はわからないが。千里の大丈夫、という言葉に伊織は少しだけ心配そうな顔をしながら、千里に無理をするな、といった。楔もその言葉に同調するかのように同じく、無理をするな、と告げる。その言葉に千里は一瞬だけ千里の時間を止めた。蒼はチラリと一瞬ちさと
「そっかー、ならいいんだけど……。無理しちゃダメだよ」
「そぉだよ、千里ちゃん。僕も顔色悪いって思うから!無理な時は無理って言ってね!」
「……はは、二人共ありがと。大丈夫だよ。無理したらこわーいお父さんに叱られるからね」
「ちょっと千里ちゃん!?それってもしかして僕のこと?!」
「あはは!ほらね?怖いでしょ?」
「あ、ちょっと千里、置いてかないでよ!ほら、翔太も。早くいこう」
「ああ、おう」
千里は、すぐにはっとして、反応はほんの少し遅れたような気もするが、うつむきながら首を少しだけ掻きながら、お礼を述べる。そのあとにこの話を正直続けたくなかった。これ以上は、自分が弱さを見せてしまうような気がしたのだ。だから過ぎに顔を上げて、蒼のことを指さしながら、怖いパパがいると、告げると、蒼はまさか自分に矛先が自分に向くと持っていなかった蒼は少し不満そうにしながら口を開く。千里はその反応に笑いながらほらね、と言いながら笑う。千里と蒼が歩幅を早めると伊織も楔もあわててそのあとを追う。翔太は反応が一歩遅れ、お降りにせかされ、そのあとを追うのだった
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。




