14話 赤い紫陽花
(注)この物語には多少の流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます
あれから3日が経った。毎日2人ずつ殺害され、被害者は増える一方で犯人像は依然としてつかめずにいた。事件についてだが、進展という進展はあまりなく、唯一の進展としては、冬木家のメンバーの中で化学に詳しく、強力な助っ人で頭の回転の速い六合亜留斗の介入で判明したことは、“切り取られた遺体の一部は溶かされているかもしれない“ということのみだった。亜留斗は同い年にして、天才科学者兼探偵と、多忙な生活をしている。因みに亜留斗の通う高校は桜才高校の姉妹校である櫻井高校に在籍している。この間開かれた合同体育祭には事件の調査という名目で参加していなかったが。
「久しぶりだね、伊織。ごめんな、いきなり押しかけちまって。楔から聞いたんだよね、“伊織ちゃんの家のアジサイがきれいだよぉ”って」
千里は珍しく伊織の家を訪ねていた。その理由は伊織の家にあるアジサイの花に違和感を感じる、という楔の連絡で気になったからだ。なので捜査、という名目で訪ねていた。もちろん伊織には千里が警察ということは秘密なので普段着で、だが。伊織には「庭のアジサイがきれいだから見たい」と言って見せてもらっていた。
「あれ、地雷さん……?」
「あ……射水さん。稽古の日以来ですね」
「最近学校休んでる、と伊織から聞いたが大丈夫かい?」
「えぇ……今のところまだ戻れる目途は立ってないですが近いうちに戻れるといいかなとは思ってます」
「時期が時期なせいで、千里のひどい噂、流れてて……。聞いてる?」
「ん―、蒼から何となく。気にすんなって。ところでさ、アジサイ。わぁ……本当にきれいだな」
千里と伊織が軽く談笑をしていると顔を出した射水に声をかけられ千里は少し困ったように笑いながら稽古の日以来、と言って軽く挨拶をした。伊織の言う噂、というのは蒼から軽く聞いた話によると千里がこの事件の犯人でみんなのことを狙っているという千里からすればくだらない、で終わるような内容だった。
千里はその話はそこまでだとでも言いたげにアジサイへと目を向ける。庭に咲き誇っているアジサイはとても目を奪われた。その中でも特に目が奪われたのは、“赤いアジサイ”だった。
「赤いアジサイ……?」
「そう……。詩織が死んでからこの辺に咲き始めてね。綺麗だろう?」
「そう……ですね」
千里がつぶやくように発した言葉に射水が答えた。
アジサイの花は土の成分によって花の色を変える。酸性であればあるほど花の色は青くなるし、アルカリ性であれば花の色は赤くなるといわれていた。そのことを知識として蓄えていた千里は一つの予想と最悪の結末に背筋が冷える思いでいた。考えたくもない一つの予感。
一つは、橘詞織の遺体はここにある、という事と、それからもう一つは前から考えてはいたが、できることなら当たって欲しくない、正解であるなと願っていた事実である今回のターゲットは伊織だという事だった。この間から思っていたが当たって欲しくないものほど現実になるらしい。
ある程度アジサイを眺めた後に千里は礼を告げてから、橘家を離れる。深い溜息を落とした後にふっと前を向く。いつから見ていたのか隣には亜留斗が立っていて、「やっと気が付いたのか」とでも言いたげに気だるげにしていた。どうやら自分よりも先にこの家を見て遺体のありかについて察していたのだろう。千里は隣を歩く亜留斗のことを軽く睨みつけながら口を開く。
「わかってたのかよ」
「まぁね。君ら少し遅いんじゃないかい?」
その言葉には少しとげが含まれていた。しかし千里としてもそれは思っていたことなので、あえてそこには何も言わずに話をすり替えるように口を開く。
「にしてもあの場所じゃ……あんなのひどすぎる」
「そこまで橘に恨みのある人間なのだろうね。犯人は」
千里の悲痛な声を聞くなり亜留斗は呟くように、それでもしっかりと意思を持った声でそう口にする。それっきり千里も黙りこくり、口を開かないでただひたすらに警察庁までの道を歩き続けた。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。




